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第五章 プレイ十三日目・前
#83 相撲(素人用ルール)
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『ひ~が~しぃ~、二倉ぁすのこぉ~。に~しぃ~、異月ぃゾヘドぉ~』
と扇子を持っていた男が土俵の上で私達を呼び出す。彼と入れ替わりに土俵の真ん中に一人の男が立った。烏帽子と直垂を身に纏い、手には軍配という団扇を持っている。
……更には何故か頭にカボチャを被っていた。アイテム比べの髑髏仮面の司会といい、やっぱりこの祭りをハロウィンと勘違いしていないだろうか?
『それではルールを説明しましょう』
なんて私の感想など露知らず、男は話を始めた。
直垂姿の男は行司と呼ばれる。他のスポーツにおいて主審やレフェリーに相当するポジションだ。正確には違うけど今は説明を割愛する。
なお当然、カボチャ頭の行司なんて過去に存在した事はない。マジで何なんだ彼は。
『一つ目のルールは武器・防具使用不可。その衣装の通り、肉体のみで戦って貰います。それに伴いまして武器を使用したスキルも使用不可になります。一方で身体能力そのものに作用するスキルは使用出来ます』
弓技である【伏龍一矢】や【天龍一矢】は使えないけど、歩法である【二乗の理】は使えるという事だ。この辺りは想定通りだ。
『二つ目のルールは禁じ手の緩和。大相撲では握り拳や目潰しは禁止されていますが、プレイヤーの皆様は相撲の素人ですので、今回は禁止としません。自由に攻撃して下さい。また、三つ目のルールとして開始の宣言は行司が行います』
選手――力士は土俵に拳を着いた状態で待つ。両者の気合が十全に高まった瞬間、同時に立ち上がってぶつかる。これを試合開始とし、相撲用語として『立合い』と呼ぶ。つまり始めるタイミングは力士が決めるのであって、一般のスポーツのように主審が宣言するのではない。行司は確認するだけなのだ。
とはいえ、そこは行司の言う通り互いに素人。気合の充実なんて分からないので、今回は行司の合図で試合を始める事になる。
『四つ目のルールは敗北条件。土俵の外に出た場合と、地面に足の裏以外が着いた場合以外に、HPがゼロになった場合も敗北となります。前二つは通常の相撲と同じですね。――それでは、両者、見合って下さい』
行事に促され、拳を地面に着ける。顔を上げるとゾヘドさんと視線が合った。
瞬間、熱風を肌で感じた気がした。ゾヘドさんが発する気迫が凄まじくて、熱風を思わせたのだ。これが一流Vtuberにして騎士の闘志か。思わず生唾を呑み込んでしまう。
「すのこ、どうすると思う?」
と扇子を持っていた男が土俵の上で私達を呼び出す。彼と入れ替わりに土俵の真ん中に一人の男が立った。烏帽子と直垂を身に纏い、手には軍配という団扇を持っている。
……更には何故か頭にカボチャを被っていた。アイテム比べの髑髏仮面の司会といい、やっぱりこの祭りをハロウィンと勘違いしていないだろうか?
『それではルールを説明しましょう』
なんて私の感想など露知らず、男は話を始めた。
直垂姿の男は行司と呼ばれる。他のスポーツにおいて主審やレフェリーに相当するポジションだ。正確には違うけど今は説明を割愛する。
なお当然、カボチャ頭の行司なんて過去に存在した事はない。マジで何なんだ彼は。
『一つ目のルールは武器・防具使用不可。その衣装の通り、肉体のみで戦って貰います。それに伴いまして武器を使用したスキルも使用不可になります。一方で身体能力そのものに作用するスキルは使用出来ます』
弓技である【伏龍一矢】や【天龍一矢】は使えないけど、歩法である【二乗の理】は使えるという事だ。この辺りは想定通りだ。
『二つ目のルールは禁じ手の緩和。大相撲では握り拳や目潰しは禁止されていますが、プレイヤーの皆様は相撲の素人ですので、今回は禁止としません。自由に攻撃して下さい。また、三つ目のルールとして開始の宣言は行司が行います』
選手――力士は土俵に拳を着いた状態で待つ。両者の気合が十全に高まった瞬間、同時に立ち上がってぶつかる。これを試合開始とし、相撲用語として『立合い』と呼ぶ。つまり始めるタイミングは力士が決めるのであって、一般のスポーツのように主審が宣言するのではない。行司は確認するだけなのだ。
とはいえ、そこは行司の言う通り互いに素人。気合の充実なんて分からないので、今回は行司の合図で試合を始める事になる。
『四つ目のルールは敗北条件。土俵の外に出た場合と、地面に足の裏以外が着いた場合以外に、HPがゼロになった場合も敗北となります。前二つは通常の相撲と同じですね。――それでは、両者、見合って下さい』
行事に促され、拳を地面に着ける。顔を上げるとゾヘドさんと視線が合った。
瞬間、熱風を肌で感じた気がした。ゾヘドさんが発する気迫が凄まじくて、熱風を思わせたのだ。これが一流Vtuberにして騎士の闘志か。思わず生唾を呑み込んでしまう。
「すのこ、どうすると思う?」
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