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第五章 プレイ十三日目・後
#95 瑞加祷城の変
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瑞加祷城の前まで行くのは難しい事ではない。場所は分かっているし、特段近付く事を禁止されている訳でもない。ただ常に衛兵が門や城壁を守護していて、中に入る事は出来ないようになっている。
それが瑞加祷城の通常。けれど、緊急事態の今はそうではなかった。
「衛兵が倒されている……!?」
門の左右に控えていた衛兵が力なく座り込み、柱に体重を預けていた。近寄ってみるが反応はない。死んでしまったのか、それとも意識がないだけか。
「……多分、大丈夫」
私の心配を察したルトちゃんが言う。
王城には私とマイ、ルトちゃんの三人で来ていた。いつものメンバーが一番力を発揮出来ると考えての事だ。他の人間にも声を掛けようかと思ったけど、チクタクマン社の機密に関わる事だし、知らない人に話し掛けるなんて怖かったからやめておいた。
そういえば、ラトがいつの間にか相撲場所からいなくなっていたけど、どこに行ったのだろう。
「……NPCに死の概念は実装されていないの。だから、どれだけ怪我しても死なないよ」
「そっか。なら良い……のかな?」
分からない。まあ不幸中の幸いというか、最悪の事態は免れていると思おう。
「倒されているって事ぁ倒した奴がいるって事だよな。それも、この城の中に」
「うん。誰かがここを押し通ろうとして一悶着あったんだと思う」
一悶着。皆の視線が魔城兵に向かっている間に王城へ襲撃……か。
「もしかして、こっちが本命?」
「……多分。あの魔城兵達は囮だと思う」
「派手なデカブツで注意を引き付けて、その隙にって寸法かよ」
開きっ放しの門を潜り抜け、エントランスホールに入る。ホールは死屍累々だった。数十人もの衛兵が倒れているだけでなく、民間人も同じくらいの数で倒れている。ショップやカフェの店員を務めているNPC達だ。何故彼らがここにいるのか。
「……『まつろわぬ民』だよ。わたし達がPCを操っているように、あの人達もNPCの中に入り込んでいたんだ」
「そのNPCを使って攻めてきたって訳か。多分、魔城兵も同じだな。中に『まつろわぬ民』が入って操っていやがるんだ」
「街中に『まつろわぬ民』が潜伏していたって事?」
という事は、今日まで『まつろわぬ民』がすぐ近くで私達の事を見ていたのか。そう思うと少し背筋が寒くなる。私達を敵視している人間が店員に扮して接客していたのだから。愛想笑いの裏で一体彼らは何を感じていたのだろう。
「……ううん。それは今、考える事じゃないね。マナちゃんはどこに?」
「……謁見の間だと思う。正面の階段を上がった先にあるよ」
ルトちゃんが見上げた先には金装飾が立派な門があった。女王の権威を誇る豪奢さ、玉座を治めるに相応しいデザインだ。
階段を駆け上がり、門を勢い良く開ける。そこには、
「マナちゃん!」
それが瑞加祷城の通常。けれど、緊急事態の今はそうではなかった。
「衛兵が倒されている……!?」
門の左右に控えていた衛兵が力なく座り込み、柱に体重を預けていた。近寄ってみるが反応はない。死んでしまったのか、それとも意識がないだけか。
「……多分、大丈夫」
私の心配を察したルトちゃんが言う。
王城には私とマイ、ルトちゃんの三人で来ていた。いつものメンバーが一番力を発揮出来ると考えての事だ。他の人間にも声を掛けようかと思ったけど、チクタクマン社の機密に関わる事だし、知らない人に話し掛けるなんて怖かったからやめておいた。
そういえば、ラトがいつの間にか相撲場所からいなくなっていたけど、どこに行ったのだろう。
「……NPCに死の概念は実装されていないの。だから、どれだけ怪我しても死なないよ」
「そっか。なら良い……のかな?」
分からない。まあ不幸中の幸いというか、最悪の事態は免れていると思おう。
「倒されているって事ぁ倒した奴がいるって事だよな。それも、この城の中に」
「うん。誰かがここを押し通ろうとして一悶着あったんだと思う」
一悶着。皆の視線が魔城兵に向かっている間に王城へ襲撃……か。
「もしかして、こっちが本命?」
「……多分。あの魔城兵達は囮だと思う」
「派手なデカブツで注意を引き付けて、その隙にって寸法かよ」
開きっ放しの門を潜り抜け、エントランスホールに入る。ホールは死屍累々だった。数十人もの衛兵が倒れているだけでなく、民間人も同じくらいの数で倒れている。ショップやカフェの店員を務めているNPC達だ。何故彼らがここにいるのか。
「……『まつろわぬ民』だよ。わたし達がPCを操っているように、あの人達もNPCの中に入り込んでいたんだ」
「そのNPCを使って攻めてきたって訳か。多分、魔城兵も同じだな。中に『まつろわぬ民』が入って操っていやがるんだ」
「街中に『まつろわぬ民』が潜伏していたって事?」
という事は、今日まで『まつろわぬ民』がすぐ近くで私達の事を見ていたのか。そう思うと少し背筋が寒くなる。私達を敵視している人間が店員に扮して接客していたのだから。愛想笑いの裏で一体彼らは何を感じていたのだろう。
「……ううん。それは今、考える事じゃないね。マナちゃんはどこに?」
「……謁見の間だと思う。正面の階段を上がった先にあるよ」
ルトちゃんが見上げた先には金装飾が立派な門があった。女王の権威を誇る豪奢さ、玉座を治めるに相応しいデザインだ。
階段を駆け上がり、門を勢い良く開ける。そこには、
「マナちゃん!」
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