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月と流星

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「なに?」

「そのままで、いいよ。泣いてたの?」

「いや、これはダメだよな。」

「何で?兄弟だからおかしくないよ。」

何が、おかしくないかわからなくなってる。

「もどるわ」

そう言った俺を胸に引き寄せた。

「いやいや、ダメだって」

俺は、流星から離れようとするのに離してくれない。

「なんで?誰かくるから。」

「じゃあ、そうだな。」

そう言って、個室トイレにはいって鍵をかけた。

「いやいや。」

流星は、ずっと俺を抱き締めてる。

なんで、抱き締めてるの?

「月(るい)の一番が、俺だって事が心底嬉しい。会うと我慢ができない。だけど、前みたいにはならないから少しだけこうしていたい」

「わかった。」

わかったって言ってる俺もどうかしてるな。

「俺は、月みたいに2つの愛は持っていないよ。月だけを愛していて、里美に対しての感情はないんだよ。」

「すごい事、言ってるよ。」

「そうだね。でも、本当の話だから…。子供がいるから、里美といるだけで、いないなら別れていただろうね。あの人が決めた事だから逃(のが)れられないだけだった。好き嫌いなんて言えないんだよ。」

俺は、何も言えなかった。

流星が、里美さんと結婚したのは俺の為だから…。

「アレから、月に連絡が出来なかった。もしかしたら、月の一番は俺じゃないのかもしれないと思ってしまったんだ。でも、今日会って確信した。月の一番は俺なんだね。」

「かわってるわけないよ。」

流星は、俺のおでこにおでこをくっつけた。

「嬉しいよ、月」

そう言って頬にキスを何度もする。

なにやられてんのこれ…。挨拶みたいなもんか。

「月、愛してる」

「俺もだよ」

俺も流星の頬にキスをした。

そしたら、流星は俺を抱き締めた。

「もう、大丈夫。月は、もどって」

そう言って、離れた。

個室トイレの鍵を開けてくれた。

俺は、星の所へもどった。

しばらくして、星がトイレへ行き氷雨君もトイレへ行った。

そのうちに帰ってくるから気にしてなかった。

「月君、チャージされた?」

華君に、声をかけられてドキッとした。

「その顔は、そうなんだね。」

ニコッと笑ってくれた。

「仕方ないよ。惹かれあってるんだから」

「酷いよね」

「全然。好きなら触れたいのなんて当たり前の事だよ。」

そう言って、微笑んでくれた。

「そうかな」

「向こうの化け物も、穏やかだよ。だから、大丈夫。制御できてたでしょ?」

「うん。それは、そうだった。」

「だったら、そのままでいいんじゃない。また、拒絶したり離れたら喰われてしまうよ。次は、もどれないよ」

華君は、そう言って行ってしまった。

俺は、そう言われて流星を見ていた。

もう二度と化け物に、喰われて欲しくなどなかった。

しばらくして、星が帰ってきた。

「ごめんね、遅くなって」

「全然、華君と話てたから」

そう言って、笑った。

それからは、あっという間に時間が過ぎた。

華君が、ギターを弾いてくれたりみんなそれぞれに話を交わしたりしていた。

もうすぐお開きになる頃に、時雨さんがやってきた。

「星(ひかる)、氷雨の事、本当にありがとう。」

もう一度お礼を言いにきた。

「僕は、何もしてないから」

「したのは、わかるよ。アレから、一度も氷雨は、暴力ふるってないんだ。それは、星がちゃんとしてくれたからだろ?俺には、わかるよ。」

「そう言ってくれて、ありがとう。」

「氷雨は、星をずっと好きなのが今日見ていてよくわかった。」

「奥さんがいるから」

「結婚を好きや嫌いで、氷雨は決めてないよ。あの人達の言いなりだろ?」そう言って、氷雨君達といる両親を時雨さんは見ている。

「感情(きもち)なんてもった所で、それが何って言われるだけだよ。あの人達を幸せにする為にしたんだろ。結婚。」

そう言って氷雨君を見てる。

「時雨は、両親と仲良くなれたの?」

「仲良くなったわけじゃないよ。普通にしてくれてるだけ。それも全部氷雨のお陰だよ。氷雨がずっと辛い日々なのかと思ったけど、今日の氷雨見て安心した。ありがとう、星。じゃあ、もどるわ」 

そう言って時雨さんは、もどっていった。

しばらくして、パーティーはお開きになった。

俺と星は、また茹(う)だるような暑さの中、帰宅した。


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