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お守り
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「嫌だ!」
ラズは噛みつくしか思いつかなかった。
「っ!」
口の中に鉄のような嫌な味が広がる。
「ラズ、子猫のようだね。可愛いよ」
唇を噛まれてもレイフは怯まなかった。
「俺は誰のものにもならない!」
ラズはレイフを突き飛ばそうとして失敗した。騎士と違って細身なのに体幹ががっちりしている。
「私はね、ユーリを護ろうと思って魔法も身体も鍛えた。伯爵家なんてどうでもいい。ユーリさえ手に入るなら――」
どこまでも二人は平行線を辿る。
「レイフ、俺の恋人を知ってるだろう? あの人に勝てると思うのか?」
リド様のことを言えば引き返すかと思ってラズは訊ねた。レイフはフッと真顔に戻った。
「あの男は駄目だ。竜の血が強すぎる。ラズを奪われる――」
レイフの目に初めて焦りが見えた。
「だったら……」
帰してくれ。今なら間に合うからと提案しようとしたラズを、レイフはベッドに押し倒した。ベッドはラズを受け止めて沈み込む。
「今すぐに私のものにする。大丈夫だ、ラズはきっと貴実だから私を受け入れられるよ。私も竜の血が入っているんだ。ラズを抱けば、きっと拮抗できるはずだ」
貴実を抱けば魔力が上昇する、そうレイフは言った。
「駄目だ! そう簡単にいくものか! 相性だってある――」
父はその目的もあって母を娶ったけれど、実際には上手くいかなかった。
「私達の相性が悪いわけがないだろう?」
レイフには勝機しか見えないのだろう。ラズの身体を反転させ、うつ伏せにする。レイフは小さな声で呪文を唱える。ラズの服を魔法の風の力で切り裂いた。
「ひっ!」
パラパラと落ちる布はラズの掌ほどの大きさになって散らばった。
「大丈夫、傷をつけたりしない。大事に抱くから……」
想い合って結婚した夫婦の初夜かと思うような声で甘く囁きかけられて、ラズは身体を丸めた。
確かめると、残っているのは下半身のズボンと下着だけだった。
「や、ヤダ!」
「駄々をこねても、私には戯れているようにしか見えないよ。本当はキスしたいけれど、また噛みつかれそうだし。私の子種を注いだ後、キスしようね」
チュッと首筋にキスされて、全身がぞわっと粟立つ。子種と言われてさすがのラズもレイフが何をしようとしているのか悟った。恐怖でカタカタと震える手で、ウィス様のお守りを握る。魔法が使えない今、どうしようもないものだとわかっていても、一縷の望みをかけられるものはこれしかなかったのだ。
「なに、これ」
不満そうな声で、レイフは紐を引っ張った。首に掛けていたウィス様のお守りをレイフが奪う。
「止めろ!」
「自分の魔力の籠もったものを贈るなんて、あの男も気の利いたことをするじゃないか。明日、私が新しいものをあげよう。もっと綺麗で豪華な。ラズに似合うものをね」
レイフはウィス様のお守りを宙に放り投げて、風の力で砕こうとした。普通の石ならそれで木っ端微塵になるだろう。けれど、青紫の石は魔力を得たことで光り輝いた。
石を覆う魔力はラズのものでなくてもよかったのだと、その時初めて気付いた。
ラズは噛みつくしか思いつかなかった。
「っ!」
口の中に鉄のような嫌な味が広がる。
「ラズ、子猫のようだね。可愛いよ」
唇を噛まれてもレイフは怯まなかった。
「俺は誰のものにもならない!」
ラズはレイフを突き飛ばそうとして失敗した。騎士と違って細身なのに体幹ががっちりしている。
「私はね、ユーリを護ろうと思って魔法も身体も鍛えた。伯爵家なんてどうでもいい。ユーリさえ手に入るなら――」
どこまでも二人は平行線を辿る。
「レイフ、俺の恋人を知ってるだろう? あの人に勝てると思うのか?」
リド様のことを言えば引き返すかと思ってラズは訊ねた。レイフはフッと真顔に戻った。
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「だったら……」
帰してくれ。今なら間に合うからと提案しようとしたラズを、レイフはベッドに押し倒した。ベッドはラズを受け止めて沈み込む。
「今すぐに私のものにする。大丈夫だ、ラズはきっと貴実だから私を受け入れられるよ。私も竜の血が入っているんだ。ラズを抱けば、きっと拮抗できるはずだ」
貴実を抱けば魔力が上昇する、そうレイフは言った。
「駄目だ! そう簡単にいくものか! 相性だってある――」
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「私達の相性が悪いわけがないだろう?」
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「ひっ!」
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「大丈夫、傷をつけたりしない。大事に抱くから……」
想い合って結婚した夫婦の初夜かと思うような声で甘く囁きかけられて、ラズは身体を丸めた。
確かめると、残っているのは下半身のズボンと下着だけだった。
「や、ヤダ!」
「駄々をこねても、私には戯れているようにしか見えないよ。本当はキスしたいけれど、また噛みつかれそうだし。私の子種を注いだ後、キスしようね」
チュッと首筋にキスされて、全身がぞわっと粟立つ。子種と言われてさすがのラズもレイフが何をしようとしているのか悟った。恐怖でカタカタと震える手で、ウィス様のお守りを握る。魔法が使えない今、どうしようもないものだとわかっていても、一縷の望みをかけられるものはこれしかなかったのだ。
「なに、これ」
不満そうな声で、レイフは紐を引っ張った。首に掛けていたウィス様のお守りをレイフが奪う。
「止めろ!」
「自分の魔力の籠もったものを贈るなんて、あの男も気の利いたことをするじゃないか。明日、私が新しいものをあげよう。もっと綺麗で豪華な。ラズに似合うものをね」
レイフはウィス様のお守りを宙に放り投げて、風の力で砕こうとした。普通の石ならそれで木っ端微塵になるだろう。けれど、青紫の石は魔力を得たことで光り輝いた。
石を覆う魔力はラズのものでなくてもよかったのだと、その時初めて気付いた。
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