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第五章 プレイ十三日目・後
#101 針山地獄と空飛ぶ私
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『征くぞ! ――【影渡・重】!』
シリウスが連続高速移動を開始する。この技を前に目で追う行為は無意味だ。それに、最後には標的に向かって突っ込んでくる事は確定している。だから、ランダム移動が終わる直前の位置、それを把握している事が肝要になる。
「左後ろ!」
後方左側に立ったシリウスを注視する。最後の移動はそこからとなる。ならば、そこにカウンターを打ち込めば良い。そう思って右ストレートを打ち出した。
『――【影渡】』
だが、その程度の対処はシリウスの想定内だった。私の眼前に立つと同時にスキルを発動。更にもう一歩移動する。私の右ストレートを躱し、右脇腹に現れる。脇の下は人体急所の一つだ。そこを突いて【殺意の証】を発動させようという魂胆なのだろう。
けれど、その移動すらも私は読んでいた。
「しっ!」
『ぬっ!』
左踵で回し蹴りを放つ。私を刺す態勢に入っていた為、シリウスは防御が遅れ、左側頭部に踵を受けた。更には人体急所であるこめかみに命中したからか、赤黒い光が迸った。【殺意の兆し】だ。
体勢を崩したシリウスがそのまま床に倒れる。――否!
『――【影抉・獄】!』
床に倒れたのではない。スキルを発動する為に床に触れたのだ。
足元の影全てが槍と化し、天に向かって突き出る。足の踏み場もなく刺してくる光景はまさしく針山地獄の再現だ。
全範囲を攻撃する技を前に回避は不可能だ。……上に逃げる以外には。
『貰ったぞ――!』
咄嗟に跳躍した私はどうにか影槍を躱す事は出来た。けれど、宙に浮いた事で身動きが取れなくなってしまった。霧散する影槍の中、シリウスが落下する私に向けて短剣を突く。
今までの私だったらそのまま為す術なく刺されていただろう。けれど、今の私は違う。私にはこの靴がある。
「――【浮遊】!」
『何!?』
空中を蹴り、落下する事なく短剣を躱す。
【八目星の浮遊靴】の効果だ。幽霊タイプのエネミーは全種、この【浮遊】のスキルを持っている。幽霊は空中をふよふよと移動するものだから持っていて当然といえば当然だ。
この靴に埋め込まれた八つの【大呪魂】が幽霊以上に重いもの――人間さえも【浮遊】させる。
「やあ――っ!」
躱した姿勢から宙返りをして、シリウスの両肩に矢を打ち込む。短剣が私を追うが、空中を跳ねる私に届きはしなかった。
空中を駆けて助走距離を作り、そこから一気にシリウスに向かって疾駆する。この身こそが矢の如く、超加速した私の一撃でシリウスの胸部を穿つ。その威力にシリウスの体が耐えられず後退する。
『ぐぬぁあああああっ!』
「まだまだぁ!」
シリウスが連続高速移動を開始する。この技を前に目で追う行為は無意味だ。それに、最後には標的に向かって突っ込んでくる事は確定している。だから、ランダム移動が終わる直前の位置、それを把握している事が肝要になる。
「左後ろ!」
後方左側に立ったシリウスを注視する。最後の移動はそこからとなる。ならば、そこにカウンターを打ち込めば良い。そう思って右ストレートを打ち出した。
『――【影渡】』
だが、その程度の対処はシリウスの想定内だった。私の眼前に立つと同時にスキルを発動。更にもう一歩移動する。私の右ストレートを躱し、右脇腹に現れる。脇の下は人体急所の一つだ。そこを突いて【殺意の証】を発動させようという魂胆なのだろう。
けれど、その移動すらも私は読んでいた。
「しっ!」
『ぬっ!』
左踵で回し蹴りを放つ。私を刺す態勢に入っていた為、シリウスは防御が遅れ、左側頭部に踵を受けた。更には人体急所であるこめかみに命中したからか、赤黒い光が迸った。【殺意の兆し】だ。
体勢を崩したシリウスがそのまま床に倒れる。――否!
『――【影抉・獄】!』
床に倒れたのではない。スキルを発動する為に床に触れたのだ。
足元の影全てが槍と化し、天に向かって突き出る。足の踏み場もなく刺してくる光景はまさしく針山地獄の再現だ。
全範囲を攻撃する技を前に回避は不可能だ。……上に逃げる以外には。
『貰ったぞ――!』
咄嗟に跳躍した私はどうにか影槍を躱す事は出来た。けれど、宙に浮いた事で身動きが取れなくなってしまった。霧散する影槍の中、シリウスが落下する私に向けて短剣を突く。
今までの私だったらそのまま為す術なく刺されていただろう。けれど、今の私は違う。私にはこの靴がある。
「――【浮遊】!」
『何!?』
空中を蹴り、落下する事なく短剣を躱す。
【八目星の浮遊靴】の効果だ。幽霊タイプのエネミーは全種、この【浮遊】のスキルを持っている。幽霊は空中をふよふよと移動するものだから持っていて当然といえば当然だ。
この靴に埋め込まれた八つの【大呪魂】が幽霊以上に重いもの――人間さえも【浮遊】させる。
「やあ――っ!」
躱した姿勢から宙返りをして、シリウスの両肩に矢を打ち込む。短剣が私を追うが、空中を跳ねる私に届きはしなかった。
空中を駆けて助走距離を作り、そこから一気にシリウスに向かって疾駆する。この身こそが矢の如く、超加速した私の一撃でシリウスの胸部を穿つ。その威力にシリウスの体が耐えられず後退する。
『ぐぬぁあああああっ!』
「まだまだぁ!」
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