8 / 12
8 ライファーでもなかった
しおりを挟む
フラワーガーデン学園は前世でいうところの大学に近いような気がする。俺も大学に行ったわけではないので、あくまで感覚だが。百人に満たない新入生は全員とりあえず講堂に集められる。とりたい授業を選んで、三年間の合計単位で卒業が決まる。だから学年で一番とか順位付けは入学するまでの話だ。クラスもとくにない。専門にとる授業によって集団が形成されることになる。
紙に書かれた履修可能な授業を眺めていると隣の席に座っているライファーが唸っている。
「魔法学、習うのか?」
「いや、学園で習うものは全て履修しているから、今更だな。サイもだろ?」
魔法は血筋が色濃いので、家で習うのがほとんどだ。フラワーガーデンで習うことができるのは、家で習わないような理論や実戦魔法や研究だ。
「魔法はライファーが教えてくれるからな。ライファーの魔法理論は面白い。俺では思いつかないことを考えるし、実行するだけの魔力も精度も高いだろう」
「サイがそんなに褒めるからオレもやる気になるんだよな……」
知り合ったのは十二歳の頃だが、その頃にはもう魔塔の天才として有名だったライファーだ。
「俺は本当のことしか言わないし、褒めてるというより感嘆してるだけだ」
乙女ゲームに逆らおうと決めた時、設定に眼鏡でクールビューティと書かれていたから絶対に眼鏡を掛けないと決めて魔塔に教師を頼んだ。ライファーを薦められたのは同い年という共通点があったからだが、決めたのは攻略対象だからだった。俺がプリメリアを守ろうとしてもこの世界で攻略対象者はある意味チートだ。ライファーが本気になったら俺もプリメリアも無事ではいられない。知り合いだったら、少しくらい加減してくれるだろうと安易に近づいたが、知り合ったライファーはいいやつで。ゲームとか関係なく友達になりたいと思った。
ライファーは本当に凄い。俺は氷の魔法に加えて水の魔法くらいしか使えないが、全属性の黒髪黒目のせいか四大精霊魔法に加えて特殊な魔法も使えるのだ。
「褒め殺しってサイは知ってるのかな?」
呆れたような顔をしてライファーが紙を置いた。
「本当のことしか言ってない」
「サイは本当にオレを転がすのが上手だよな。で、何の授業をとるんだ?」
「……社交はとったほうがいい。せっかくなんだから」
このフラワーガーデンは、フラワー王国の社交界の縮図だ。そのため貴族であればどんな貧乏だろうが、爵位だろうが入学するために必死になる。
「踊ったりお茶会したりするだけだろう?」
「……ライファー、それは女のほうだ」
「え……」
本気でそう思っていたらしい。踊るのはペアだからともかく、お茶会の勉強をしてどうする。あ、俺は王太子の婚約者なのだからそっちを習うべきなのか……?
「男は何をするんだ」
「狩りだな。後は遊戯や賭け事も習うはずだぞ」
「習う賭け事って……面白いのか?」
「知らん」
ザッととるべきものを書いてみた。何事もなければ単位は取れるだろう。時間も余裕をみている。
「見せて見せて」
「……後悔するなよ?」
一緒の授業をとろうと書き写し始めたライファーに忠告だけしておいた。
「ライファー、昨日西門のあたりでハンカチを拾ったりしなかったか?」
「ハンカチ?」
「ああ、女の子が落としたハンカチだ」
「ははっ、サイ。お前はモテるからそんな王道的なナンパにあったんだな」
「いや、俺のことじゃなくてお前のことだ」
「そんな美味しいシチュエーションあったら最初に話してる」
ライファーはそういうやつだ。ということは、ライファールートでもないと。ヒロインは難しいケヴィンルートに挑戦する猛者だったのか。
早くヒロインの顔を見たいものだ。
紙に書かれた履修可能な授業を眺めていると隣の席に座っているライファーが唸っている。
「魔法学、習うのか?」
「いや、学園で習うものは全て履修しているから、今更だな。サイもだろ?」
魔法は血筋が色濃いので、家で習うのがほとんどだ。フラワーガーデンで習うことができるのは、家で習わないような理論や実戦魔法や研究だ。
「魔法はライファーが教えてくれるからな。ライファーの魔法理論は面白い。俺では思いつかないことを考えるし、実行するだけの魔力も精度も高いだろう」
「サイがそんなに褒めるからオレもやる気になるんだよな……」
知り合ったのは十二歳の頃だが、その頃にはもう魔塔の天才として有名だったライファーだ。
「俺は本当のことしか言わないし、褒めてるというより感嘆してるだけだ」
乙女ゲームに逆らおうと決めた時、設定に眼鏡でクールビューティと書かれていたから絶対に眼鏡を掛けないと決めて魔塔に教師を頼んだ。ライファーを薦められたのは同い年という共通点があったからだが、決めたのは攻略対象だからだった。俺がプリメリアを守ろうとしてもこの世界で攻略対象者はある意味チートだ。ライファーが本気になったら俺もプリメリアも無事ではいられない。知り合いだったら、少しくらい加減してくれるだろうと安易に近づいたが、知り合ったライファーはいいやつで。ゲームとか関係なく友達になりたいと思った。
ライファーは本当に凄い。俺は氷の魔法に加えて水の魔法くらいしか使えないが、全属性の黒髪黒目のせいか四大精霊魔法に加えて特殊な魔法も使えるのだ。
「褒め殺しってサイは知ってるのかな?」
呆れたような顔をしてライファーが紙を置いた。
「本当のことしか言ってない」
「サイは本当にオレを転がすのが上手だよな。で、何の授業をとるんだ?」
「……社交はとったほうがいい。せっかくなんだから」
このフラワーガーデンは、フラワー王国の社交界の縮図だ。そのため貴族であればどんな貧乏だろうが、爵位だろうが入学するために必死になる。
「踊ったりお茶会したりするだけだろう?」
「……ライファー、それは女のほうだ」
「え……」
本気でそう思っていたらしい。踊るのはペアだからともかく、お茶会の勉強をしてどうする。あ、俺は王太子の婚約者なのだからそっちを習うべきなのか……?
「男は何をするんだ」
「狩りだな。後は遊戯や賭け事も習うはずだぞ」
「習う賭け事って……面白いのか?」
「知らん」
ザッととるべきものを書いてみた。何事もなければ単位は取れるだろう。時間も余裕をみている。
「見せて見せて」
「……後悔するなよ?」
一緒の授業をとろうと書き写し始めたライファーに忠告だけしておいた。
「ライファー、昨日西門のあたりでハンカチを拾ったりしなかったか?」
「ハンカチ?」
「ああ、女の子が落としたハンカチだ」
「ははっ、サイ。お前はモテるからそんな王道的なナンパにあったんだな」
「いや、俺のことじゃなくてお前のことだ」
「そんな美味しいシチュエーションあったら最初に話してる」
ライファーはそういうやつだ。ということは、ライファールートでもないと。ヒロインは難しいケヴィンルートに挑戦する猛者だったのか。
早くヒロインの顔を見たいものだ。
45
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
悪役の弟に転生した僕はフラグをへし折る為に頑張ったけど監禁エンドにたどり着いた
霧乃ふー 短編
BL
「シーア兄さまぁ♡だいすきぃ♡ぎゅってして♡♡」
絶賛誘拐され、目隠しされながら無理矢理に誘拐犯にヤられている真っ最中の僕。
僕を唯一家族として扱ってくれる大好きなシーア兄様も助けに来てはくれないらしい。
だから、僕は思ったのだ。
僕を犯している誘拐犯をシーア兄様だと思いこめばいいと。
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
推し様の幼少期が天使過ぎて、意地悪な義兄をやらずに可愛がってたら…彼に愛されました。
櫻坂 真紀
BL
死んでしまった俺は、大好きなBLゲームの悪役令息に転生を果たした。
でもこのキャラ、大好きな推し様を虐め、嫌われる意地悪な義兄じゃ……!?
そして俺の前に現れた、幼少期の推し様。
その子が余りに可愛くて、天使過ぎて……俺、とても意地悪なんか出来ない!
なので、全力で可愛がる事にします!
すると、推し様……弟も、俺を大好きになってくれて──?
【全28話で完結しました。R18のお話には※が付けてあります。】
無愛想な彼に可愛い婚約者ができたようなので潔く身を引いたら逆に執着されるようになりました
かるぼん
BL
もうまさにタイトル通りな内容です。
↓↓↓
無愛想な彼。
でもそれは、ほんとは主人公のことが好きすぎるあまり手も出せない顔も見れないという不器用なやつ、というよくあるやつです。
それで誤解されてしまい、別れを告げられたら本性現し執着まっしぐら。
「私から離れるなんて許さないよ」
見切り発車で書いたものなので、いろいろ細かい設定すっ飛ばしてます。
需要あるのかこれ、と思いつつ、とりあえず書いたところまでは投稿供養しておきます。
弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~
荷居人(にいと)
BL
BL大賞20位。読者様ありがとうございました。
弟が生まれた日、足を滑らせ、階段から落ち、頭を打った俺は、前世の記憶を思い出す。
そして知る。今の自分は乙女ゲーム『王座の証』で平凡な顔、平凡な頭、平凡な運動能力、全てに置いて普通、全てに置いて完璧で優秀な弟はどんなに後に生まれようと次期王の継承権がいく、王にふさわしい赤の瞳と黒髪を持ち、親の愛さえ奪った弟に恨みを覚える悪役の兄であると。
でも今の俺はそんな弟の苦労を知っているし、生まれたばかりの弟は可愛い。
そんな可愛い弟が幸せになるためにはヒロインと結婚して王になることだろう。悪役になれば死ぬ。わかってはいるが、前世の後悔を繰り返さないため、将来処刑されるとわかっていたとしても、弟の幸せを願います!
・・・でもヒロインに会うまでは可愛がってもいいよね?
本編は完結。番外編が本編越えたのでタイトルも変えた。ある意味間違ってはいない。可愛がらなければ番外編もないのだから。
そしてまさかのモブの恋愛まで始まったようだ。
お気に入り1000突破は私の作品の中で初作品でございます!ありがとうございます!
2018/10/10より章の整理を致しました。ご迷惑おかけします。
2018/10/7.23時25分確認。BLランキング1位だと・・・?
2018/10/24.話がワンパターン化してきた気がするのでまた意欲が湧き、書きたいネタができるまでとりあえず完結といたします。
2018/11/3.久々の更新。BL小説大賞応募したので思い付きを更新してみました。
愛されなかった俺の転生先は激重執着ヤンデレ兄達のもと
糖 溺病
BL
目が覚めると、そこは異世界。
前世で何度も夢に見た異世界生活、今度こそエンジョイしてみせる!ってあれ?なんか俺、転生早々監禁されてね!?
「俺は異世界でエンジョイライフを送るんだぁー!」
激重執着ヤンデレ兄達にトロトロのベタベタに溺愛されるファンタジー物語。
注※微エロ、エロエロ
・初めはそんなエロくないです。
・初心者注意
・ちょいちょい細かな訂正入ります。
魔王討伐後に勇者の子を身篭ったので、逃げたけど結局勇者に捕まった。
柴傘
BL
勇者パーティーに属していた魔術師が勇者との子を身篭ったので逃走を図り失敗に終わるお話。
頭よわよわハッピーエンド、執着溺愛勇者×気弱臆病魔術師。
誰もが妊娠できる世界、勇者パーティーは皆仲良し。
さくっと読める短編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる