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拓夢の最初の話【1】

綺麗だね

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繰り返しキスをし続けた。
ゆっくりと唇を離して、凛の顔を覗き込んだ。

「何で、そんな綺麗なの?」

「何言ってるの?」

「本当の事、言ってるんだよ」

俺は、凛の耳たぶを噛んだ。

「そんな所、くすぐったいよ」

「凛の全部が欲しくなった」

「どういう意味?」

俺は、左手を掴んだ。薬指にはまってる指輪を舌で撫でる。

「拓夢?」

「これ事、俺が引き受けるから」

そう言って、指を口に含んだ。

「何かくすぐったい」

チュパって音を立てながら、指を舐め続ける。
凛は、俺を見つめる。

「んんー」

「気持ちいい?」

「何か、変な感じ」

「凛、俺といっぱい色んな事しようか?」

俺は、凛の頬に手を当てる。

「色んな事?」

「そう、セックスだけじゃなくて、色んな事!駄目かな?」

「駄目じゃないけど」

「じゃあ、しよう。色んな事!俺は、凛を幸せにしたい」

「幸せだよ!今だって、ちゃんと…」

「そう言いながら、何で泣いてるの?」

「幸せだけど、足りないの。最低だよね」

「赤ちゃんが足りない?」

凛は、頷きながら泣いている。

「赤ちゃん欲しくて仕方ないんだね」

「ごめんね」

「旦那さんとの赤ちゃん欲しいんだね」

凛は、頷いていた。

「私、ワガママだよね」

「そんな事ないよ」

「だって、結婚出来ただけでも素敵な事でしょ?夫が生きてるだけでも素敵な事でしょ?幸せだって思わなくちゃいけないのに…。拓夢と不倫しようとしてる。私、ワガママだよね」

「ワガママじゃない。今は、凛にとって寄り道しなきゃいけないだけだよ。そうしなきゃ、凛は生きていけないだけだよ。だから、ワガママなんかじゃないよ」

俺は、凛の涙を拭ってあげる。

「忘れたいよ、拓夢。夫とセックスしたら、頭の中に赤ちゃんが欲しいが流れてくるの。赤ちゃん出来たかも!次は、絶対うまくいった。そんな風に脳内を赤ちゃんしか占めないの…」

凛の目から、大粒の涙が流れ落ちてくる。

「俺としたら、忘れられた?」

凛は、頷いた。

「もっかいしようか?」

凛は、涙を流しながら俺を見つめる。

「水飲む?」

恥ずかしくなって話をそらした。

「飲む」

凛の言葉に、俺は水を取りに行った。一度目は、興味本位で済むけれど…。二度目以降は、完全に裏切りなのがわかる。俺は、凛に水をあげる。

「ありがとう」

だからきっと、凛は答えられないし、進まないんじゃないだろうか…。
だって、俺に興味があっても好きかわからないわけだよ。そんな相手にもう一度抱かれるなんて裏切りも裏切りだよな…。
俺は、凛を見つめる。

「駅まで送るよ」

そう言った俺を凛は、引き寄せた。
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