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出会い
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視界にキラキラと光が混ざる。さっきからお腹も空いてるような気がするのは、ただでさえ少ない魔力の使いすぎだろう。実際朝から働き詰めでもう夕方だ。空腹になれているとはいえ、お腹も空いている。
「ラズ! さっさとグラスを洗って乾かせ。時間までに間に合わないぞ!」
「総轄長、やってます! でもそろそろ休憩をもらわないと……」
「そんなが時間あると思っているのか! 終わったら会場までグラスを運べ」
言っても無駄だ、怒鳴られて気力が減る。
「死んだら化けてでてやるよ」
心の中でそう言いながらもまだ大丈夫だと思っていた。
魔力でグラスを洗い、乾かす。それをトレーに載せて中庭を突っ切る。
思っていたより人が多かった。夜の祝賀会に参加する騎士団の人たちだろうか。中庭にはカフェがあるから下級使用人は滅多に通らない。珍しいからか視線は感じるが、無視を決め込んだ。
三ヶ月前、国境に現れた竜から国を護っていた精鋭揃いの第二騎士団が昨日帰ってきた。今日は竜を追い払った彼らを称える祝賀会が行われるのだ。決まったのは昨日の夜。朝から城の使用人という使用人がせわしなく働いて準備を進めている。
せめて三日の猶予が欲しい。だが、第二騎士団はいつ出動がかかるかわからないから、撤収してきた次の日に行われるのが慣例らしい。
ラズが城に勤務が決まったのは騎士団が遠征に赴いた後だったので、実際見たことのない人や隊服だ。黒いお仕着せに下級使用人の緑のタイとは大違いで興味はあったが見ている時間はなかった。
具合が悪かったけれど、城に勤めてから何度かこの状態になったことがあったので、それほど気にしてはいなかった。これを運んだら、こっそり内側のポケットに忍ばせているクッキーを食べるつもりだ。腹を満たすというよりは、魔力を補充したかった。甘い物を食べると僅かながらに魔力が回復するからだ。
突然身体が震えはじめて、トレーの上のグラスが地面に落ちた。沢山載っていたグラスが一瞬で砕け散る。
「寒っ」
もう夏だというのに、身体からドバッと汗が流れて全身を一瞬で冷やした。震える手を押さえて蹲る。
「おい、大丈夫か」
「大丈夫……」
カチカチなる歯を食いしばって、返事をした。
全然大丈夫じゃないけれど、弱みを見せたくなかった。世の中隙を見せたら齧りついてくるハイエナばかりだ。三ヶ月もあれば、この場所で人に何かを期待することがむなしいことだと馬鹿でも気付く。
「そうか」
男の声は低音で、厚みがあった。耳元で囁かれた女は腰砕けになりそうな声と言えばわかるだろうか。男はそう言って倒れたラズを引き寄せた。
「平気だ……」
そう言った後、目の前がまっ暗になった。
「ラズ! さっさとグラスを洗って乾かせ。時間までに間に合わないぞ!」
「総轄長、やってます! でもそろそろ休憩をもらわないと……」
「そんなが時間あると思っているのか! 終わったら会場までグラスを運べ」
言っても無駄だ、怒鳴られて気力が減る。
「死んだら化けてでてやるよ」
心の中でそう言いながらもまだ大丈夫だと思っていた。
魔力でグラスを洗い、乾かす。それをトレーに載せて中庭を突っ切る。
思っていたより人が多かった。夜の祝賀会に参加する騎士団の人たちだろうか。中庭にはカフェがあるから下級使用人は滅多に通らない。珍しいからか視線は感じるが、無視を決め込んだ。
三ヶ月前、国境に現れた竜から国を護っていた精鋭揃いの第二騎士団が昨日帰ってきた。今日は竜を追い払った彼らを称える祝賀会が行われるのだ。決まったのは昨日の夜。朝から城の使用人という使用人がせわしなく働いて準備を進めている。
せめて三日の猶予が欲しい。だが、第二騎士団はいつ出動がかかるかわからないから、撤収してきた次の日に行われるのが慣例らしい。
ラズが城に勤務が決まったのは騎士団が遠征に赴いた後だったので、実際見たことのない人や隊服だ。黒いお仕着せに下級使用人の緑のタイとは大違いで興味はあったが見ている時間はなかった。
具合が悪かったけれど、城に勤めてから何度かこの状態になったことがあったので、それほど気にしてはいなかった。これを運んだら、こっそり内側のポケットに忍ばせているクッキーを食べるつもりだ。腹を満たすというよりは、魔力を補充したかった。甘い物を食べると僅かながらに魔力が回復するからだ。
突然身体が震えはじめて、トレーの上のグラスが地面に落ちた。沢山載っていたグラスが一瞬で砕け散る。
「寒っ」
もう夏だというのに、身体からドバッと汗が流れて全身を一瞬で冷やした。震える手を押さえて蹲る。
「おい、大丈夫か」
「大丈夫……」
カチカチなる歯を食いしばって、返事をした。
全然大丈夫じゃないけれど、弱みを見せたくなかった。世の中隙を見せたら齧りついてくるハイエナばかりだ。三ヶ月もあれば、この場所で人に何かを期待することがむなしいことだと馬鹿でも気付く。
「そうか」
男の声は低音で、厚みがあった。耳元で囁かれた女は腰砕けになりそうな声と言えばわかるだろうか。男はそう言って倒れたラズを引き寄せた。
「平気だ……」
そう言った後、目の前がまっ暗になった。
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