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侵入者、二人
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「「ラズ!」」
宙に浮いたお守りの光は魔方陣だった。空中に描かれた魔方陣からウィス様と何故かリド様まで現れて、ラズは驚きと共に安堵した。
「ウィス様! リド様!」
魔方陣を蹴るようにして床に着地した二人は、ラズを見てギョッと目を剥いた。視線の先が自分の上半身で、そう言えば何も着ていない上に首輪つきだったことを思い出して、ラズは慌ててシーツを引き寄せた。
「貴様ら! 誰の屋敷だと思ってる――!」
レイフはラズを隠すように二人の侵入者に立ち塞がった。ウィス様やリド様を知らないわけがないのにその台詞をよく言えたな……とラズはレイフの背中を見ながらこっそり思う。 レイフがどれほどの魔力を持っているのかわからないけれど、普通ならこの覇気に耐えられるとは思えない。レイフが竜の血筋を持っているというのは本当のことなのだろう。
「ラズを誘拐しておいてよく言ったものだな」
リド様の目は鬼と呼ばれるに相応しくつり上がっていた。ラズは怯えてしまいそうになる自分を叱咤激励する。助けに来てくれた人に怯えるわけにはいかない。
リド様は、見せつけるようにゆっくりと腰に佩いた剣を抜く。刀身が赤く光って見えた。
「誘拐? 婚約者を婚約者の家に連れて帰っただけの話だ」
「婚約者?」
ラズは思わず顔を俯けた。聞かれたくないし、知られたくなかったことなのに。
「ユーリアス・リスティオンは跡を継ぐ私のものだ」
ウィス様が怪訝な顔で聞き返したことに機嫌を良くして、レイフは歌うように高らかと宣言した。
「ユーリアス・リスティオンは死亡届けが出ています。今更ですよ」
何故、ウィス様がそのことを知っているのかわからず、ラズは視線を彷徨わせた。
「お前の婚約者はユーリアスの妹のはずだが」
リド様もウィス様と平然とレイフに事実を告げる。死亡届けが出ているだろうとおもっていたけれどラズは確かめたわけではなかったので知らなかったことだ。それを何故二人が知っているんだろうと視線を二人に向けた。
「どうして――」
ラズは問わずにはいられなかった。二人には何も言っていないはずなのに。
「「調べた」」
悪びれもせず、口調も揃えた二人にラズは目眩がした。
「ユーリ兄ちゃんで、ユーリが犬っていうのは無理があったぞ、ラズ」
「うぐっ」
穴があったら入りたくなるくらい恥ずかしい。『可愛い、ユーリ』と連呼していたのは嫌がらせだったのだ。
「私は好きな人のことは何でも知りたい質のようです。孤児院の線から弾きだしました。孤児院に毎年多額の資金援助しているリスティオン伯爵から調べたんです。ラズは貴実でしょう? 絶対いないとはいいませんが、私は平民の貴実は見たことがなかったので」
「俺は貴実じゃ……」
ないと思うけれど、絶対とは言い切れない。それに、父が孤児院に寄付していることは知らなかった。それなら、何故と……やりきれない思いが溢れる。
ラズが思いふけるのを破ったのは、レイフのとんでもない言葉だった。
「ユーリは私のものだ。既に契りも交わしている」
あまりに驚きすぎて、ラズは声を失った。
ラズの衝撃を見たリド様は、本当の事だと思ったのだろうか。その瞬間、リド様の剣から白金に輝く魔力の塊が飛び出した。
「ひぇ!」
ラズの口から変な声が出た。まさか、家の中で? とラズは身体を強張らせる。それをどうやったのかレイフは弾いて見せた。凄まじい轟音が轟いて窓のあった方の壁が吹き飛び、丸くぽっかりあいた穴から空が見えた。
「団長、ラズにあたったらどうするんですか!」
本当にその通りだ。レイフが弾け飛んだらラズも無事ではすまなかっただろう。
「殺す!」
リド様の声には殺気が感じられた。いつもの鷹揚で優しい団長ではなく、嫉妬に我を忘れた男に見えた。
「え……、団長、本気にしたんじゃありませんよね……」
ウィス様はレイフの挑発だと気付いていないリド様を呆気にとられて見つめている。二度目の攻撃をレイフが弾くその瞬間、ラズは右にある扉が開くのを見た。隙間に輝くのはセシリアの金の髪だ。
「お兄様! ご無事ですか!」
「お嬢様、危険です」
止めるジェシカの声、ラズは無意識に『妹を護らなければ!』と思った。身体は危険を察知して自分の力以上の速さでラズを扉の方へと走らせた。
「「ラズ!!」」
「ユーリ!」
レイフの手が、ラズを掴もうとして空を切った。
「セシリア!」
どうしたって間に合わない。軌道を塞げばセシリアを護れるだろうか。
ラズはそれに賭けた。
背後にどどろく音、熱さを感じる。ラズはチリッと髪が焼ける音を聞いた、ような気がした。
宙に浮いたお守りの光は魔方陣だった。空中に描かれた魔方陣からウィス様と何故かリド様まで現れて、ラズは驚きと共に安堵した。
「ウィス様! リド様!」
魔方陣を蹴るようにして床に着地した二人は、ラズを見てギョッと目を剥いた。視線の先が自分の上半身で、そう言えば何も着ていない上に首輪つきだったことを思い出して、ラズは慌ててシーツを引き寄せた。
「貴様ら! 誰の屋敷だと思ってる――!」
レイフはラズを隠すように二人の侵入者に立ち塞がった。ウィス様やリド様を知らないわけがないのにその台詞をよく言えたな……とラズはレイフの背中を見ながらこっそり思う。 レイフがどれほどの魔力を持っているのかわからないけれど、普通ならこの覇気に耐えられるとは思えない。レイフが竜の血筋を持っているというのは本当のことなのだろう。
「ラズを誘拐しておいてよく言ったものだな」
リド様の目は鬼と呼ばれるに相応しくつり上がっていた。ラズは怯えてしまいそうになる自分を叱咤激励する。助けに来てくれた人に怯えるわけにはいかない。
リド様は、見せつけるようにゆっくりと腰に佩いた剣を抜く。刀身が赤く光って見えた。
「誘拐? 婚約者を婚約者の家に連れて帰っただけの話だ」
「婚約者?」
ラズは思わず顔を俯けた。聞かれたくないし、知られたくなかったことなのに。
「ユーリアス・リスティオンは跡を継ぐ私のものだ」
ウィス様が怪訝な顔で聞き返したことに機嫌を良くして、レイフは歌うように高らかと宣言した。
「ユーリアス・リスティオンは死亡届けが出ています。今更ですよ」
何故、ウィス様がそのことを知っているのかわからず、ラズは視線を彷徨わせた。
「お前の婚約者はユーリアスの妹のはずだが」
リド様もウィス様と平然とレイフに事実を告げる。死亡届けが出ているだろうとおもっていたけれどラズは確かめたわけではなかったので知らなかったことだ。それを何故二人が知っているんだろうと視線を二人に向けた。
「どうして――」
ラズは問わずにはいられなかった。二人には何も言っていないはずなのに。
「「調べた」」
悪びれもせず、口調も揃えた二人にラズは目眩がした。
「ユーリ兄ちゃんで、ユーリが犬っていうのは無理があったぞ、ラズ」
「うぐっ」
穴があったら入りたくなるくらい恥ずかしい。『可愛い、ユーリ』と連呼していたのは嫌がらせだったのだ。
「私は好きな人のことは何でも知りたい質のようです。孤児院の線から弾きだしました。孤児院に毎年多額の資金援助しているリスティオン伯爵から調べたんです。ラズは貴実でしょう? 絶対いないとはいいませんが、私は平民の貴実は見たことがなかったので」
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ないと思うけれど、絶対とは言い切れない。それに、父が孤児院に寄付していることは知らなかった。それなら、何故と……やりきれない思いが溢れる。
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「ひぇ!」
ラズの口から変な声が出た。まさか、家の中で? とラズは身体を強張らせる。それをどうやったのかレイフは弾いて見せた。凄まじい轟音が轟いて窓のあった方の壁が吹き飛び、丸くぽっかりあいた穴から空が見えた。
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本当にその通りだ。レイフが弾け飛んだらラズも無事ではすまなかっただろう。
「殺す!」
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「え……、団長、本気にしたんじゃありませんよね……」
ウィス様はレイフの挑発だと気付いていないリド様を呆気にとられて見つめている。二度目の攻撃をレイフが弾くその瞬間、ラズは右にある扉が開くのを見た。隙間に輝くのはセシリアの金の髪だ。
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どうしたって間に合わない。軌道を塞げばセシリアを護れるだろうか。
ラズはそれに賭けた。
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