魔術師王子は銀の騎士に恋をする

東院さち

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特等席

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「セラフィ、ずっとあなたのことを想っていました。多分、あなたが想像するよりずっと深く。理性がきくとは思えません。だから、本当に無理だと思ったら風で自分を守ってください。切り刻んでもいいです」
「……アレク、捨て身だね。大丈夫だよ」

 抱き上げるのが好きだというアレクシスの言葉は本当のようで、セラフィはまるでお姫様のように運ばれ、少しの衝撃も与えないように下ろされた。

「大きな寝台だね」

 学園ではこの三分の一もない寝台を使っていたセラフィは思わず身体を伸ばした。

「これだけは私が選びました。狭い寝台も二人の距離が近くていいんですけどね」
「アレクシスは背が高いからね。僕も身長伸びたんだけど、アレクには届かなかったなぁ。こっちからキスするとき、ちょっと背伸びしないといけないけど、この角度の顔も好きだから……いいか」
「顔、好きなんですか?」

 驚いたようにアレクシスが尋ねる。

「見てるだけで幸せな気持ちになれる」
「そうなんですか。昔からあまり好きじゃなかったので、そう言われて愛着がでました」

 長年思っていた疑問もぶつけてみた。

「鏡みてうっとりしない?」
「自分の顔を見てうっとりしていたら気持ち悪いじゃないですか。あ、だからキスの時ジッと見てたりするんですね」

 納得したようなアレクシスには、是非この美しい顔を保って欲しい。アレクシスはしわくちゃになっても美しいとセラフィは思う。
 セラフィの気持ちを感じ取ったのか、覆い被さってきたアレクシスの首に手をまわしてキスを交わした。

「フフッ、役得だよね」

 この場所は特等席だ。

「私も大好きですよ。さっきはこの小さな口が一生懸命私のものを飲み込もうとしていて、それだけで達ってしまいそうでした」

 指先で唇を押されたので、思わずパクッと咥えた。

「んぅ――?」

 セラフィの口の中にはいった指は、唾液を絡め取り、出ていく。

「悪い子には……お仕置きですね」

 アレクシスの声にセラフィの背中はゾクリと粟立った。
 キスをされながら、濡れた指先で胸の先を弄られると、くすぐったいような痛いような変な気分になる。

「胸?」
「ここも性感帯なんですよ」

 セラフィがキスの合間に尋ねると、アレクシスは胸の先を強く押したりカリカリと指先で引っ掻いて教えてくれた。

「でもそんなに……」

 口の中の方が気持ちがいい。アレクシスのキスだけで、セラフィは息が上がってしまった。逃げるようにアレクシスから顔を背けた。

「ここは、まだ慣れていませんからね。そのうち胸だけで達けるようになります――」
「あっ!」

 顔を背けたせいかアレクシスが首の付け根を軽く噛んだ。痛みがチリッと走る。

「痛いですか?」
「ううん、ビックリしただけ。痛くないよ」
「私のパートナーになった印をつけたくて」

 印をつけられた場所は、シャツに隠れないギリギリの場所だった。

「フフッ、アレクは見せびらかしたい人だったんだね」
「知らないのはあなたくらいです」

 呆れたようなアレクシスの言葉に心外だとセラフィは頬を膨らませた。

「あ……そこは誰も見ないよ――」

 首筋をたどり、指で弄っていた胸元にも唇が下りてくる。

「あまりに美味しそうだから」

 アレクシスにペロッと味見をするように舐められると、腹の奥が疼いた。セラフィは思わずアレクシスの髪を握りしめた。

「ひぃ、あ……っん」
「可愛い声です。もっと鳴いてください」

 指で撫でられたり刺激されたのとは全然違った。セラフィはアレクシスの望むまま、声を上げた。

「も、やだっ」

 どちらの乳首も真っ赤に腫れて充血してしまった。痛みというにはもどかしく、くすぐったいわけでもない。自分の身体なのにして欲しいのか欲しくないのかすらわからなかった。腫れているのは下腹部も同じで。トロリトロリと性器から透明の滴が零れていく。

「セラフィ、こんなに零してしまって……」
「あ……」

 アレクシスはセラフィの膝を広げて震えるペニスをペロリと舐めた。

「ん……っ、アレク。後ろも触って……」
「おねだりも上手になりましたね」
「だって、アレク、意地悪だもの」

 セラフィとアレクシスが両想いになってから、二人は時折こんな風に触れ合った。魔術での契約があるため、アレクシスはセラフィに快楽を教えても自分のものには触れさせないどころか見せなかった。今まで二人の触れ合いは一方的と言っても過言ではない。セラフィにとってはもどかしかった。

「意地悪……ですか? そんなつもりはなかったんですが」
「ああっ! だって、そんな舐めてるのに……根元をギュって締め付けてる」
「あなたはすぐに達ってしまうので……」
「んぅ、あ、後ろ……」

 セラフィが垂らしたものを指に絡め、アレクシスは密かなすぼまりに指を挿入させた。ゆっくりと挿いる感覚に隘路はキュッと異物の侵入を拒むように締まる。

「セラフィ、力を入れないで……」

 そう言って、アレクシスはセラフィのペニスをすっぽりと口の中に含んだ。セラフィの好い場所は反応を見るまでもなく、アレクシスの頭の中にインプットされている。

「ああっ! ……ぅんっアレク!」

 二本に増やされるとセラフィが頭を振ってアレクシスの名を呼ぶ。

「セラフィ、まだまだですよ。今日は私を受け入れてくれるのでしょう?」

 うんうんと何度も頷くと、フフッとアレクシスが笑う。

「んっ、アレク……きて――」
「まだ、ですよ」
「ああっ!」

 咥えたままアレクシスが笑うと、セラフィはその刺激だけで達きそうになる。それをアレクシスの指に阻まれて、セラフィは泣きたくなった。
 アレクシスは指を増やすごとにセラフィのペニスの快楽を一番上まで引き上げて止めてしまう。アレクシスは苦痛がないようにと言うけれど、同じ男なのだから止められるのがどれだけ辛いかわかっているはずなのに。

「達かせてっ――」
「仕方ないですね」

 アレクシスは喉の奥でセラフィの先端を締め付けた。セラフィの精液だけでなく、密かに手に入れていた痛みを軽減する油を三本の指に絡ませ、奥で開きながら。

「いやぁ、あああぁぁぁ!」

 限界まできていたセラフィは戒めていた指を緩められた瞬間、せき止められていたものをまき散らすように達った。アレクシスの指を中で締め付けたことで、更に自分のいいところに刺激を与えてしまい身体の震えがおさまるのにしばらくかかった。
 喉の奥を叩いた精液を慌てて嚥下したアレクシスは、セラフィの様子がいつもと違うことに気づいた。

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