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帰り道
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「わざわざありがとうございました」
お菓子も食べたし、もう帰ってくれないかなと思ってお礼を言った。
「ラズはまだここにいるのか?」
「いえ、もう帰ります。買い物して帰るつもりなんです」
ここはユーリという名前だけでなく見られたくないものがいくつかある。院長とか院長とか院長とか。
「なら一緒に帰ろう。私も街に用事があるんだ」
街にまで着いてくるつもりだろうかと、不遜なことを思いながら首を振った。
「いえ、俺は……、馬を繋げられるような店にいくわけじゃないので」
貴族の使う高級店は馬を停めたり馬車を停めたりするところがあるけれど、ラズが買い物をしようと思っているあたりは馬を繋いだら盗まれる。
「なら途中まで一緒に行こう。持って帰るお菓子もあるんだろう? エカテリテに渡して、ラズの部屋に届けておく」
「でも荷物を運ばせるなんて……」
騎士団の人間に見つかったらきっと怒られるだろう。エカテおばさんも大事なぼっちゃんに何をさせるのかと思うに違いない。
「ラズのお菓子を運ぶのは楽しい。それに断るなら店まで着いていくぞ」
それは嫌だなと思ったら笑われた。
「すみません。明日のお菓子、違う味のカップケーキにしますね」
お礼のつもりだ。
「ああ、楽しみにしてる」
団長はまだ笑っている。そんなに変な顔だったのだろうか。
子供達に見送られて、団長とクレセントと一緒に孤児院を離れた。母には送らないでいいと先に言っておいた。
団長は馬に乗らず、ラズの横を愛馬クレセントを連れて歩く。
「馬に乗ってください」
「ラズも一緒に乗るか?」
小さな時に習ったけれど、覚えているか定かではない。
「いえ、結構です。俺は乗り合い馬車で帰りますから」
そう言ったら、クレセントが鼻でラズの顔を突いた。
「乗れって言ってるぞ。ほら」
団長は軽い動作でクレセントに跨がった。そしてラズを上から引き上げる。
「うわっ」
「軽いな、ラズは。もっと食え。食って大きくなれ」
どんなに食べても団長やウィス様のように大きくならないはずだ。
二人で乗ったらクレセントが辛いだろうと思ったけれど、ラズが反論する間もなく軽やかに走りだした。
「わわっ!」
「舌を噛まないようにな」
団長は、笑いながら自分の前に乗せたラズの腰を引き寄せた。
大きな馬なのにほとんど反撞を感じない。馬の背中に乗から見る世界は広くて、風が心地良かった。
「いいだろう?」
「はいっ!」
孤児院のある場所は王都と言っても僻地で、森に近い。けれどクレセントに乗れば大通りまであっという間だった。人通りが多くなったとラズが感じた瞬間、クレセントが走るのを止めた。
「団長が指示してるんですか?」
「いや、今日は乗ってるだけだ」
「頭のいい馬なんですね」
さすが騎士団長の乗る馬だけあって、たてがみもサラサラで指通りがいい。首筋を撫でると「ブブブブブッ」と聞こえた。
「ありがとうって言ってるぞ」
「以心伝心なんですね」
ラズは貴族に戻りたいと思ったことはなかったが、クレセントと走れる団長のことが少しだけうらやましく思った。
お菓子も食べたし、もう帰ってくれないかなと思ってお礼を言った。
「ラズはまだここにいるのか?」
「いえ、もう帰ります。買い物して帰るつもりなんです」
ここはユーリという名前だけでなく見られたくないものがいくつかある。院長とか院長とか院長とか。
「なら一緒に帰ろう。私も街に用事があるんだ」
街にまで着いてくるつもりだろうかと、不遜なことを思いながら首を振った。
「いえ、俺は……、馬を繋げられるような店にいくわけじゃないので」
貴族の使う高級店は馬を停めたり馬車を停めたりするところがあるけれど、ラズが買い物をしようと思っているあたりは馬を繋いだら盗まれる。
「なら途中まで一緒に行こう。持って帰るお菓子もあるんだろう? エカテリテに渡して、ラズの部屋に届けておく」
「でも荷物を運ばせるなんて……」
騎士団の人間に見つかったらきっと怒られるだろう。エカテおばさんも大事なぼっちゃんに何をさせるのかと思うに違いない。
「ラズのお菓子を運ぶのは楽しい。それに断るなら店まで着いていくぞ」
それは嫌だなと思ったら笑われた。
「すみません。明日のお菓子、違う味のカップケーキにしますね」
お礼のつもりだ。
「ああ、楽しみにしてる」
団長はまだ笑っている。そんなに変な顔だったのだろうか。
子供達に見送られて、団長とクレセントと一緒に孤児院を離れた。母には送らないでいいと先に言っておいた。
団長は馬に乗らず、ラズの横を愛馬クレセントを連れて歩く。
「馬に乗ってください」
「ラズも一緒に乗るか?」
小さな時に習ったけれど、覚えているか定かではない。
「いえ、結構です。俺は乗り合い馬車で帰りますから」
そう言ったら、クレセントが鼻でラズの顔を突いた。
「乗れって言ってるぞ。ほら」
団長は軽い動作でクレセントに跨がった。そしてラズを上から引き上げる。
「うわっ」
「軽いな、ラズは。もっと食え。食って大きくなれ」
どんなに食べても団長やウィス様のように大きくならないはずだ。
二人で乗ったらクレセントが辛いだろうと思ったけれど、ラズが反論する間もなく軽やかに走りだした。
「わわっ!」
「舌を噛まないようにな」
団長は、笑いながら自分の前に乗せたラズの腰を引き寄せた。
大きな馬なのにほとんど反撞を感じない。馬の背中に乗から見る世界は広くて、風が心地良かった。
「いいだろう?」
「はいっ!」
孤児院のある場所は王都と言っても僻地で、森に近い。けれどクレセントに乗れば大通りまであっという間だった。人通りが多くなったとラズが感じた瞬間、クレセントが走るのを止めた。
「団長が指示してるんですか?」
「いや、今日は乗ってるだけだ」
「頭のいい馬なんですね」
さすが騎士団長の乗る馬だけあって、たてがみもサラサラで指通りがいい。首筋を撫でると「ブブブブブッ」と聞こえた。
「ありがとうって言ってるぞ」
「以心伝心なんですね」
ラズは貴族に戻りたいと思ったことはなかったが、クレセントと走れる団長のことが少しだけうらやましく思った。
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