上 下
62 / 646
凛の話3

凛君と龍ちゃん…

しおりを挟む
「それ、美味しいやつ?」

「店員さんに聞いたから、多分そう」

龍ちゃんは、苺のパックを私から取って見つめてる。

「野菜買って帰ろうかな?」

「そうしたら」

「龍ちゃん」

「何?」

「何でもない」

「何だよ」

龍ちゃんは、ニコニコ笑ってる。私は、凛君を見つめていた。こちらをチラチラ気にしながら、野菜を整えている。きっと、凛君の心の中は複雑でどしゃ降りに違いなかった。

「すみません!見つかりました」

店員さんが現れた。

「じゃあ、もっかいラーメン見てくる」

「わかった」

「こちらです」

店員さんに連れられて、龍ちゃんはいなくなった。私は、手に戻ってきた苺を入れる為のカゴを探す。

「これ、どうぞ」

凛君にカゴを渡された。

「ありがとう」

「誰でもいいなら、僕でもいいよね」

「何の話?」

「セフレの話だよ!凛と旦那さんは、セックスレスってやつなんでしょ?」

その言葉に私は内心呆れていた。セックスレスって、凛君はいったいどこで覚えたのだろうか…。

「今日もセックスしてきたから」

私は、凛君を無視してキャベツを取る。

「レスじゃないの?」

「あのね、だから君には、わからないって言ってるの」

「じゃあ、あの人ならわかるの?」

「彼はちゃんとわかってるよ!私の気持ち」

半分になったキャベツをカゴに入れたら、取り出されて別のを入れられる。

「だったら、僕ともしてよ」

「そう言う話はもうしないんじゃなかったの?」

私は、きゅうりの袋をカゴに入れた。そしたら、凛君はまた取り出して別のを入れる。

「未成年なのが嫌なら、18歳になるまで待ってよ!それまでに、凛さんを虜に出来るぐらいのセックス覚えてくるから」

その真っ直ぐな目に、凛君はやっぱり子供なんだと思った。

「テクニックだけじゃないと思うし、人数でもない。私、そう言うのは違うと思うんだよ。愛して欲しいなら、別の誰かを当たるべきだよ」

私は、人参をカゴにいれた。凛君は、また取り出して別のをいれてくる。

「さっきから何?」

「こっちの方が美味しいから」

何故かイライラしてくる。癒しだったはずの凛君は、癒されない存在にかわった。

「あのさー。そんなに童貞捨てたいの?」

「違う、そんなんで凛さんに声をかけたんじゃない」

「じゃあ、何?」

「好きだからだよ!凛さんが、好きなんだよ」

その言葉に、私はどうしようもないぐらい汚れた人間に思えた。それに、さっきから小さな声で会話してる私達は、不自然だと思う。

「そっか」

「凛」

私は、その声に凛君から離れた。龍ちゃんがやってきて、カゴの中にラーメンを3つ入れてからカゴを持ってくれる。

「3つでよかったの?」

「あんまり食べすぎたら、太るだろ?」

龍ちゃんは、そう言いながらニコニコ笑ってくる。きっと凛君のような子にはわからない。私が龍ちゃんを好きな気持ちも、拓夢との関係も…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

麗しのラシェール

真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」 わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。 ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる? これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。 ………………………………………………………………………………………… 短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

【書籍化・取り下げ予定】あなたたちのことなんて知らない

gacchi
恋愛
母親と旅をしていたニナは精霊の愛し子だということが知られ、精霊教会に捕まってしまった。母親を人質にされ、この国にとどまることを国王に強要される。仕方なく侯爵家の養女ニネットとなったが、精霊の愛し子だとは知らない義母と義妹、そして婚約者の第三王子カミーユには愛人の子だと思われて嫌われていた。だが、ニネットに虐げられたと嘘をついた義妹のおかげで婚約は解消される。それでも精霊の愛し子を利用したい国王はニネットに新しい婚約者候補を用意した。そこで出会ったのは、ニネットの本当の姿が見える公爵令息ルシアンだった。書籍化予定です。取り下げになります。詳しい情報は決まり次第お知らせいたします。

「君の作った料理は愛情がこもってない」と言われたのでもう何も作りません

今川幸乃
恋愛
貧乏貴族の娘、エレンは幼いころから自分で家事をして育ったため、料理が得意だった。 そのため婚約者のウィルにも手づから料理を作るのだが、彼は「おいしいけど心が籠ってない」と言い、挙句妹のシエラが作った料理を「おいしい」と好んで食べている。 それでも我慢してウィルの好みの料理を作ろうとするエレンだったがある日「料理どころか君からも愛情を感じない」と言われてしまい、もう彼の気を惹こうとするのをやめることを決意する。 ウィルはそれでもシエラがいるからと気にしなかったが、やがてシエラの料理作りをもエレンが手伝っていたからこそうまくいっていたということが分かってしまう。

【完結】お姉様の婚約者

七瀬菜々
恋愛
 姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。  残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。    サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。  誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。  けれど私の心は晴れやかだった。  だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。  ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。

処理中です...