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家族の肖像 6
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やっと離宮から出ることが許されたのは、一週間後だった。良くなったといってもクリストファーは心配して、普段中庭でやっている体力作りも難色を示した。部屋で出来る限りの筋トレをしてはいたが、元々筋肉のつきにくい俺の身体は、あっという間にガリガリになってしまう。それを恐れていたが、何とか現状維持できたようだった。
「顎のラインが細くなってますよ。もっと食べないと」
マリエルに出された料理を平らげていると、「今日は夜会です」と言われた。
「俺も出るの?」
クリストファーは何も言っていなかったからてっきりクリストファーだけいくのかと思っていたのだけれど。
「はい。そのように窺っております」
長くなった髪は、腰まで流れている。それを丁寧に調え、マリエルが夜会のための服を用意してきた。
「また……派手だね……」
黒地に金の花柄だ。花は牡丹、クリストファーの好きな花で、無駄にでかくて豪華だと思う。それを言うとまた情緒がないとか言われるので口にはしないが。髪に本物の牡丹にそっくりの造花を挿されて、俺は鏡を見る。
「最近、顔が女みたいじゃない?」
「天使です! 天使光臨です!」
「……そう……」
マリエルと他の侍女の熱い視線を受けて、なんとかそれだけ返して、離宮を出た。マオと二人の護衛がついてくる。最近運動不足だから、少し歩こうと思って、馬車を使わなかったのだ。
「ナイフは?」
「仕込んでる。五本」
マオに尋ねられて、そう答える。王宮で俺を害そうなんてやつはいないが、今日は他の国の大使達が数多く招待されているから、念のためだ。
「最近ジェイド見ないんだけど?」
俺の護衛のはずなのに、最近アルジェイドを見ない。マリエルが何も言わないということは病気とか怪我で来ないわけじゃないだろう。
「なんでもエルフラン様について、仕事を覚えさせられているとか聞いたけど」
「ふーん……。ジェイド、優秀だもんね。で、マオは?」
「いきなり二人ともいなくなったらルーファス様が寂しいだろうって」
俺は仕事が出来ないというのに、アルジェイドもマオも警護ではなく違う仕事を覚えているのかと思うと、ふーん……という声しかでなかった。まぁすねても仕方のないことだけど。
「あれ……子供だよね」
離宮は、本当に王城の隅のほうにあって、歩いて今向っている外殿のほうまでいこうと思うと三十分ほどかかるのだ。多少あちこちの横切るから男の足で二十分掛からない程度。ここは、リリアナ様達の住んでいる第一郭になる。本来なら横切っちゃ駄目な場所だが、それは王弟の妃だからフリーパスだ。
「子供ですね。見たことのない顔ですね。あっ、ルーファス様駄目ですって」
マオと護衛が止めるより早く俺は、その子供の前に立った。
赤い……燃えるような火の煌き、クリストファーと同じ色の……少女。
「こんばんわ、お姫様」
ベンチに座っていた小さな少女は突然現れた俺に不審そうな瞳を向け、固まった。
「あなた……だあれ? 女神さま?」
少女は、小さいながらもしっかりとした口調で尋ねてきた。
「め、女神?」
やはり女と間違われているのか……。
ショックで少し口篭ってしまう。
「違うの?」
「うん、違うよ。男だよ。こんなところで何をしているの?」
もう夕方だ。そろそろ小さな子供たちは夕餉を食べる時間だろう。
「お母様が帰ってしまったの……。もう、来ないの……会えないのよ!」
少女の瞳に溢れた涙を罪悪感に苛まれながら、ハンカチでそうっと拭う。
「そう。寂しいね……」
屈みこんで少女の頭を撫でると、泣きながら縋り付いてくる。背中を撫でてあげると、更に「お母様……っ!」と号泣してしまう。
俺が、この子から母親を取り上げてしまったのかと思うと、胸が締め付けられた。
「ご、ごめんなさい……。もう、言っちゃいけないの。お母様の事はわすれなさいって……言われているのに」
少女は俺の服が濡れないようにハンカチでその涙を拭う。
「何故? だれが言ったの?」
そんな事をいった人間に無性に腹が立った。子供に母親を忘れろというなんて、と憤慨していたら「お母様が……。私が幸せになるためにお母様のことはわすれるほうがいいんですって……」と思ってもみなかった人からの言葉だとわかった。
「忘れなくていいよ……。君が大好きなお母様のことを忘れる必要なんてないよ。素敵なお母様だね。君を愛しているんだね……」
母親は、この少女が周りに馴染むためにそう言ったのだろう。新たに母になる俺に気遣っての事かもしれない。
「ええっ! お母様はとても素敵なの。お菓子作りも上手で……」
「俺は食べるの専門だから、お菓子は作れないから、今度作り方を教えてくれる? 魚とか焼いたりは得意なんだけど……」
「いいわ、教えてあげるわ。魚……って食卓に出てくる魚?」
「うん、今度一緒に魚を捕りに行こうか。お菓子は、王妃様が得意だから一緒に教えてもらいに行こう。君のお母様のように作れないとは思うけど……」
そこで少女は、気付いたらしい。互いに名乗っていなかったことを。
「あなた、だあれ?」
少女は、それでも声に警戒心はにじませていなかった。抱きついていたからとても近い瞳は、クリストファーと同じ青い瞳で、そこに俺が映っている。六歳と聞いたのに、理知的なその目に、俺はこの少女とクリストファーの血のつながりを感じた。
「俺は、ルーファス。君の新しい母親になる」
俺は出来るだけ少女に嫌われないようにと願いながら、名乗った。
少女は、呆気にとられたように俺を見つめ、後ろにいたマオに確認するように視線をうつした。マオが頷くのをみて、さっきよりも青褪めた。
こんな小さな少女が青褪める様はできるだけみたくなかったが、仕方のないことだとわが身を呪う。
「ルーファス様……?」
「うん。君の名前を聞いてもいい?」
少女は、青かった顔を赤らめて、「クリスティーナ」と名乗った。
「クリスティーナ……」
きっと母親がクリストファーを意識してつけたのだろう。とても少女に似合う素敵な名前だと思ったから、そう言った。
「とても綺麗な名前だ。ティーナと呼んでいい? 君のお母様と同じようには出来ないけれど、君を護りたいと思っている」
赤らめた顔でコクンと頷く少女の手をとり、貴婦人にするように手の甲に口づけた。
「クリスティーナ様! いらっしゃったわよ。ルーファス様……?」
一人で消えただろうクリスティーナを捜しにきたのは、リリアナの侍女であるアンネットだった。
「アンネット、俺のお姫様をよろしくね。ティーナ、俺のこと……嫌いにならないで……」
俺の懇願を耳にして、クリスティーナは、真っ赤になったままブンブンと勢い良く頭を振った。
「嫌いになんてなれない……」
「ありがとう。優しいね、ティーナ」
マオに時間だといわれて、立ち上がる。
「クリスティーナ様? 大丈夫ですか?」
クリスティーナは新しい環境に体調を崩し、三日ほど寝こんでしまい、俺と再会できたのは、しばらくたってからのことになる。真っ赤だった顔はきっと風邪の前兆だったのだろう。
少し遅れて入った会場に『王子妃ルーファス様』と名前を呼ばれて入る。
もう既に中央では何人ものカップルが踊っている。王族の席を目指して歩いていると、沢山の人に囲まれてしまった。いつものことだが、これが面倒くさい。
「お久しぶり、グゼール伯爵。こんばんわ、リメール公爵夫人。素敵なドレスですね、アゼル嬢」
名前を覚えるのは得意だが、こうあちらこちらから挨拶されると、王様に挨拶も出来ないなと困ってしまう。
人の波が開けて、真っ赤な髪を後ろに撫で付けたクリストファーが現れた。俺の姿に目を細め、満足そうに微笑む。
「遅かったな……。良く似合っている」
手をとられて、甲に口付けされると、周りから「ほぅ……!」と感嘆の声が上がった。
うん、クリストファー、格好いいからこういう動作が本当に似合うんだ。
「遅くなってごめんなさい」
クリストファーは俺の腰を抱いて、歩き始める。クリストファーに挨拶したい人も山のようにいるんだけど、声を掛けれる人間って少ないのだ。特にこういう場にいるクリストファーの目付きは、鋭い。
王族席にいくのかと思っていたら、そうではなく、クリストファーは俺をリードしてダンスを始めた。スローテンポな曲で、俺の体を引き寄せる。
え、駄目でしょ。
「ご挨拶がまだ……っ」
慌てる俺に「兄上には了承してもらっている」と言う。
「もうっ、強引だねクリストファー」
笑うと、そのまま口付けられた。
「んっ」
クリストファーがこんな事をするのは珍しいことではないけれど、俺は途惑いながら、クリストファーの背を引っ張って拘束を解こうともがいた。
「あ、やぁ……」
強引に口を割ってくるクリストファーのせいで、恥ずかしさと息苦しさに真っ赤になると、やっとクリストファーが止めてくれた。顔をクリストファーの胸に押し付け、息を整えながら揺れていると、「愛している――……」と耳に囁きかけてくる。
この国は、かなり性に関しては大らかだから、これくらいは驚くべき事じゃない。けれど、クリストファーは普段はこんな見せびらかすようなことはしない。軽く口付けるとかはあるけれど。
「蕩けたお前の顔を人に見られたくない」というのに、どうしたのだろうと思っていたがその後で、クリストファーの娘が王宮に入ることになったという王様から皆への報告があったから、納得した。
クリストファーは、俺が人々にクリストファーの寵愛を失ったと思われて軽くみられないようにやったのだと気付いた。
「さっきね、クリスティーナに会ったよ。クリストファーに似ているね」
そう告げたら、凄く嫌そうな顔をされた。
「お前がティーナを疎ましく思ったらいつでも言え。さっさとどっかの王族なり、貴族なりに嫁にやってやる」
クリストファーは相変わらずだった。俺が出来る限り二人の間をとりもてたらいいなとクリスティーナの顔を思い出して、そう願った。
二人のクリスが独占欲丸出しでルーファスを取り合い、それに気付かないルーファスに宥められる光景が日常となるのに、そう時間は掛からなかった。
「顎のラインが細くなってますよ。もっと食べないと」
マリエルに出された料理を平らげていると、「今日は夜会です」と言われた。
「俺も出るの?」
クリストファーは何も言っていなかったからてっきりクリストファーだけいくのかと思っていたのだけれど。
「はい。そのように窺っております」
長くなった髪は、腰まで流れている。それを丁寧に調え、マリエルが夜会のための服を用意してきた。
「また……派手だね……」
黒地に金の花柄だ。花は牡丹、クリストファーの好きな花で、無駄にでかくて豪華だと思う。それを言うとまた情緒がないとか言われるので口にはしないが。髪に本物の牡丹にそっくりの造花を挿されて、俺は鏡を見る。
「最近、顔が女みたいじゃない?」
「天使です! 天使光臨です!」
「……そう……」
マリエルと他の侍女の熱い視線を受けて、なんとかそれだけ返して、離宮を出た。マオと二人の護衛がついてくる。最近運動不足だから、少し歩こうと思って、馬車を使わなかったのだ。
「ナイフは?」
「仕込んでる。五本」
マオに尋ねられて、そう答える。王宮で俺を害そうなんてやつはいないが、今日は他の国の大使達が数多く招待されているから、念のためだ。
「最近ジェイド見ないんだけど?」
俺の護衛のはずなのに、最近アルジェイドを見ない。マリエルが何も言わないということは病気とか怪我で来ないわけじゃないだろう。
「なんでもエルフラン様について、仕事を覚えさせられているとか聞いたけど」
「ふーん……。ジェイド、優秀だもんね。で、マオは?」
「いきなり二人ともいなくなったらルーファス様が寂しいだろうって」
俺は仕事が出来ないというのに、アルジェイドもマオも警護ではなく違う仕事を覚えているのかと思うと、ふーん……という声しかでなかった。まぁすねても仕方のないことだけど。
「あれ……子供だよね」
離宮は、本当に王城の隅のほうにあって、歩いて今向っている外殿のほうまでいこうと思うと三十分ほどかかるのだ。多少あちこちの横切るから男の足で二十分掛からない程度。ここは、リリアナ様達の住んでいる第一郭になる。本来なら横切っちゃ駄目な場所だが、それは王弟の妃だからフリーパスだ。
「子供ですね。見たことのない顔ですね。あっ、ルーファス様駄目ですって」
マオと護衛が止めるより早く俺は、その子供の前に立った。
赤い……燃えるような火の煌き、クリストファーと同じ色の……少女。
「こんばんわ、お姫様」
ベンチに座っていた小さな少女は突然現れた俺に不審そうな瞳を向け、固まった。
「あなた……だあれ? 女神さま?」
少女は、小さいながらもしっかりとした口調で尋ねてきた。
「め、女神?」
やはり女と間違われているのか……。
ショックで少し口篭ってしまう。
「違うの?」
「うん、違うよ。男だよ。こんなところで何をしているの?」
もう夕方だ。そろそろ小さな子供たちは夕餉を食べる時間だろう。
「お母様が帰ってしまったの……。もう、来ないの……会えないのよ!」
少女の瞳に溢れた涙を罪悪感に苛まれながら、ハンカチでそうっと拭う。
「そう。寂しいね……」
屈みこんで少女の頭を撫でると、泣きながら縋り付いてくる。背中を撫でてあげると、更に「お母様……っ!」と号泣してしまう。
俺が、この子から母親を取り上げてしまったのかと思うと、胸が締め付けられた。
「ご、ごめんなさい……。もう、言っちゃいけないの。お母様の事はわすれなさいって……言われているのに」
少女は俺の服が濡れないようにハンカチでその涙を拭う。
「何故? だれが言ったの?」
そんな事をいった人間に無性に腹が立った。子供に母親を忘れろというなんて、と憤慨していたら「お母様が……。私が幸せになるためにお母様のことはわすれるほうがいいんですって……」と思ってもみなかった人からの言葉だとわかった。
「忘れなくていいよ……。君が大好きなお母様のことを忘れる必要なんてないよ。素敵なお母様だね。君を愛しているんだね……」
母親は、この少女が周りに馴染むためにそう言ったのだろう。新たに母になる俺に気遣っての事かもしれない。
「ええっ! お母様はとても素敵なの。お菓子作りも上手で……」
「俺は食べるの専門だから、お菓子は作れないから、今度作り方を教えてくれる? 魚とか焼いたりは得意なんだけど……」
「いいわ、教えてあげるわ。魚……って食卓に出てくる魚?」
「うん、今度一緒に魚を捕りに行こうか。お菓子は、王妃様が得意だから一緒に教えてもらいに行こう。君のお母様のように作れないとは思うけど……」
そこで少女は、気付いたらしい。互いに名乗っていなかったことを。
「あなた、だあれ?」
少女は、それでも声に警戒心はにじませていなかった。抱きついていたからとても近い瞳は、クリストファーと同じ青い瞳で、そこに俺が映っている。六歳と聞いたのに、理知的なその目に、俺はこの少女とクリストファーの血のつながりを感じた。
「俺は、ルーファス。君の新しい母親になる」
俺は出来るだけ少女に嫌われないようにと願いながら、名乗った。
少女は、呆気にとられたように俺を見つめ、後ろにいたマオに確認するように視線をうつした。マオが頷くのをみて、さっきよりも青褪めた。
こんな小さな少女が青褪める様はできるだけみたくなかったが、仕方のないことだとわが身を呪う。
「ルーファス様……?」
「うん。君の名前を聞いてもいい?」
少女は、青かった顔を赤らめて、「クリスティーナ」と名乗った。
「クリスティーナ……」
きっと母親がクリストファーを意識してつけたのだろう。とても少女に似合う素敵な名前だと思ったから、そう言った。
「とても綺麗な名前だ。ティーナと呼んでいい? 君のお母様と同じようには出来ないけれど、君を護りたいと思っている」
赤らめた顔でコクンと頷く少女の手をとり、貴婦人にするように手の甲に口づけた。
「クリスティーナ様! いらっしゃったわよ。ルーファス様……?」
一人で消えただろうクリスティーナを捜しにきたのは、リリアナの侍女であるアンネットだった。
「アンネット、俺のお姫様をよろしくね。ティーナ、俺のこと……嫌いにならないで……」
俺の懇願を耳にして、クリスティーナは、真っ赤になったままブンブンと勢い良く頭を振った。
「嫌いになんてなれない……」
「ありがとう。優しいね、ティーナ」
マオに時間だといわれて、立ち上がる。
「クリスティーナ様? 大丈夫ですか?」
クリスティーナは新しい環境に体調を崩し、三日ほど寝こんでしまい、俺と再会できたのは、しばらくたってからのことになる。真っ赤だった顔はきっと風邪の前兆だったのだろう。
少し遅れて入った会場に『王子妃ルーファス様』と名前を呼ばれて入る。
もう既に中央では何人ものカップルが踊っている。王族の席を目指して歩いていると、沢山の人に囲まれてしまった。いつものことだが、これが面倒くさい。
「お久しぶり、グゼール伯爵。こんばんわ、リメール公爵夫人。素敵なドレスですね、アゼル嬢」
名前を覚えるのは得意だが、こうあちらこちらから挨拶されると、王様に挨拶も出来ないなと困ってしまう。
人の波が開けて、真っ赤な髪を後ろに撫で付けたクリストファーが現れた。俺の姿に目を細め、満足そうに微笑む。
「遅かったな……。良く似合っている」
手をとられて、甲に口付けされると、周りから「ほぅ……!」と感嘆の声が上がった。
うん、クリストファー、格好いいからこういう動作が本当に似合うんだ。
「遅くなってごめんなさい」
クリストファーは俺の腰を抱いて、歩き始める。クリストファーに挨拶したい人も山のようにいるんだけど、声を掛けれる人間って少ないのだ。特にこういう場にいるクリストファーの目付きは、鋭い。
王族席にいくのかと思っていたら、そうではなく、クリストファーは俺をリードしてダンスを始めた。スローテンポな曲で、俺の体を引き寄せる。
え、駄目でしょ。
「ご挨拶がまだ……っ」
慌てる俺に「兄上には了承してもらっている」と言う。
「もうっ、強引だねクリストファー」
笑うと、そのまま口付けられた。
「んっ」
クリストファーがこんな事をするのは珍しいことではないけれど、俺は途惑いながら、クリストファーの背を引っ張って拘束を解こうともがいた。
「あ、やぁ……」
強引に口を割ってくるクリストファーのせいで、恥ずかしさと息苦しさに真っ赤になると、やっとクリストファーが止めてくれた。顔をクリストファーの胸に押し付け、息を整えながら揺れていると、「愛している――……」と耳に囁きかけてくる。
この国は、かなり性に関しては大らかだから、これくらいは驚くべき事じゃない。けれど、クリストファーは普段はこんな見せびらかすようなことはしない。軽く口付けるとかはあるけれど。
「蕩けたお前の顔を人に見られたくない」というのに、どうしたのだろうと思っていたがその後で、クリストファーの娘が王宮に入ることになったという王様から皆への報告があったから、納得した。
クリストファーは、俺が人々にクリストファーの寵愛を失ったと思われて軽くみられないようにやったのだと気付いた。
「さっきね、クリスティーナに会ったよ。クリストファーに似ているね」
そう告げたら、凄く嫌そうな顔をされた。
「お前がティーナを疎ましく思ったらいつでも言え。さっさとどっかの王族なり、貴族なりに嫁にやってやる」
クリストファーは相変わらずだった。俺が出来る限り二人の間をとりもてたらいいなとクリスティーナの顔を思い出して、そう願った。
二人のクリスが独占欲丸出しでルーファスを取り合い、それに気付かないルーファスに宥められる光景が日常となるのに、そう時間は掛からなかった。
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