48 / 57
一章
三十八話 予感
しおりを挟む
「よかった! 姫がお目覚めになられた」
にこにこと体中を笑顔にしているエルガのもとに、ジアンが食事を運ばせていた。実に三日ぶりの食事であった。エルガはこの三日間、寝食も忘れ、姫の目覚めを待っていたのだった。
「主、まずは腹にやさしきものから召し上がりなさいませ」
すみやかに毒味をすませたスウプを、ジアンが差し出した。エルガは「うむ」と頷き、口に含んだ。
「うむ、うまい」
言葉にする前から、美味と顔に書かれていた。
「ようございました」
その様子に、ジアンは心底安堵する。食欲の失せた主など、これまで一度も見たことがなかった。この三日間、ジアンも気が気ではなかったのだ。姫がお目覚めになられて、よかったと心の底から思う。
「しかし、出立は本当に明後日でよいのか?」
エルガが蒸かしたポトの実を手にしながら、尋ねた。
姫の意向を聞き、出立は明後日となった。
「お体にさわりはしないだろうか」
「そこは、存分に注意して参りましょう。姫様がすぐにでもと仰せられたのです。その気丈な決断に応えぬのも、名折れというもの」
現に、いつでも発てるように、出立の準備は滞りなくすませてあった。
「そうだな。……姫様は、立派なお方だ」
厚焼きのパヌをちぎる手を止め、エルガがかみしめるように口にした。エルガのまぶたの裏に、何が見えているか、ジアンにはわかった。
「俺は幸せ者だ」
ジアンも同じ気持ちだった。そして同じく、それ以上に言葉はなかった。
――魂問い。
高位の神官でさえ、見られる者は限られている。何がなされるかは、皆知っているのに、その目に見ることはかなわない。
それは、出来る者が、限られているからだ。まず、王族であること――そして、その中でもまた限られた者だけが、それを成し得ることが出来る。
現在は神殿の奥で、最高位の神官のみ伴い行われる為、どれほど力ある貴族といえど、目にすることかなわぬ――しかし、それでもその存在を疑うことは絶対に許されない――国の基となる儀。
それが魂問いだ。
それを、まさかこの目で見ることがかなうとは、三夜明けた今でも、信じられない。
(これは、まるで――)
「あのお方を、王都までお連れする使命を得たこと、この上なき幸せだ」
エルガが、天井を見上げ嘆息した。ジアンは思案より、直ちに戻る。
「はい。私も、及ばずながら力を振るわせていただきます」
「おお、頼りにしているぞジアン」
ジアンの言葉に、エルガは正面を向いたまま、笑って応えた。
「まずはよく食べ、よくお眠りなされませ」
「ああ。うん、これはうまいな」
カルの肉の煮込みをほおばり、エルガが感心する。
「ようございました」
ジアンが目配せすると、給仕の者が、おかわりを用意しに向かった。
「――して、奴はどうしておる?」
しばしエルガは食事に集中していたが、不意に低いおさえた声で切り出した。奴、の心当たりはすぐについた。
「謹慎させておりますが――家が動き出しました」
「そうか……」
押さえた声で発されたジアンの言葉に、エルガが苦い顔をした。酒をぐいと飲み、器を置いて、うなる。
「じき、こちらに圧力がかかりましょうな」
「……許し難いことだ」
どこで誰が聞いているかわからない。周囲に神経を張り巡らせながら、ジアンは「全くです」と答えた。
本当に、許し難いことだ。本来ならば、さらし者にし、八つ裂きにして殺してもまだ足りないというに。
全く、家の力というものはすばらしいものだ。
姫に狼藉を働いておきながら、その罪をなきものにしようとする――あまりにみにくく、おぞましい考えだ。
(始祖と共に、国を拓いた名族に名を連ねるとは言え、許せぬ。いや、むしろ、その名誉を自ら汚しておるのだ)
恥知らずもいいところである。何が名族か、相応の忠誠を王に尽くしてから名乗れというものだ。
カルデニェーバは、巫の国。神の加護を受けし王が、頂点にあるべき国だ。
しかし、現在はどうだ。王を建前に振りかざし、貴族たちは我が身第一に権力争いを繰り広げている。
そうして、王の意向さえも曲げる――王の意向として。
全くもってふざけた話だ。そのような調子であるから、フロルの神の加護が弱まるのではないか。
ジアンが内心を、腹が裂けるような憤怒に満ちさせていると、エルガがふと、自分の掌を見下ろした。
「――ジアンよ、俺は悔しい。俺に力がない故に、姫をお守りすることかなわぬとは」
エルガは、そうぽつりと口にした。苦しい声だった。ジアンは息をのんだ。
「何を。弱気なことをおっしゃいますな」
ジアンは、励ますように、強く否定した。
このような主は、見たことがなかった。主にこのような思いをさせるとは――我が身のふがいなさに、深い憤りの念がわく。
しかし、エルガは、さっと顔を上げた。
「だから、俺は強くなりたい。姫を真にお守りできる男となりたい」
広げていたぐっと拳を掲げ、強く握りしめると、エルガははっきりと言った。その顔に、一転の曇りはなく、強い力に満ちていた。
ジアンは、一瞬言葉を忘れた。
主、エルガ卿は、どこまでも人が好く、野心のないお方であった。その方が、今、姫の為に力を望もうとしている。
ジアンは心がふるえるのを感じた。――奴の話の折から、人払いをすませておいてよかった。今の言葉は、あまりに危うき言葉だ――そして、誰にも聞かせたくなかった。先に浮かんだ言葉が、もう一度かえってくる。
(これは、この旅は、新たな始まりなのではないか?)
国の興り、始祖であるカルニ王は、現在の王都カルグニールを礎にこの国を拓くまで、仲間と旅を続けていたという。
幾千人の命を魂問いにより、一度に救ったという逸話はあまりに有名であり、カルニ王の伝説の一つとして、歌われ、壁画に描かれている。
ジアンはこの旅に、なにか運命のようなものを感じずにはいられなかった。
魂問いの光が、魂に刻みつけられ、離れない。
カルニ王の子孫たる姫が、これから旅をし、王都へと向かうのだ。王の座へとつくために。
戦争、流行病――貴族の争い――国は今、大いに乱れている。そこに突如現れた、ただ一人の国の後継者。
カルニ王が立たれた時も、そうであった。
(真に国を王を思う者が、今一度フロルの神に選ばれようとしているのではないか?)
此度の主の任命は、カルニ王とフロルの神による思し召しではないか。
それは、あまりに危険な考えである。
(はやってはならぬ)
姫とともに旅をするのは、わが主だけではない。姫が正しく後継者であると知れば、他の貴族も黙っていまい。
今まで以上に、より慎重に、周到にやらねばなるまい。
この旅は、運命的なものかもしれぬ。そして、そのために――危うきものになるやもしれぬ。
(しかし、それでも、なんとしても私が無事に完遂させてみせる)
ジアンは決意を新たに、腹のうちに縛り付け、力を込めた。
「――主ならば、必ずや成し遂げられましょう」
「うむ」
ジアンの万感のこもった言葉に、エルガは、いつものように頷いた。
「二度と、姫様が傷つくことのないように、俺は力を尽くす」
握りしめた拳を、そっと卓の上に置いた。
「そうと決まれば、俺は食うぞ。強くならねば」
ここの料理も当分食べ納めになるしな、とエルガはスプンを取り直し、はきはきと食べ始めた。ジアンはその様子に、思わず笑いが漏れた。
全く目の前の主は、どこまでもいつも通りで、ただ姫をお守りすること一心しかない。しかし、それでこそだ。それでこそ、けがれなく野心も夢も抱けるというもの。
そして、自分は必ずや叶える。
ジアンは手をたたき、払っていた給仕を再度呼びにやったのであった。
にこにこと体中を笑顔にしているエルガのもとに、ジアンが食事を運ばせていた。実に三日ぶりの食事であった。エルガはこの三日間、寝食も忘れ、姫の目覚めを待っていたのだった。
「主、まずは腹にやさしきものから召し上がりなさいませ」
すみやかに毒味をすませたスウプを、ジアンが差し出した。エルガは「うむ」と頷き、口に含んだ。
「うむ、うまい」
言葉にする前から、美味と顔に書かれていた。
「ようございました」
その様子に、ジアンは心底安堵する。食欲の失せた主など、これまで一度も見たことがなかった。この三日間、ジアンも気が気ではなかったのだ。姫がお目覚めになられて、よかったと心の底から思う。
「しかし、出立は本当に明後日でよいのか?」
エルガが蒸かしたポトの実を手にしながら、尋ねた。
姫の意向を聞き、出立は明後日となった。
「お体にさわりはしないだろうか」
「そこは、存分に注意して参りましょう。姫様がすぐにでもと仰せられたのです。その気丈な決断に応えぬのも、名折れというもの」
現に、いつでも発てるように、出立の準備は滞りなくすませてあった。
「そうだな。……姫様は、立派なお方だ」
厚焼きのパヌをちぎる手を止め、エルガがかみしめるように口にした。エルガのまぶたの裏に、何が見えているか、ジアンにはわかった。
「俺は幸せ者だ」
ジアンも同じ気持ちだった。そして同じく、それ以上に言葉はなかった。
――魂問い。
高位の神官でさえ、見られる者は限られている。何がなされるかは、皆知っているのに、その目に見ることはかなわない。
それは、出来る者が、限られているからだ。まず、王族であること――そして、その中でもまた限られた者だけが、それを成し得ることが出来る。
現在は神殿の奥で、最高位の神官のみ伴い行われる為、どれほど力ある貴族といえど、目にすることかなわぬ――しかし、それでもその存在を疑うことは絶対に許されない――国の基となる儀。
それが魂問いだ。
それを、まさかこの目で見ることがかなうとは、三夜明けた今でも、信じられない。
(これは、まるで――)
「あのお方を、王都までお連れする使命を得たこと、この上なき幸せだ」
エルガが、天井を見上げ嘆息した。ジアンは思案より、直ちに戻る。
「はい。私も、及ばずながら力を振るわせていただきます」
「おお、頼りにしているぞジアン」
ジアンの言葉に、エルガは正面を向いたまま、笑って応えた。
「まずはよく食べ、よくお眠りなされませ」
「ああ。うん、これはうまいな」
カルの肉の煮込みをほおばり、エルガが感心する。
「ようございました」
ジアンが目配せすると、給仕の者が、おかわりを用意しに向かった。
「――して、奴はどうしておる?」
しばしエルガは食事に集中していたが、不意に低いおさえた声で切り出した。奴、の心当たりはすぐについた。
「謹慎させておりますが――家が動き出しました」
「そうか……」
押さえた声で発されたジアンの言葉に、エルガが苦い顔をした。酒をぐいと飲み、器を置いて、うなる。
「じき、こちらに圧力がかかりましょうな」
「……許し難いことだ」
どこで誰が聞いているかわからない。周囲に神経を張り巡らせながら、ジアンは「全くです」と答えた。
本当に、許し難いことだ。本来ならば、さらし者にし、八つ裂きにして殺してもまだ足りないというに。
全く、家の力というものはすばらしいものだ。
姫に狼藉を働いておきながら、その罪をなきものにしようとする――あまりにみにくく、おぞましい考えだ。
(始祖と共に、国を拓いた名族に名を連ねるとは言え、許せぬ。いや、むしろ、その名誉を自ら汚しておるのだ)
恥知らずもいいところである。何が名族か、相応の忠誠を王に尽くしてから名乗れというものだ。
カルデニェーバは、巫の国。神の加護を受けし王が、頂点にあるべき国だ。
しかし、現在はどうだ。王を建前に振りかざし、貴族たちは我が身第一に権力争いを繰り広げている。
そうして、王の意向さえも曲げる――王の意向として。
全くもってふざけた話だ。そのような調子であるから、フロルの神の加護が弱まるのではないか。
ジアンが内心を、腹が裂けるような憤怒に満ちさせていると、エルガがふと、自分の掌を見下ろした。
「――ジアンよ、俺は悔しい。俺に力がない故に、姫をお守りすることかなわぬとは」
エルガは、そうぽつりと口にした。苦しい声だった。ジアンは息をのんだ。
「何を。弱気なことをおっしゃいますな」
ジアンは、励ますように、強く否定した。
このような主は、見たことがなかった。主にこのような思いをさせるとは――我が身のふがいなさに、深い憤りの念がわく。
しかし、エルガは、さっと顔を上げた。
「だから、俺は強くなりたい。姫を真にお守りできる男となりたい」
広げていたぐっと拳を掲げ、強く握りしめると、エルガははっきりと言った。その顔に、一転の曇りはなく、強い力に満ちていた。
ジアンは、一瞬言葉を忘れた。
主、エルガ卿は、どこまでも人が好く、野心のないお方であった。その方が、今、姫の為に力を望もうとしている。
ジアンは心がふるえるのを感じた。――奴の話の折から、人払いをすませておいてよかった。今の言葉は、あまりに危うき言葉だ――そして、誰にも聞かせたくなかった。先に浮かんだ言葉が、もう一度かえってくる。
(これは、この旅は、新たな始まりなのではないか?)
国の興り、始祖であるカルニ王は、現在の王都カルグニールを礎にこの国を拓くまで、仲間と旅を続けていたという。
幾千人の命を魂問いにより、一度に救ったという逸話はあまりに有名であり、カルニ王の伝説の一つとして、歌われ、壁画に描かれている。
ジアンはこの旅に、なにか運命のようなものを感じずにはいられなかった。
魂問いの光が、魂に刻みつけられ、離れない。
カルニ王の子孫たる姫が、これから旅をし、王都へと向かうのだ。王の座へとつくために。
戦争、流行病――貴族の争い――国は今、大いに乱れている。そこに突如現れた、ただ一人の国の後継者。
カルニ王が立たれた時も、そうであった。
(真に国を王を思う者が、今一度フロルの神に選ばれようとしているのではないか?)
此度の主の任命は、カルニ王とフロルの神による思し召しではないか。
それは、あまりに危険な考えである。
(はやってはならぬ)
姫とともに旅をするのは、わが主だけではない。姫が正しく後継者であると知れば、他の貴族も黙っていまい。
今まで以上に、より慎重に、周到にやらねばなるまい。
この旅は、運命的なものかもしれぬ。そして、そのために――危うきものになるやもしれぬ。
(しかし、それでも、なんとしても私が無事に完遂させてみせる)
ジアンは決意を新たに、腹のうちに縛り付け、力を込めた。
「――主ならば、必ずや成し遂げられましょう」
「うむ」
ジアンの万感のこもった言葉に、エルガは、いつものように頷いた。
「二度と、姫様が傷つくことのないように、俺は力を尽くす」
握りしめた拳を、そっと卓の上に置いた。
「そうと決まれば、俺は食うぞ。強くならねば」
ここの料理も当分食べ納めになるしな、とエルガはスプンを取り直し、はきはきと食べ始めた。ジアンはその様子に、思わず笑いが漏れた。
全く目の前の主は、どこまでもいつも通りで、ただ姫をお守りすること一心しかない。しかし、それでこそだ。それでこそ、けがれなく野心も夢も抱けるというもの。
そして、自分は必ずや叶える。
ジアンは手をたたき、払っていた給仕を再度呼びにやったのであった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
見捨てられたのは私
梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。
ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。
ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。
何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる