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凛の話2

二度目…

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一度目は、事故で済むけど二度目は、自分の意志になる。どうしたらいいかわからなくて、一瞬フリーズしていた。でも、さっきの感覚が本物だったのか、もう一度感じたかった。私は、拓夢にかかった水を舐めた。もう一度感じられたら、続けよう。もう、腹をくくっていた。

始めるとすぐに、頭の中が真っ白になって、セックスが埋め尽くしてく…。いれて欲しくて、何度も腰があがってく…。絶望が快感にかわってく。何て気持ちいいのだろうか…。背徳感と罪悪感も合間って、よけいに気持ちよかった。終わった後も、快感が抜けなかった。

拓夢と話をして、一人でしてる事を言ってしまった。一人でする時の、自分だけが快楽を得る感覚が堪らなく好きになったのは、妊活を始めて3年が過ぎた頃だった。義務的なセックス、絶頂に達する事がないセックス、当たり前みたいに存在してるだけの行為。お互いそれが嫌になっていた。龍ちゃんも嫌なのはわかっていた。適当に愛撫していれられたりもした。あー、めんどくさいんだ。そう感じた。だけど、拓夢とは違った。愛とか恋とかそんなんじゃない。期待しなくていい…。だから、凄く楽で動物みたいだった。
拓夢が提案してくれたBチューブで歌う話。何だか興味が沸いた。私みたいな人でも何か残せるのかなって思えたから…。

「着替えてくるね」

私は、洗面所に服を着替えに来た。このまま、ここに居たかった。服を着がえる。でもね、結婚は全部同じ。未来のあるセックスをしたくなるの…。だけど、私は妊娠しない。だから、未来のあるセックスは、望んだって無理な話。だから、龍ちゃんとのセックスは嫌いだ。

着替え終わった!拓夢が駅まで送ってくれる。握りしめられた温もりに握り返していた。さっきの感覚が脳内にこびりついていた。絶望が快感に変わる感覚…。

駅前について、手を離した。このまま、拓夢を選んだって私の答えはわかる。すぐに赤ちゃんを望むのだ。さよならをして、改札を抜けた。いかに、赤ちゃんが素晴らしい生き物かを私は周りの人間に教育されてきた。いるのが当たり前で、必死になってでも掴まえなければならない存在なのだと教えられてきた。じゃあ、今の私は?
何の価値もない。何の意味もない。私は、ただ、朽ちてくだけの存在なのだ。何一つ残せないまま消えていく存在なのだ。もっと、手に職をつけていればよかった。何かを産み出せるような人間ならよかった。

そんな事を考えて、気づいたら、最寄りの駅に着いていた。
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