リンゴの木の下で

小槻みしろ

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五話

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 それから、私たちは、手をとりあい、仕事をした。ソニアはやっぱり力が弱いけれど、私を心から支えてくれた。
 癒しの力もかけてもらえるし、仕事は苦しくなくなってきた。
 皆も、私たちの事を、聖女だけではなく、人間として認めてくれるようになってきたからかもしれない。
 
「マリー。感謝する」
「ありがたき幸せです」
 
 私は、陛下の言葉に心を躍らせていた。陛下は最近、優しくなった。待遇というより、人柄が、やわらかくなった。
 陛下の美しい笑顔を見ていると、何でもできるような気持ちになる。
 体中ぼろぼろになって寝るのは相変わらずだったけれど、私は仕事にやりがいというものを見出し始めていた。
 そんな、矢先の出来事だった。
 眠れない夜だった。私はふと庭が見たくなり、ベッドを抜け出した。
 庭園には、先客がいた。
 
「ソニア、礼を言う。そなたに出会って、私は自分を見つめなおせた」
「いや、めっそうもないですよ」
 
 ソニアが手を振るのを、陛下はふと目を細めて見つめた。
 
「何より、そなたといると楽しい」
「えっ?」
「そなたが好きだ」
 
 私は、息をのんだ。
 息をのんで――そのまま、ふらふらと、部屋に戻った。
 嘘だ。
 何も私だって、妃になれるなんて、思ってたわけじゃないけれど……
 陛下のことだって、好きとかじゃなかったけれど……
 え? こんなことって、ある?
 
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