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初めてじゃないけど初夜です
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クリストファーの体力というか筋力をなめてました……。
会場になっていたホールから馬車付きまで決して近くはないのに、一度も重いとこぼさず、クリストファーは俺を抱いたまま足早に歩いていた。
「クリス様、歩けます」
「……黙ってろ」
何がクリストファーに薪をくべたのかわからない。チラリと後ろをみると、ニッコリと微笑むエルフラン、アルジェイドの顔が僅かながら引きつってるのが見て取れた。マオにいたっては俺と目を合わそうともしない。
だよね、俺もちょっと怖い――。
馬車に押し込められて、やはり喋ろうともしないクリストファーに僅かに不安がよぎる。
何かやってしまったのだろうか。晩餐会を中座なんて普通なら有り得ないことだろう。初めてのことで、よくはわからないけれど。
「クリス様……?」
窺ってもこちらを見てくれない。
ふと、悲しくなってきてしまった。さっきまでは確かにクリストファーに愛されていると思えていたのに、なんだろう、置いてけぼり感が半端ない。
馬車はすぐに離宮についた。馬で並走していた彼らにクリストファーは頷いていたが、やはり俺の顔は見てくれなかった。
手をひかれ馬車から降りて歩みを進めるクリストファーに引き摺られるようにして歩く。
「クリス様……」
もう一度声をかけたが、手の力が強くなるだけだった。
部屋に入るとあわてたように侍女達がこちらを振り向き、クリストファーに向って頭を下げた。帰ってくる時間じゃなかったから、色々と用意をしてくれていたのだろう。
調っていなかったことを責めるように舌を鳴らしたクリストファーに全員が身を竦ませた。
「ご苦労だった――。先に風呂に入るから適当に切り上げてくれ」
流石にクリストファーも自分の舌打ちにしまったと反省をしたようで、侍女達に労いの言葉をかけた。
「おめでとうございます、クリストファー殿下、ルーファス妃殿下」
侍女頭が頭をさげ、周りの侍女が一斉に祝福の言葉を述べるとクリストファーは「ありがとう」と微笑んだ。
そのまま俺を浴場に続く部屋へと連れ込むと扉を閉めた。
何故か、俺の心は痛かった。置き去りにされている自分がぐずっているのを感じるが、何といえばいいのか分からなかった。
クリストファーは、自分のしたいようにするのだ。
俺が料理を楽しみにしていたことも知っているのに、みんなの前であんな風に連れ出されて恥ずかしくてたまらないのも知っているのに、クリストファーのことを抗えないのも知っているのだろうに、ちっとも俺の気持ちを汲んでくれない。
名前を呼んでも応えてくれない――。
「ルーファス……」
俺の服の襟元を握り明らかに引き千切ろうとしていることに気がついて、俺は思わずクリストファーの手を振り払った。
デザイナーはこの服をとても誇らしげしていた。
『天使を飾る事ができて嬉しい』
天使とか意味がわからないが、それでも俺のために布地から作ったと言っていた。それを簡単に破ろうとしているクリストファーに腹がたったのだ。
「ルー……?」
俺が手を払った事が意外だったのだろう。クリストファーは、少しだけ躊躇うように手を伸ばしてきた。手をさけて服を護るために身を引いた。
「自分で脱ぎます……」
硬い俺の声をどう感じたのかわからないがクリストファーに背を向け、襟元から釦を外していった。時折指が痙攣したように震えた。緊張なのかわけのわからない悔しさからか、なんだかわからない。自分の気持ちを持てあましながら服をかけ、全部脱いだところを後ろからクリストファーから抱きしめられた。いつの間にかクリストファーも脱いでいたようだ。
「何故、泣いているんだ――?」
背中に触れる胸の熱さ反した声の冷たさに俺は一瞬、言葉が出なかった。
怒っている――。
クリストファーは、よくわからないが怒っているのだ。
何故俺は、人の機微がわからないのだろう……。愛する人をイライラさせる要素があるのだろうなと思うと余計に悲しくなってくる。
「……ごめんなさい……。クリス様がなんで怒っているのか……わから……ないっ」
目を瞑ると、涙が零れた。
「本当にわからないのか――?」
やっぱり怒っているのだ。その事実に心が軋んだ。
「……や……いやだっ……!」
昨日まで優しく愛撫してくれていた親指の腹で乳首をグッと押した。
俺は自分が興奮していたことに気がついた。
俺の身体は戸惑う気持ちよりもクリストファーに添っているのだと思うと、たまらなく自分が淫乱に思えた。
「いや……いやだ……。クリス様、い……や……」
ふとクリストファーの手が止まった。
「駄目だな、私も成長していないものだ――」
俺を正面に向けて唇で涙を拭ってくれた。
「またお前を苛めて泣かしてしまった……。でもお前も悪いんだぞ。私がたまらなくなっているのに、私を無視して食事をするし、帰ろうとしているのに止めるし。私ばっかり熱くなって、つい無理やり抱いてしまいたくなるんだ――」
クリストファーが、そう言って俺の頭を抱き寄せてきた。
「だってっ! クリス様が料理を選んでくれたって……」
「そうだな……」
「途中で退出なんかしたら、クリス様が怒られると思って――」
「ああ――。きっと兄上には怒られるだろうな」
「クリス様……俺が呼んでも返事……して……くれな……」
「お前は、そんな立派な体になっても泣き虫なんだな……」
グズグズと泣く俺の頭にクリストファーは宥めるようなキスをした。
「誰が泣かせているんですか……っ!」
非難すると、クリストファーは天井を仰ぎ見て、「私だな……」と呟いた。
俺はクリストファーに会うまで、泣き虫なんかじゃなかったし、クリストファーと離れていた三年間だって泣いたりしていなかった。そう告げたら「私のせいか――」と嬉しそうに言うから、切なさが溢れて決壊しそうだった心がキュンと疼いた。
駄目だ――。やっぱり俺はクリストファーには逆らえない……。
「私といるときは私だけ見て欲しいと思うのは傲慢か……?」
チュッと唇を小さく啄ばむクリストファーに首を振った。
「私より大事なものはあるのか……?」
もう一度掠めるようなキスをするので、首を振る。
「なら、問題はないな……?」
いや、問題はあると思う……。色々あると思う。だから首は振らなかった。
「お前はそんな所は強情だな。頷いていればいいのに」
そうすれば、ただ優しく抱いてやるのにと、耳元で囁かれて、そのまま舌を這わされた。
いきなりのクリストファーの愛撫に、俺は驚いた。
「そうだ、お前は俺に抱かれて快感に鳴いていればいい」
崩れ折れそうになった俺を抱き上げて、クリストファーは浴場の扉を開いた。
湯気で全貌は見えないもののいつもと違って薔薇の香りが充満していた。
クリストファーの髪と同じ真紅の薔薇の花びらが、これでもかというくらい湯船に浮いていて、その光景に俺は少し怯んだ。
「浮かべすぎじゃないか……」
クリストファーも同じ意見のようで、よかった。だが、多分新婚初夜だから、侍女達が気を利かせてくれたのだろう。そう思うと文句も言えない。
下ろされた俺はクリストファーに優しく身体を洗われた。髪の毛も色々塗りたくられていたので、綺麗さっぱりしてから湯船に浸かった。クリストファーは俺がやるといっても頷いてくれない。
「お前に触られると、我慢できなくなる」
それは俺だって同じなのに――。
「やっとだ……。やっとお前を抱ける――」
湯船で俺を前に座らせてその身体を後ろから抱きしめられた。ホゥと溜息を吐いたクリストファーが堪らないというように言葉を発して、俺の首筋に歯を立てた。
期待に身体が震える。回されたクリストファーの手を握ってそれをやりすごした。
「ルーファス――……。早くお前の中にはいりたい……」
後ろのクリストファーのアレが、既に猛っていて俺の尻と腰を推した。
「ん……」
噛みしめていた歯の間から声が漏れて、それが鼻にかかっていて異様に恥ずかしかった。真っ赤になった俺をジッと抱いて、俺の身体が温まるまでクリストファーは首筋を味わうように噛んだり舐めたりを繰り返していた。
会場になっていたホールから馬車付きまで決して近くはないのに、一度も重いとこぼさず、クリストファーは俺を抱いたまま足早に歩いていた。
「クリス様、歩けます」
「……黙ってろ」
何がクリストファーに薪をくべたのかわからない。チラリと後ろをみると、ニッコリと微笑むエルフラン、アルジェイドの顔が僅かながら引きつってるのが見て取れた。マオにいたっては俺と目を合わそうともしない。
だよね、俺もちょっと怖い――。
馬車に押し込められて、やはり喋ろうともしないクリストファーに僅かに不安がよぎる。
何かやってしまったのだろうか。晩餐会を中座なんて普通なら有り得ないことだろう。初めてのことで、よくはわからないけれど。
「クリス様……?」
窺ってもこちらを見てくれない。
ふと、悲しくなってきてしまった。さっきまでは確かにクリストファーに愛されていると思えていたのに、なんだろう、置いてけぼり感が半端ない。
馬車はすぐに離宮についた。馬で並走していた彼らにクリストファーは頷いていたが、やはり俺の顔は見てくれなかった。
手をひかれ馬車から降りて歩みを進めるクリストファーに引き摺られるようにして歩く。
「クリス様……」
もう一度声をかけたが、手の力が強くなるだけだった。
部屋に入るとあわてたように侍女達がこちらを振り向き、クリストファーに向って頭を下げた。帰ってくる時間じゃなかったから、色々と用意をしてくれていたのだろう。
調っていなかったことを責めるように舌を鳴らしたクリストファーに全員が身を竦ませた。
「ご苦労だった――。先に風呂に入るから適当に切り上げてくれ」
流石にクリストファーも自分の舌打ちにしまったと反省をしたようで、侍女達に労いの言葉をかけた。
「おめでとうございます、クリストファー殿下、ルーファス妃殿下」
侍女頭が頭をさげ、周りの侍女が一斉に祝福の言葉を述べるとクリストファーは「ありがとう」と微笑んだ。
そのまま俺を浴場に続く部屋へと連れ込むと扉を閉めた。
何故か、俺の心は痛かった。置き去りにされている自分がぐずっているのを感じるが、何といえばいいのか分からなかった。
クリストファーは、自分のしたいようにするのだ。
俺が料理を楽しみにしていたことも知っているのに、みんなの前であんな風に連れ出されて恥ずかしくてたまらないのも知っているのに、クリストファーのことを抗えないのも知っているのだろうに、ちっとも俺の気持ちを汲んでくれない。
名前を呼んでも応えてくれない――。
「ルーファス……」
俺の服の襟元を握り明らかに引き千切ろうとしていることに気がついて、俺は思わずクリストファーの手を振り払った。
デザイナーはこの服をとても誇らしげしていた。
『天使を飾る事ができて嬉しい』
天使とか意味がわからないが、それでも俺のために布地から作ったと言っていた。それを簡単に破ろうとしているクリストファーに腹がたったのだ。
「ルー……?」
俺が手を払った事が意外だったのだろう。クリストファーは、少しだけ躊躇うように手を伸ばしてきた。手をさけて服を護るために身を引いた。
「自分で脱ぎます……」
硬い俺の声をどう感じたのかわからないがクリストファーに背を向け、襟元から釦を外していった。時折指が痙攣したように震えた。緊張なのかわけのわからない悔しさからか、なんだかわからない。自分の気持ちを持てあましながら服をかけ、全部脱いだところを後ろからクリストファーから抱きしめられた。いつの間にかクリストファーも脱いでいたようだ。
「何故、泣いているんだ――?」
背中に触れる胸の熱さ反した声の冷たさに俺は一瞬、言葉が出なかった。
怒っている――。
クリストファーは、よくわからないが怒っているのだ。
何故俺は、人の機微がわからないのだろう……。愛する人をイライラさせる要素があるのだろうなと思うと余計に悲しくなってくる。
「……ごめんなさい……。クリス様がなんで怒っているのか……わから……ないっ」
目を瞑ると、涙が零れた。
「本当にわからないのか――?」
やっぱり怒っているのだ。その事実に心が軋んだ。
「……や……いやだっ……!」
昨日まで優しく愛撫してくれていた親指の腹で乳首をグッと押した。
俺は自分が興奮していたことに気がついた。
俺の身体は戸惑う気持ちよりもクリストファーに添っているのだと思うと、たまらなく自分が淫乱に思えた。
「いや……いやだ……。クリス様、い……や……」
ふとクリストファーの手が止まった。
「駄目だな、私も成長していないものだ――」
俺を正面に向けて唇で涙を拭ってくれた。
「またお前を苛めて泣かしてしまった……。でもお前も悪いんだぞ。私がたまらなくなっているのに、私を無視して食事をするし、帰ろうとしているのに止めるし。私ばっかり熱くなって、つい無理やり抱いてしまいたくなるんだ――」
クリストファーが、そう言って俺の頭を抱き寄せてきた。
「だってっ! クリス様が料理を選んでくれたって……」
「そうだな……」
「途中で退出なんかしたら、クリス様が怒られると思って――」
「ああ――。きっと兄上には怒られるだろうな」
「クリス様……俺が呼んでも返事……して……くれな……」
「お前は、そんな立派な体になっても泣き虫なんだな……」
グズグズと泣く俺の頭にクリストファーは宥めるようなキスをした。
「誰が泣かせているんですか……っ!」
非難すると、クリストファーは天井を仰ぎ見て、「私だな……」と呟いた。
俺はクリストファーに会うまで、泣き虫なんかじゃなかったし、クリストファーと離れていた三年間だって泣いたりしていなかった。そう告げたら「私のせいか――」と嬉しそうに言うから、切なさが溢れて決壊しそうだった心がキュンと疼いた。
駄目だ――。やっぱり俺はクリストファーには逆らえない……。
「私といるときは私だけ見て欲しいと思うのは傲慢か……?」
チュッと唇を小さく啄ばむクリストファーに首を振った。
「私より大事なものはあるのか……?」
もう一度掠めるようなキスをするので、首を振る。
「なら、問題はないな……?」
いや、問題はあると思う……。色々あると思う。だから首は振らなかった。
「お前はそんな所は強情だな。頷いていればいいのに」
そうすれば、ただ優しく抱いてやるのにと、耳元で囁かれて、そのまま舌を這わされた。
いきなりのクリストファーの愛撫に、俺は驚いた。
「そうだ、お前は俺に抱かれて快感に鳴いていればいい」
崩れ折れそうになった俺を抱き上げて、クリストファーは浴場の扉を開いた。
湯気で全貌は見えないもののいつもと違って薔薇の香りが充満していた。
クリストファーの髪と同じ真紅の薔薇の花びらが、これでもかというくらい湯船に浮いていて、その光景に俺は少し怯んだ。
「浮かべすぎじゃないか……」
クリストファーも同じ意見のようで、よかった。だが、多分新婚初夜だから、侍女達が気を利かせてくれたのだろう。そう思うと文句も言えない。
下ろされた俺はクリストファーに優しく身体を洗われた。髪の毛も色々塗りたくられていたので、綺麗さっぱりしてから湯船に浸かった。クリストファーは俺がやるといっても頷いてくれない。
「お前に触られると、我慢できなくなる」
それは俺だって同じなのに――。
「やっとだ……。やっとお前を抱ける――」
湯船で俺を前に座らせてその身体を後ろから抱きしめられた。ホゥと溜息を吐いたクリストファーが堪らないというように言葉を発して、俺の首筋に歯を立てた。
期待に身体が震える。回されたクリストファーの手を握ってそれをやりすごした。
「ルーファス――……。早くお前の中にはいりたい……」
後ろのクリストファーのアレが、既に猛っていて俺の尻と腰を推した。
「ん……」
噛みしめていた歯の間から声が漏れて、それが鼻にかかっていて異様に恥ずかしかった。真っ赤になった俺をジッと抱いて、俺の身体が温まるまでクリストファーは首筋を味わうように噛んだり舐めたりを繰り返していた。
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