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凛の話3

お好み焼き

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一旦、洗面所に行って手を洗ってからキッチンにやってきた。
バッチリ解凍されたエビイカミックスと少し油が溶けてきた豚肉。キャベツを細い千切りにして、ボウルに粉を作る。フライパンに油を薄く引いてから、お好み焼きを焼いた。

治療が継続できないのがわかってから私は、荒れていたのは確かだった。自分の気持ちをうまく処理できなかった。同じ仲間のように勝手に思っていたSNSの投稿達に信じられない程、傷つく事を知った。妊娠が出来ない事は、生物として何の役にも立たない事だと思えて仕方なかった。誰かの発する言葉一つにさえ過剰になって傷ついた。そんな私を捨ててしまいたかった。だけど、簡単に龍ちゃんを手放せない。この場所を手放せない。築き上げたこの場所が、例え砂の城だとしても…。私は、龍ちゃんもこの家も大好きなんだよ。なのに、やっぱり、行為だけはしたくない。何より嫌いなのは、期待して裏切るこの体。【まだ、大丈夫だよ】【自然妊娠も出来るから】【まだ、若いから】そんな安易な言葉に救われない自分がいる。【年だから出来ない】【望むなら早く結婚したらよかったんだよ】【今からでも、治療しなきゃ】そんな言葉に私は傷ついた。龍ちゃん…。私ね、遅いとかそんな事思ってないよ。若い頃に、この人の子供が欲しいと思う人間には出会っていなかった。所詮、皆他人事なのだ!それは、そうだよ!子供を産んで育てるのは、私であって他人ではないのだ。言いたい放題、他人は言えるのだ。苦しみも悲しみも痛みも、私に与えたって気づいていないわけで…。私は、お好み焼きをひっくり返した。

「凛、睫毛また入った?」

「大丈夫だよ」

龍ちゃんは、私の頬を優しく撫でる。

「じゃあ、泣いてるの?」

「龍ちゃん」

どれだけ泣けば、この雨は止むのかな?どれだけ苦しめば、この痛みから解放されるのかな?

「ゆっくりでいいから!俺、凛が前向けるようになるの待つから」

「ごめんね」

ごめんね、私がポンコツだったから…。

「ごめんね」

私が、龍ちゃんの奥さんになったから…。私は、言葉を沢山飲み込んだ。

「何で、凛が謝るんだよ!大丈夫だから…。いつかさ!きっと、いつか笑える日が来るから」

「じゃあ、長生きしなくちゃね」

「そうだな!100歳は目指すか」

「そうだね」

龍ちゃん、ごめんね。私、楽な方に逃げてる。でもね、拓夢といると救われるの。こんな私でも価値があるって、思わせてくれるの。それとね、忘れられるの。いろんな事……。だから、ごめんね
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