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凛の話3

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「じゃあ、そろそろ寝ようかな」

ご飯を食べ終わって暫く休憩をした龍ちゃんは、そう言って笑った。

「おやすみ」

「お皿洗ってから寝る?」

「うん、先に寝てて」

「じゃあ、先に寝るね」

そう言って、龍ちゃんは私をギュッーと抱き締めてくれる。

「おやすみ」

「おやすみ」

そう言って、龍ちゃんは寝室に行ってしまった。一人ぼっちになると赤ちゃんが欲しいが溢れてくる。私は、あの日治療を打ち切られた日からずっと出口のない迷路をさ迷っている。それは、苦しくて悲しくて、抜け出すことは出来ない場所で…。ただ、漂って生きていきたかった。ゆらゆら漂って辿り着いた先が、子供のいない人生だったなら少しは諦めがついたのかもしれない。でも、望んでいたせいで諦めがつかなかった。最後まで足掻けばどうにかなるのだろうか?

【諦めないで】【まだ、チャンスがあるから】【こうやったらいいですよ】【大丈夫、出来るから】【人生子供だけじゃないですよ】SNSの不妊で悩む人のスレを私は見つめていた。このアドバイス達に救われていた日々もあった。でも、絶望を突きつけられた私にとって今のここは私を傷つける存在なのがハッキリわかる。私は、そのスレを読む。【最後まで、妊娠出来ませんでした。皆さんは、頑張って下さい】そう書かれている文字を指でなぞった。彼女は、どんな気持ちでこの文章をうったのだろうか?

泣きながら?真っ暗な部屋で?それともやりきって後悔はない?どんな気持ちを抱えていたとしても次の投稿主の【まだ、諦めないで】と言う投稿はいかがなものなのだろうか?諦めたい人間などいない。彼女もやめたくなかったのだと思う。でも、年齢や金銭的事情や私のように治療が打ち切られたのかもしれない。そう思うと私は、このスレに一度も投稿出来なかった。どんな言葉を選んで投稿しても、誰かを傷つけるのはわかりきっていたからだ!だから、こうやって発言してる人達は凄いと思った。私には、出来ないから…。私は、スマホを消した。

「お皿洗おう」

口に出す度に老いを感じる。若い頃はー何て言い出したら本当に年なのだ。でも、私は老いる事は嫌いではない。年輪のように刻まれた皺、ハリがなくなった肌も、黄みがかってくる肌も、あちこちが痛くなる事も…。嫌いじゃなかった。それは、生きてきた証だと思うから!生きてるか死んでるかわからないような日常を送った事がある私にとって、その痛みも老化も全部全部生きてきた証だ!ここまで、生きてきた証。
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