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俺の知らない大人の世界3
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眠れない……。朝風呂に入ってから昼まで寝た。昼ごはんを侍女が運んできたので食べて、昼からまた寝た。夕方になって目が醒めてからすることもなく、ぼんやり過ごして夜ご飯を食べた。
やはり何事もなく、しかも元気になった俺は、もう一睡だって出来そうになかった。
荷物が全部リリアナの部屋にあるので、本も勉強道具もない。昼ごはんを運んでくれた侍女はリリアナの侍女だったので、結局手紙は書かずに、伝言を頼んだのだ。あの時、荷物を運んでもらうべきだった……と思うが、もはや遅かりし。
服もパジャマ代わりに着ているクリストファーのシャツだけだし、こんな格好じゃ男だって部屋の外にでられそうもなかった。
せめて下穿きくらい用意してもらうべきだった。スースーして心もとないし、また風邪をひきそうだ。
暖炉で暖められた部屋はとても温かいけど。
本当にすることがないからストレッチをして身体を伸ばしていたら、昨日よりは早く帰ってきたクリストファーが驚いていた。仰向けになって、足を頭の上の位置につける身体を二つに折り曲げた状態で俺が止まっていたからだろう。下がみえないように膝丈のシャツの下は結んでいるから、俺のアレは見えないはずだけど、驚きすぎたのか、ゲホゲホッと咽ている。
もしや、俺の風邪が移って、具合が悪くて早く帰ってきたのかもしれないと、寝台から飛び降りて扉の前で少し赤い顔をしているクリストファーの額に手をあてた。
「な、なにを……してたん……ゲホッ……」
どうやら風邪じゃなかったようで、熱はなかった。
ホッとして、「おかえりなさい。暇だし、眠れそうにないから運動していました」と言うと、ようやく咽るのが止まったクリストファーは口元を押さえて「ただいま」と俺の頭をポンポンと叩いた。
「誘われているのかと勘違いしそうだ――」
とか何とか聞こえたが、意味はよくわからなかった。
「お食事、まだだったんですか?」
軽い食事を侍従に運ばせて、クリストファーは居間のソファで食べ始めた。王太子とは思えない行儀の悪さだけど、俺がここにいること事態イレギュラーだから文句をつけることもなく、横でお喋りをすることにした。
食事を持ってきてくれる侍女くらいしか俺はお喋りもしていないのだ。
部屋でボウッと過ごしているのは慣れてはいるが、好きではない。
「もう、今日は眠れそうもありません。明日も部屋から出たらだめなんですよね?」
俺はこの寝て食べての生活に、最早飽きていた。
「悪いな――。王妃様が妊娠されているのもあるが、基本的に王族は風邪をひいたら他の王族にうつらないように部屋で謹慎なんだ。お前は、俺の預かりになっているから、母上も心配しているんだが、来る事はできない」
怖くて優しい王太后様が心配してくれていると聞いて俺は感激した。俺を心配してくれるってことは、リリアナを大事にしてくれているってことだから。
「そうですよね。俺明日は部屋で勉強してますから、荷物だけ運んでもらえるように言ってくれませんか?」
俺は納得して、クリストファーにお願いをした。
「ああ、そうしよう」
ありがとうございますと、お礼をいうと、クリストファーは小さな声で「眠れないのか?」と尋ねた。
「ええ、寝すぎで元気あまってしまって」
「元気になってよかった――」
全部食べ終わったのか、クリストファーは立ち上がると浴室のあるほうに歩いて行った。
元気になったのはクリストファーが看護してくれたからだから、お礼をしないとなと思う。まだ子供の俺じゃお礼っていっても大したことはできないけど。
考えに耽っていると、クリストファーが俺を抱き上げた。
「もう俺、歩けますよ」
どれだけ心配症なんだろうかと思ったが、クリストファーの目をみたらそれ以上何も言えなかった。
怒っているわけでもない、かと言って機嫌が凄くいいわけでもない。何か得体のしれないものを含んだその目に、俺は少しだけ体温が上がったような気がした。
「眠れるようにしてやろう――」
口の端が上がって笑みを作るのに、目は笑っていない。
野生の猛獣に睨まれたらこんな感じ?
身体も動かないし、目を離したら喉笛を噛み切られそうなそんな緊迫感があった。
「クリス様……?」
「怯えるな――。楽しいことしかしない」
クリストファーは、浴室の手前の脱衣のための部屋に備え付けられている彼の腰くらいの高さのワードローブに俺を乗せた。
「ちょっとした運動だな」
そう言って、クリストファーは俺の下唇をそっと舐めた。
俺はやっと意味がわかって真っ赤になってしまった。チュッと吸い付かれると、もうそれだけで俺は期待してしまう。口付けの気持ちよさは、他に例をみない。俺も口付けが好きらしい。
「ふっ、あ……」
クリストファーは凄く慣れていて、とても上手だ。
俺が息が出来ないで苦しくなると、頬や目尻への口付けに変えてくれて、俺が空気を吸い込んだらまた唇に戻ってくる。朝だって相当激しい口付けだったと思ったが、あれは手加減してくれてたのだろう。
口の端から唾液が溢れて滴る。
それを舐めとられると、俺はもう震えてクリストファーのシャツを握る事しか出来なかった。
「……ふふっ」
クリストファーは楽しそうに笑い、俺の中心で主張し始めたソレを指で弾いた。
「ひっ!」
小さな悲鳴をあげると、クリストファーは「悪い悪い」と謝罪を口にするが、全く悪いとは思っていないようだった。
というか俺のアレはどうしたんだろう……。
「朝じゃなのに……」
戸惑いながらクリストファーに告げると「そういうもんなんだ。だからロッティは気にしなくていい。気持ちよくなっておけ」と頭を撫でて慰められた。
クリストファーは、俺が借りているシャツのボタンを外し、俺を素っ裸にすると自分も脱いで抱き上げようとした。
「自分で歩けます」
もう風邪も治ったしと威勢よくワードローブから飛び降りると、足が床に着いた瞬間、膝がくだけた。
「おっと……。それじゃ無理だな」
クリストファーは慌てもせず、俺を抱き上げた。
「お前は快感に弱すぎるといっただろう」
責めるように言われて、俺は絶句する。
――誰がやったんだ……。
仮に俺が快感に弱いとしても、キスで足が生まれたての子馬のようになるなんて、どんな達人だと俺は改めてクリストファーを見上げた。
冬の空のようなのにもっと深い色の目は、眦の笑みと反比例して寒々としている。なのに何故かその瞳が焼けるように熱く感じて、俺は目を閉じた。
浴場には冷たい飲み物が用意されていて、俺はやはり身体を洗って風呂につかるだけではないんだなと覚悟した。
朝のように恥ずかしいけど、気持ちのいいことをするのだろうか。
俺は年齢の割にはあまりそういうことに興味がなかったが、別に嫌いというわけではない。相手はクリストファーだし、任せていいと思う。
俺は、その後すぐに自分の認識の甘さを改めて知る事になる。
浴室は、酷く花の香りが充満していて、俺はその匂いに酔うように温いお湯に浸かりながら、クリストファーの胸に身体を預けた。
やはり何事もなく、しかも元気になった俺は、もう一睡だって出来そうになかった。
荷物が全部リリアナの部屋にあるので、本も勉強道具もない。昼ごはんを運んでくれた侍女はリリアナの侍女だったので、結局手紙は書かずに、伝言を頼んだのだ。あの時、荷物を運んでもらうべきだった……と思うが、もはや遅かりし。
服もパジャマ代わりに着ているクリストファーのシャツだけだし、こんな格好じゃ男だって部屋の外にでられそうもなかった。
せめて下穿きくらい用意してもらうべきだった。スースーして心もとないし、また風邪をひきそうだ。
暖炉で暖められた部屋はとても温かいけど。
本当にすることがないからストレッチをして身体を伸ばしていたら、昨日よりは早く帰ってきたクリストファーが驚いていた。仰向けになって、足を頭の上の位置につける身体を二つに折り曲げた状態で俺が止まっていたからだろう。下がみえないように膝丈のシャツの下は結んでいるから、俺のアレは見えないはずだけど、驚きすぎたのか、ゲホゲホッと咽ている。
もしや、俺の風邪が移って、具合が悪くて早く帰ってきたのかもしれないと、寝台から飛び降りて扉の前で少し赤い顔をしているクリストファーの額に手をあてた。
「な、なにを……してたん……ゲホッ……」
どうやら風邪じゃなかったようで、熱はなかった。
ホッとして、「おかえりなさい。暇だし、眠れそうにないから運動していました」と言うと、ようやく咽るのが止まったクリストファーは口元を押さえて「ただいま」と俺の頭をポンポンと叩いた。
「誘われているのかと勘違いしそうだ――」
とか何とか聞こえたが、意味はよくわからなかった。
「お食事、まだだったんですか?」
軽い食事を侍従に運ばせて、クリストファーは居間のソファで食べ始めた。王太子とは思えない行儀の悪さだけど、俺がここにいること事態イレギュラーだから文句をつけることもなく、横でお喋りをすることにした。
食事を持ってきてくれる侍女くらいしか俺はお喋りもしていないのだ。
部屋でボウッと過ごしているのは慣れてはいるが、好きではない。
「もう、今日は眠れそうもありません。明日も部屋から出たらだめなんですよね?」
俺はこの寝て食べての生活に、最早飽きていた。
「悪いな――。王妃様が妊娠されているのもあるが、基本的に王族は風邪をひいたら他の王族にうつらないように部屋で謹慎なんだ。お前は、俺の預かりになっているから、母上も心配しているんだが、来る事はできない」
怖くて優しい王太后様が心配してくれていると聞いて俺は感激した。俺を心配してくれるってことは、リリアナを大事にしてくれているってことだから。
「そうですよね。俺明日は部屋で勉強してますから、荷物だけ運んでもらえるように言ってくれませんか?」
俺は納得して、クリストファーにお願いをした。
「ああ、そうしよう」
ありがとうございますと、お礼をいうと、クリストファーは小さな声で「眠れないのか?」と尋ねた。
「ええ、寝すぎで元気あまってしまって」
「元気になってよかった――」
全部食べ終わったのか、クリストファーは立ち上がると浴室のあるほうに歩いて行った。
元気になったのはクリストファーが看護してくれたからだから、お礼をしないとなと思う。まだ子供の俺じゃお礼っていっても大したことはできないけど。
考えに耽っていると、クリストファーが俺を抱き上げた。
「もう俺、歩けますよ」
どれだけ心配症なんだろうかと思ったが、クリストファーの目をみたらそれ以上何も言えなかった。
怒っているわけでもない、かと言って機嫌が凄くいいわけでもない。何か得体のしれないものを含んだその目に、俺は少しだけ体温が上がったような気がした。
「眠れるようにしてやろう――」
口の端が上がって笑みを作るのに、目は笑っていない。
野生の猛獣に睨まれたらこんな感じ?
身体も動かないし、目を離したら喉笛を噛み切られそうなそんな緊迫感があった。
「クリス様……?」
「怯えるな――。楽しいことしかしない」
クリストファーは、浴室の手前の脱衣のための部屋に備え付けられている彼の腰くらいの高さのワードローブに俺を乗せた。
「ちょっとした運動だな」
そう言って、クリストファーは俺の下唇をそっと舐めた。
俺はやっと意味がわかって真っ赤になってしまった。チュッと吸い付かれると、もうそれだけで俺は期待してしまう。口付けの気持ちよさは、他に例をみない。俺も口付けが好きらしい。
「ふっ、あ……」
クリストファーは凄く慣れていて、とても上手だ。
俺が息が出来ないで苦しくなると、頬や目尻への口付けに変えてくれて、俺が空気を吸い込んだらまた唇に戻ってくる。朝だって相当激しい口付けだったと思ったが、あれは手加減してくれてたのだろう。
口の端から唾液が溢れて滴る。
それを舐めとられると、俺はもう震えてクリストファーのシャツを握る事しか出来なかった。
「……ふふっ」
クリストファーは楽しそうに笑い、俺の中心で主張し始めたソレを指で弾いた。
「ひっ!」
小さな悲鳴をあげると、クリストファーは「悪い悪い」と謝罪を口にするが、全く悪いとは思っていないようだった。
というか俺のアレはどうしたんだろう……。
「朝じゃなのに……」
戸惑いながらクリストファーに告げると「そういうもんなんだ。だからロッティは気にしなくていい。気持ちよくなっておけ」と頭を撫でて慰められた。
クリストファーは、俺が借りているシャツのボタンを外し、俺を素っ裸にすると自分も脱いで抱き上げようとした。
「自分で歩けます」
もう風邪も治ったしと威勢よくワードローブから飛び降りると、足が床に着いた瞬間、膝がくだけた。
「おっと……。それじゃ無理だな」
クリストファーは慌てもせず、俺を抱き上げた。
「お前は快感に弱すぎるといっただろう」
責めるように言われて、俺は絶句する。
――誰がやったんだ……。
仮に俺が快感に弱いとしても、キスで足が生まれたての子馬のようになるなんて、どんな達人だと俺は改めてクリストファーを見上げた。
冬の空のようなのにもっと深い色の目は、眦の笑みと反比例して寒々としている。なのに何故かその瞳が焼けるように熱く感じて、俺は目を閉じた。
浴場には冷たい飲み物が用意されていて、俺はやはり身体を洗って風呂につかるだけではないんだなと覚悟した。
朝のように恥ずかしいけど、気持ちのいいことをするのだろうか。
俺は年齢の割にはあまりそういうことに興味がなかったが、別に嫌いというわけではない。相手はクリストファーだし、任せていいと思う。
俺は、その後すぐに自分の認識の甘さを改めて知る事になる。
浴室は、酷く花の香りが充満していて、俺はその匂いに酔うように温いお湯に浸かりながら、クリストファーの胸に身体を預けた。
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