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第五章 プレイ十三日目・後

#104 新技・蒼龍一矢

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 そこでは天変地異が起きていた。重力波が乱れ、渦潮が暴れ、紅炎が吹き荒れた。ルトちゃんの魔術スキルだ。いずれも上級、軍勢を一網打尽にする広範囲攻撃だ。それを数百の風刃と重力波と渦潮が粉砕する。【受肉人形・にる】がルトちゃんに対抗して放った魔術スキルだ。それぞれ弱点属性を突き、ルトちゃんの攻撃を完封している。

『キャハハハハハ! キャハハハハハハハハハハ!』
「くっ……!」

 可愛らしいルトちゃんの顔が苦々しく強張る。彼女の助力を得るのはまだ厳しいようだ。

「で、どうする?」
「そうだね……」

 シリウスと距離を確保しつつ観察する。あの触手は厄介だ。高速移動する私を容易く捕らえてみせた俊敏性。それが複数本もあるのだ。迂闊に近付くのは危険だ。
 それに正直、触手の耐久力は意外だった。マイの骨刀に斬られて切断できないとは思わなかった。敏捷性に加えて耐久力にも優れているなんてズルいチートにも程がある。
 となると、ここは――

「――弓使いとしての基本に戻るか。マイ!」
「何だ?」
「アイテムを取り出す。ちょっと足止めしてて」
「了解!」
『させるか!』

 シリウスが動く。彼の前にマイが立ち塞がる。シリウスが触手を伸ばしてマイを排除しようとするが、マイはその触手をダメージ覚悟で掴んだ。これでシリウスはマイを打ち倒さない限り逃げられない。

『貴様……!』
「ハッ!」

 マイとシリウスのガチンコが始まる。彼女が敵を引き付けている間に『冒険者教典カルト・オブ・プレイヤー』を展開、アイテム欄から一つのアイテムを選択する。
 取り出したのは【ダマスカスの幻想剣】――ゾヘドさんから貰った両刃剣だ。かなりの重量であり、私の筋力値では到底持ち上げる事は叶わない武器だ。……本来であれば。


「――――【蒼龍一矢ソウリュウイチヤ】」


 右手の指先に青い光が宿る。レベルアップによって覚えた新スキルだ。矢ではない物――剣や槍を矢として放つ技だ。MPを不足数値分消費する事で筋力値を無視して、弦に番える事ができる。

「マイ、準備ができ……マイ!?」

 切っ先をシリウスに向けた時、ちょうどマイがダウンするところだった。シリウスとの競り合いに彼女が負けたのだ。力なく膝から床面に崩れ落ちる。
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