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休息
しおりを挟む「あ~……、もう動きたくない……。まったく。なんでいつも兄様たちはああも横暴なんだ……」
部屋に入ってくるなりベッドに飛びこむ彼――この国の第三王子リフィトル・プラトゥーロ様を、私はソファーに座りながらぼおっと眺めていた。
「……ハルカ」
「はい。リフィトル様」
お風呂で綺麗に磨かれ寝支度を済ませた私は、靴を脱いでベッドに上がる。
「ん」
少し頭を浮かせたリフィトル様の首の下に腕を差しこみ、彼を胸元にゆるく抱きしめた。しばらくするとじわり。と体温が伝わってくる。これが人肌ってやつか……と私はこの世界に来て初めて知ったのだった。
「本日は、寝物語はどういたしますか」
「今日はいい……」
「かしこまりました」
私が召喚されたこの異世界では、基本的に魔法が使えるのは異世界人だけらしい。なので特に必要としている称号持ちの人が亡くなると、また、異世界か人材を召喚する。
今回召喚したかったのは聖女らしい。なんか偉い人が「全てを治せる手」とか一緒に来たセナさんを拝んでいた。
私は近くにいて召喚に巻きこまれた“じゃないほう”というわけだ。まあ別にいいんだけど。親は私に興味がないみたいだし、あっちに親しい人は一人もいない。本が友達みたいなものだった。
私は「安眠できる腕」らしい。能力が判明したときはえ、いらなくね? と言われたり微妙な空気になったが。不眠に悩んでる苦労性っぽい第三王子のところに無事配属されたのである。
ぬくいな。スヤァ……。
強い眠気に抗って、
「……一生、手放せない、かもしれないな……」
なんて呟いてみる。返事はない。身じろぎを最低限にしつつハルカを見上げる。口を少し開けたまぬけな表情をしていた。
「……聞いておけよ、馬鹿者……」
少しの間眉を顰めハルカをにらみつけたのち。再び安眠へと誘う腕の中に収まり、俺は目を閉じた。
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