27 / 57
一章
十七話 友達
しおりを挟むショッピングモールで一日過ごし、すっかり日が落ちた中を俺たちは繁華街から離れる方向に歩いていた。
何を隠そう、これからホテルで一泊するためだ。しかもラブが付く方の。
「七海?」
「………は、はい……」
「大丈夫か?」
「………は、はい……」
俺が何処を目指しているのかは少しでも地理に精通していればわかる。
賑やかな中心街からは離れた裏通りのような場所。近づくにつれて七海の落ち着きが無くなって行くのがわかった。
そういう俺もホテルに行くのは久しぶりなのでワクワクしている。
特に毎回受け付けをする度に驚愕した目で見られるのが俺のお気に入り。
こういう系統のホテルはこの世界だと、男性が少ないことで発生したユリカップルによって使われることが多い。もちろん男性が使っても問題は無い。
周りがユリな分、俺にとっては楽園のような場所とも言えるかもしれない。
「行くよ?」
「……はい!」
七海に一声かけてからホテルの入り口にある扉を押して中に入る。
内装はピンク色の壁にピンク色の明かりを使っており、とにかくそういう店にありがちなピンク一色だった。
「すみません、いいですか?」
「はい……はい?!え、?!………ご、ごほん。失礼しました。こちらのプランから希望するものを選択してください。」
「ありがとうございます」
被害者累計百人近くが存在する中、この受付嬢も言い反応をしてくれた。
チラチラと俺と七海に視線を送るのは果たして。嫉妬なのか、羨望なのか、それとも正義感なのか。
「宿泊でお願いします。部屋はノーマルの洋室で」
「?!……承りました。開始まで時間がありますが、いかがしますか」
「うーん、直ぐに部屋に入りたいので休憩でお願いします」
「わ、わかりました……お会計は〇〇〇〇◯円になります」
俺は財布を取り出し料金を支払う。俺は七海と違って給料をもらっているので俺の驕りだ。
「せ、先生……すみません後で払います」
「驕りだから気にするな」
「……で、でもっ」
「とりあえず部屋に行こうか」
「……わかりました」
受付嬢から部屋番号が書かれたキーを受け取ると、俺と七海はエレベーターを使って部屋に向かった。床にはこれまたピンク色の絨毯が敷き詰められているため、足音が響くこともなく、結構当たりのホテルだと思った。
部屋に入ると、ベッドにソファーにテレビがあり、そして暗めのライトによってぼんやりした空間が広がっていた。
「……凄いです……」
七海は始めて来たようで当たりを見渡して感動していた。
「そうだな……七海」
「っ……はい……!!」
ここはもう周囲の目を一切気にする必要の無い密室。
俺は横にいる七海を抱きしめると、お互いの唇を交える。
しばらくしてから、俺たちはベットへと向かった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説

白い結婚をめぐる二年の攻防
藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」
「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」
「え、いやその」
父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。
だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。
妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。
※ なろうにも投稿しています。
悪妃になんて、ならなきゃよかった
よつば猫
恋愛
表紙のめちゃくちゃ素敵なイラストは、二ノ前ト月先生からいただきました✨🙏✨
恋人と引き裂かれたため、悪妃になって離婚を狙っていたヴィオラだったが、王太子の溺愛で徐々に……
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
転生したらチートすぎて逆に怖い
至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん
愛されることを望んでいた…
神様のミスで刺されて転生!
運命の番と出会って…?
貰った能力は努力次第でスーパーチート!
番と幸せになるために無双します!
溺愛する家族もだいすき!
恋愛です!
無事1章完結しました!
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる