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4 入学式
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フラワーガーデン学園の入学式は9月だ。日本で作られた乙女ゲームなのだから4月にすればいいのにと思うが、そこは運営のこだわりでもあるのだろう。
「フラワーガーデン学園入学、新入生代表――エリック・モンド・シャイア」
壇上に上がったのは、攻略対象ではない男子生徒だ。真面目な顔をしながら拍手をしているが、俺は内心で笑みを浮かべていた。
宰相の息子である俺があまり恥ずかしい成績をとるわけにもいかないので、三位あたりを狙った作戦は成功した。お陰で、乙女ゲームでは新入生代表として挨拶していたサイラス・ルゼル・オーディクスはモブに混じっていられるのだ。
サイラスのトレードマークの眼鏡も魔法を習って視力矯正しているのでつけていない。例え格好からでもいいからゲームの世界から離れたいのである。
「サイ、お前が最高得点じゃないのか。どうしたんだ、試験の日具合でも悪かったのか」
「ライファー、俺は目立ちたくないんだ」
友人で魔法を教えてくれていたライファーは当然俺が首位だと信じていたようで、目を見ひらいて壇上のエリックを見つめた。俺が神経質な眼鏡キャラ(勉強ができる)のように、ライファーは魔法使い枠の攻略対象者だ。後は、騎士枠で一人、情報ギルド関係で一人いる。
ライファーは容姿が黒髪黒目なこともあり、前世日本人の俺にはとても馴染みがあって落ち着ける相手だ。初めて会ったとき、俺は懐かしさのあまり泣いてしまったくらい。
今でもライファーを見ていると、前世にもどったような気持ちになる。
「目立たないとか、無理じゃねぇ……」
「ライファーこそ、魔塔でずっと勉強しているんだから首位くらいとれただろう?」
魔塔は魔法使い教会の総本部で、家では面倒が見られない魔法使いの卵を集めて育てているのだ。侯爵家や魔法使いの多い家系ならそうでもないけれど、特に魔力の多い子供は黒髪黒目で産まれてくることから、家族が敬遠することもあるのだ。魔力暴走したときの被害が多いせいもある。
小さな頃から勉強に慣れているし、ライファーは特に勉強が好きなはずだ。
「オレは魔法特化だからな。政治とか経済とかよくわからん」
勉強が好きというより、魔法が好きなだけだった。
「よく入れたな」
「サイと一緒にフラワーガーデンに通うために必死に勉強した」
「えらいぞ、ライファー」
いつも魔法を教えてもらってばかりなので、必死に勉強したなんて言われると可愛く思えた。
「生徒会長がずっとこっちを睨んでないか?」
「……目でも悪いんじゃないか?」
生徒会長はアルフォンスだ。まぁ王族が名誉職につくことはよくあることだ。
目が悪くなると必死に目の辺りに力を入れるから目つきが悪くなるんだよな。乙女ゲームのサイラスは眼鏡をかけていたが目つきが悪かった。きっとかけていない時の癖がついてしまったのだろう。俺はライファーに教えてもらった水魔法で視力矯正しているから目つきは悪くないはずだ。
あれ? アルフォンスの目つきが本当に悪い。機嫌が悪いのだろうか。
俺たちの婚約は一応保留になってはいるが、認められる方向に動いているらしい。
アルフォンスは予想以上に頑張ってくれた。俺の義父であるアランに頭を下げて『幸せにする』とか『サイラス以外にいない』とか迫真の演技だった。聞いていると恥ずかしくて赤くなってしまい、いい具合に信憑性が増したはず。
アルフォンスはアランが認めてくれるようにと、勉強はもちろん、未成年王族でできる公務にも精を出して頑張っている。お陰で忙しすぎてあれから会えていなかった。
「フラワーガーデン学園入学、新入生代表――エリック・モンド・シャイア」
壇上に上がったのは、攻略対象ではない男子生徒だ。真面目な顔をしながら拍手をしているが、俺は内心で笑みを浮かべていた。
宰相の息子である俺があまり恥ずかしい成績をとるわけにもいかないので、三位あたりを狙った作戦は成功した。お陰で、乙女ゲームでは新入生代表として挨拶していたサイラス・ルゼル・オーディクスはモブに混じっていられるのだ。
サイラスのトレードマークの眼鏡も魔法を習って視力矯正しているのでつけていない。例え格好からでもいいからゲームの世界から離れたいのである。
「サイ、お前が最高得点じゃないのか。どうしたんだ、試験の日具合でも悪かったのか」
「ライファー、俺は目立ちたくないんだ」
友人で魔法を教えてくれていたライファーは当然俺が首位だと信じていたようで、目を見ひらいて壇上のエリックを見つめた。俺が神経質な眼鏡キャラ(勉強ができる)のように、ライファーは魔法使い枠の攻略対象者だ。後は、騎士枠で一人、情報ギルド関係で一人いる。
ライファーは容姿が黒髪黒目なこともあり、前世日本人の俺にはとても馴染みがあって落ち着ける相手だ。初めて会ったとき、俺は懐かしさのあまり泣いてしまったくらい。
今でもライファーを見ていると、前世にもどったような気持ちになる。
「目立たないとか、無理じゃねぇ……」
「ライファーこそ、魔塔でずっと勉強しているんだから首位くらいとれただろう?」
魔塔は魔法使い教会の総本部で、家では面倒が見られない魔法使いの卵を集めて育てているのだ。侯爵家や魔法使いの多い家系ならそうでもないけれど、特に魔力の多い子供は黒髪黒目で産まれてくることから、家族が敬遠することもあるのだ。魔力暴走したときの被害が多いせいもある。
小さな頃から勉強に慣れているし、ライファーは特に勉強が好きなはずだ。
「オレは魔法特化だからな。政治とか経済とかよくわからん」
勉強が好きというより、魔法が好きなだけだった。
「よく入れたな」
「サイと一緒にフラワーガーデンに通うために必死に勉強した」
「えらいぞ、ライファー」
いつも魔法を教えてもらってばかりなので、必死に勉強したなんて言われると可愛く思えた。
「生徒会長がずっとこっちを睨んでないか?」
「……目でも悪いんじゃないか?」
生徒会長はアルフォンスだ。まぁ王族が名誉職につくことはよくあることだ。
目が悪くなると必死に目の辺りに力を入れるから目つきが悪くなるんだよな。乙女ゲームのサイラスは眼鏡をかけていたが目つきが悪かった。きっとかけていない時の癖がついてしまったのだろう。俺はライファーに教えてもらった水魔法で視力矯正しているから目つきは悪くないはずだ。
あれ? アルフォンスの目つきが本当に悪い。機嫌が悪いのだろうか。
俺たちの婚約は一応保留になってはいるが、認められる方向に動いているらしい。
アルフォンスは予想以上に頑張ってくれた。俺の義父であるアランに頭を下げて『幸せにする』とか『サイラス以外にいない』とか迫真の演技だった。聞いていると恥ずかしくて赤くなってしまい、いい具合に信憑性が増したはず。
アルフォンスはアランが認めてくれるようにと、勉強はもちろん、未成年王族でできる公務にも精を出して頑張っている。お陰で忙しすぎてあれから会えていなかった。
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