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凛の話2

彼女?

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どうやら、連れてきたい場所についたらしく、凛君は止まった。

【見るからに甘そうだ…】
ピンクの外観の建物に、よくわからない英語の文字が並んでいる。かろうじで、パンケーキだけは読める。私は、スマホを取り出したくて凛君から手を離そうとした。

「よお!凛太郎。彼女?」

はぁ?私は、その声の人を見つめる。

「そうだよ」

そうだよ!ちょっと待って!違うよ。私は、手を離そうとするけど、凛君は男の子だ。ギュッーと強く握りしめられる。

「お前にしたら、趣味いいな!なぁ?優奈もそう思わない?」

「うん!めちゃくちゃ綺麗な人」

「確かに、凛にしてはめっちゃ美人じゃん。なぁ?美海(みか)」

「うん、本当綺麗な人じゃん」

これは、褒められているのか?それとも、おちょくられているのか?

「だから、何だよ!行こう」

「待てよ!凛太郎」

「何だよ」

「お前が童貞って、この人知ってんの?」

「何で、そんな事言うんだよ!達也」

「だって、こんな綺麗なお姉さんが童貞なんか相手するわけないだろ?普通」

綺麗とかお姉さんとか、言われて恥ずかしくて逃げたくなる。ただ、私も彼の歳は処女だった。けれど、今時は恥ずかしいのだろうか?

「そ、そんな事ないよ!凛さんは、僕をそんな事で嫌いにならないよ」

えっ?童貞だと嫌われるの?私には、よくわからなかった。

「お姉さん、どうなの?」

「わ、私?私は、童貞とか経験あるとか、関係ないかな?ハハハ」

苦笑いしか出てこない。

「へー、よかったな!凛太郎」

「夏休み中に卒業しろよ」

「う、うるさいよ」

「もし、お前がしないなら俺がもらおうかな?」

耳元に近づいてこられて、ゾクッとした。

「めっちゃいい匂い」

私は、達也と呼ばれた子を睨み付けた。

「怒んなくていいじゃん!じゃあ、またな!行こうぜ、みんな」

そう言って、いなくなった。

「凛さん、大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ!行こうか」

「うん」

私は、ニコッと笑った。凛君は、私の手を繋いでカフェに引っ張っていく。

「いらっしゃいませ、二名様ですね」

「はい」

私と凛君は、席を案内してもらった。

「ここ、パンケーキだけじゃなくて料理も美味しいんですよ」

「そうなんだ!」

私は、凛君を見つめながらこの子は童貞を夏休み中にどうやって卒業するのだろうと考えていた。それが、バレないようにメニューを覗き込んだ。

「ご注文お決まりですか?」

呼び鈴がない店内は、定期的に店員さんが声をかけにくるスタイルのようだった。

「えっと!これ、お願いします」

「天使のオムライスセットですね」

「はい、パスタはミートで」

「かしこまりました」

「後、これ」

「悪魔のハンバーグセットですね」

「はい、パスタはカルボナーラで」

「かしこまりました」

そう言って、店員さんはいなくなってしまった。コンセプトは、天使と悪魔のようだ。

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