上 下
11 / 646
凛の最初の話【1】

家来る?

しおりを挟む
「ここじゃ嫌?」

その言葉に私は、頷いた。

「じゃあ、俺ん家(ち)来る?」

昔ならきっと断わってた。
でも、私は頷いてた。

「じゃあ、行こうか」

カラオケを出た。

並んで歩いて、電車に乗って拓夢の住むマンションにやってきた。

「どうぞ」

「お邪魔します」

広めのワンルームだった。

「シャワー浴びる?」

「うん」

「一緒に…」

「恥ずかしいから無理」

今さらながら、恥ずかしかった。自分が何をしようとしに来たのかわかっているくせに…。拓夢は、玄関で私を引き寄せて抱き締めてきた。

「可愛いいね、凛さん」

「何言ってんの」

「シャワー、そこだから!ユニットバスじゃないから」

「うん」

「バスタオルは、後で置いとくね」

「うん」

拓夢が離れてくれた。
私は、言われた通りにシャワーを浴びに行く。洗面所で服を脱いで、畳んだ。

【セックスするんだ。】お風呂場に入って、シャワーを捻った。【昨日会った人間とセックスしちゃうんだ…。尻軽だな私】そう思ったら笑えてきた。私は、鏡に映る自分を見つめる。三年前から、自宅で鍛え始めたとはいえまだまだおばさん体型だ。よく、こんな体で若い男に抱かれようと思っている。でも、何も考えられないぐらい抱かれたい。知らない人に、このポンコツの体をあげたかった。こんな体でも役にたつって思われたかった。

ボディソープを手に乗っけて、体を丁寧に洗った。肉体を貪り食うだけの空しい関係を味わいたい。頭の中にセックスしかないだけの感覚を味わいたい。わかる?わからないよね…。誰にも…。【赤ちゃん、赤ちゃん、赤ちゃん…】そんなセックスをやめる為に抱かれるんだよ、私。
ガタン………。
シャワーから上がるとバスタオルが置かれていた。私は、丁寧に体を拭いた。
バスタオルを体に巻き付けて上がった。

「お水どうぞ」

「ありがとう」

「俺も入ってくるね」

「うん」

私は、テーブルに置かれたお水を飲んだ。遮光カーテンのお陰で、電気をつけないと暗いらしい。何もない部屋。音楽の物が置かれてる部屋。ゴクゴクと水を飲んだ。暫くして、バスタオルを巻いた拓夢がやってきた。うっすらと腹筋がある。細マッチョだった。お水を飲んでる。

「電気消そうか?」

「うん」

拓夢は、パチンと電気を消した。

「こっち」

手をひかれて、ベッドにやってきた。

「真っ暗がいい?」

「うん」

「誰とでもするの」

「初めてだよ」

「結婚して、どれくらい?」

「13年」

「何で、しようとしてる?」

「赤ちゃんの事、考えたくないから」

拓夢は、サイドテーブルの引き出しから避妊具を取り出していた。

「前のだから使えるかな?」

「大丈夫じゃない。避妊しなくたって妊娠しないし」

「それは、駄目。ちゃんとするのは、当たり前だよ。病気防いだりするんだから」

「そうだね」

病気あるかも知れないよね。お互いに……。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

先生、生徒に手を出した上にそんな淫らな姿を晒すなんて失格ですよ

ヘロディア
恋愛
早朝の教室に、艶やかな喘ぎ声がかすかに響く。 それは男子学生である主人公、光と若手美人女性教師のあってはならない関係が起こすものだった。 しかしある日、主人公の数少ない友達である一野はその真実に気づくことになる…

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫

紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。 スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。 そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。 捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。

十年目の離婚

杉本凪咲
恋愛
結婚十年目。 夫は離婚を切り出しました。 愛人と、その子供と、一緒に暮らしたいからと。

私をもう愛していないなら。

水垣するめ
恋愛
 その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。  空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。  私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。  街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。  見知った女性と一緒に。  私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。 「え?」  思わず私は声をあげた。  なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。  二人に接点は無いはずだ。  会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。  それが、何故?  ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。  結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。  私の胸の内に不安が湧いてくる。 (駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)  その瞬間。  二人は手を繋いで。  キスをした。 「──」  言葉にならない声が漏れた。  胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。  ──アイクは浮気していた。

50歳前の離婚

家紋武範
恋愛
 子なしの夫婦。夫は妻から離婚を切り出された。  子供が出来なかったのは妻に原因があった。彼女はそれを悔いていた。夫の遺伝子を残したいと常に思っていたのだ。  だから別れる。自分以外と結婚して欲しいと願って。

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

処理中です...