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凛の話3

生きること

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私は、お皿を洗いながらあの日々の事を思い出していた。昼夜問わずに働いて、がむしゃらだったあの日々…。あの時、私はお酒に溺れながら生活していた。ストレスがあったからとかじゃない。ただ、楽しかったから飲んでた。朝まで飲んで、仕事行って、また飲んで。
そしたらだんだん、生きてるか死んでるのかわからなくなってきた。満たされてるはずなのに、お酒が抜けた後に襲ってくる倦怠感と死にたい。幸せなはずなのに生きていたくなくなっていく不思議な感情。ある日、お酒を怖いと思った。両足が痣だらけなのに、何の記憶も痛みもなかったからだ。やめなくちゃ!そう思えた私は、運がよかったんだと思う。
それからは、人間らしい生活をした。そして、龍ちゃんに出会った。あの日、知らない間に死んでたらと思うと今ではゾッとする。それに、今より辛い人生じゃなかったと思うのに…。何で私、死にたかったのかな?
思い出そうとして思い出せるのは、酔ってよく友達と喧嘩になってたって事ぐらいで…。友達が全てだったんだろうって事ぐらいしかわからない。今なら、あの時の私に言えるよ!友達は、全員会わなくなるよって…。

お皿を洗い終わって、歯磨きをする。寝ながらスマホでも見ようかなー。

【ブルーライトがよくないのよ!早寝早起きだよ!凛ちゃん】友人が妊娠した時に言ってきた言葉だった。結局、早寝早起きしても妊娠しなかったし、ブルーライトをやめても妊娠しなかったよ。どうして彼女は、自分の正解をあたかも私にも当てはまるように話したのかわからなかった。そうそう、別の友人に連れられて占い師に会いに行った時もだ!食べ物の質が悪いとか冷えてるとか占いではない話をダラダラと話されて一万円もとられた。【凛ちゃん頑張ってみて!私は、それで出来たから】占い師もまた同じ事を言っていた。【私の話を実行して妊娠しなかった人はいない】と…。どうして、私が何もやっていない愚か者だと決めつけるのだろうか?私なりに妊活雑誌を読み漁り、妊娠した人のSNSを読み、金銭と相談しながら出来る事をした結果の今だと言うのに…。どうして、この人達は、それを否定してくるのだろうか…。私の話をちゃんと聞いてくれた事はある?私は、彼女と疎遠になった。彼女は、SNSでいいねを送るだけの友達に変わった。勝手に私の妊活人生を否定するなと思った。そして、何より一人一人違う事を何故理解できないのかがわからなかった。だって私は、白色の湿布が効かないけれど、龍ちゃんはそれが一番よく効くって言うのよ!結局、人間なんてみんな同じじゃないんだって思った。
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