87 / 123
第五章 プレイ十三日目・前
#77 剣と魔法の世界に銃とは如何に
しおりを挟む
「あん? こいつぁ……銃か?」
マナちゃんが取り出したのは拳銃だ。銃身の中央に回転する薬室があるタイプ――回転式拳銃だ。このゲームはあくまで剣と魔法のファンタジー世界であり、銃は存在していない設定の筈だけど。
「これは現在、我が国が開発中という設定の新兵器。魔法銃と呼ぶべき代物だよ」
「魔法銃……」
「薬室――弾丸を装填する所に弾丸じゃなくて宝石が埋め込まれていてね。宝石から魔力の弾丸が出る仕組み。全弾撃ち尽くしたら掌で撫でる事で、使用者の魔力を吸って装填が出来るよ」
銃かあ。てっきり異世界のシューティングだから弓矢を使うものだと思っていたけど。でも、魔法銃が登場するハイ・ファンタジー作品も結構あるし、こういうのもアリか。弓矢だと番えるのが時間が掛かるからゲーム性として難があるし。
「今度は負けねえぞ、巫女」
「このゲームはシューティングだよ。命中率で弓使いに勝てるなんて思わないでよね」
「ああん? 俺だって投げナイフなら得意なんだぜ。盗賊だからな」
「えっ、えっと、えっと……私は剣士だけど、でも強いから!」
「ゾヘド、無理して対抗しなくて良いんだよ」
虚栄を張るゾヘドさん。これにはマナちゃんも苦笑い。
「さて、ゲームは二人一組で進める事になっているの。という訳で、順番的にゾヘド、すのこちゃんが一緒に行ってね」
「分かりました」
「わ、私がゾヘドさんと一緒のトロッコに……!?」
えええええ何それちょっとどころじゃなくて大分緊張するんですけど。
三本勝負の相手というのもあるけど、ゾヘドさんは推しの一人でもある。『燃眼三騎士』は箱推ししている。そんな相手とトロッコなんて狭い空間で二人きりなんて照れと畏れでどうにかなってしまいそうだ。まともに銃を握れるだろうか。
「俺は?」
「ラト君は次の参加者と一緒だね。ちょっと待っててね」
「ああ、じゃあそういう事ならテップの奴を呼んで――」
「――いや、オレが乗るぜ」
とラトがテップを呼ぶ前にマイが立候補した。
「こいつの獲物を横から奪ってやれば、すのこに有利になるんだろ?」
「おお? やってみろよ。てめえが何かするより先に撃ち落としてやらあ」
マイとラトが睨み合って火花が散る。合間、ちらりとマイが私を横目で見た。
これはマイの気遣いだ。マイがラトを引き付けている間に私はゾヘドさんとの対決に専念しろと暗に言っているのだ。有難い。彼女の心遣いを胸に、私はゾヘドさんに挑ませて貰おう。照れも畏れも、なんとでもなる筈だ!
「勝負はより多く得点を稼いだ方が勝ち。良いね? 二倉すのこ」
「はい。……よろしくお願いします、ゾヘドさん!」
私とゾヘドさんが同じ魔法陣の中に、マイとラトが隣の魔法陣の中に立つ。魔法陣から光の粒子が溢れて視界が埋め尽くされ、景色がフェードアウトする。
「それじゃあ、行ってらっしゃい」
マナちゃんの言葉を区切りに次の瞬間、私達は別の場所に転送された。
マナちゃんが取り出したのは拳銃だ。銃身の中央に回転する薬室があるタイプ――回転式拳銃だ。このゲームはあくまで剣と魔法のファンタジー世界であり、銃は存在していない設定の筈だけど。
「これは現在、我が国が開発中という設定の新兵器。魔法銃と呼ぶべき代物だよ」
「魔法銃……」
「薬室――弾丸を装填する所に弾丸じゃなくて宝石が埋め込まれていてね。宝石から魔力の弾丸が出る仕組み。全弾撃ち尽くしたら掌で撫でる事で、使用者の魔力を吸って装填が出来るよ」
銃かあ。てっきり異世界のシューティングだから弓矢を使うものだと思っていたけど。でも、魔法銃が登場するハイ・ファンタジー作品も結構あるし、こういうのもアリか。弓矢だと番えるのが時間が掛かるからゲーム性として難があるし。
「今度は負けねえぞ、巫女」
「このゲームはシューティングだよ。命中率で弓使いに勝てるなんて思わないでよね」
「ああん? 俺だって投げナイフなら得意なんだぜ。盗賊だからな」
「えっ、えっと、えっと……私は剣士だけど、でも強いから!」
「ゾヘド、無理して対抗しなくて良いんだよ」
虚栄を張るゾヘドさん。これにはマナちゃんも苦笑い。
「さて、ゲームは二人一組で進める事になっているの。という訳で、順番的にゾヘド、すのこちゃんが一緒に行ってね」
「分かりました」
「わ、私がゾヘドさんと一緒のトロッコに……!?」
えええええ何それちょっとどころじゃなくて大分緊張するんですけど。
三本勝負の相手というのもあるけど、ゾヘドさんは推しの一人でもある。『燃眼三騎士』は箱推ししている。そんな相手とトロッコなんて狭い空間で二人きりなんて照れと畏れでどうにかなってしまいそうだ。まともに銃を握れるだろうか。
「俺は?」
「ラト君は次の参加者と一緒だね。ちょっと待っててね」
「ああ、じゃあそういう事ならテップの奴を呼んで――」
「――いや、オレが乗るぜ」
とラトがテップを呼ぶ前にマイが立候補した。
「こいつの獲物を横から奪ってやれば、すのこに有利になるんだろ?」
「おお? やってみろよ。てめえが何かするより先に撃ち落としてやらあ」
マイとラトが睨み合って火花が散る。合間、ちらりとマイが私を横目で見た。
これはマイの気遣いだ。マイがラトを引き付けている間に私はゾヘドさんとの対決に専念しろと暗に言っているのだ。有難い。彼女の心遣いを胸に、私はゾヘドさんに挑ませて貰おう。照れも畏れも、なんとでもなる筈だ!
「勝負はより多く得点を稼いだ方が勝ち。良いね? 二倉すのこ」
「はい。……よろしくお願いします、ゾヘドさん!」
私とゾヘドさんが同じ魔法陣の中に、マイとラトが隣の魔法陣の中に立つ。魔法陣から光の粒子が溢れて視界が埋め尽くされ、景色がフェードアウトする。
「それじゃあ、行ってらっしゃい」
マナちゃんの言葉を区切りに次の瞬間、私達は別の場所に転送された。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
関西訛りな人工生命体の少女がお母さんを探して旅するお話。
虎柄トラ
SF
あるところに誰もがうらやむ才能を持った科学者がいた。
科学者は天賦の才を得た代償なのか、天涯孤独の身で愛する家族も頼れる友人もいなかった。
愛情に飢えた科学者は存在しないのであれば、創造すればいいじゃないかという発想に至る。
そして試行錯誤の末、科学者はありとあらゆる癖を詰め込んだ最高傑作を完成させた。
科学者は人工生命体にリアムと名付け、それはもうドン引きするぐらい溺愛した。
そして月日は経ち、可憐な少女に成長したリアムは二度目の誕生日を迎えようとしていた。
誕生日プレゼントを手に入れるため科学者は、リアムに留守番をお願いすると家を出て行った。
それからいくつも季節が通り過ぎたが、科学者が家に帰ってくることはなかった。
科学者が帰宅しないのは迷子になっているからだと、推察をしたリアムはある行動を起こした。
「お母さん待っててな、リアムがいま迎えに行くから!」
一度も外に出たことがない関西訛りな箱入り娘による壮大な母親探しの旅がいまはじまる。
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
❤️レムールアーナ人の遺産❤️
apusuking
SF
アランは、神代記の伝説〈宇宙が誕生してから40億年後に始めての知性体が誕生し、更に20億年の時を経てから知性体は宇宙に進出を始める。
神々の申し子で有るレムルアーナ人は、数億年を掛けて宇宙の至る所にレムルアーナ人の文明を築き上げて宇宙は人々で溢れ平和で共存共栄で発展を続ける。
時を経てレムルアーナ文明は予知せぬ謎の種族の襲来を受け、宇宙を二分する戦いとなる。戦争終焉頃にはレムルアーナ人は誕生星系を除いて衰退し滅亡するが、レムルアーナ人は後世の為に科学的資産と数々の奇跡的な遺産を残した。
レムールアーナ人に代わり3大種族が台頭して、やがてレムルアーナ人は伝説となり宇宙に蔓延する。
宇宙の彼方の隠蔽された星系に、レムルアーナ文明の輝かしい遺産が眠る。其の遺産を手にした者は宇宙を征するで有ろ。但し、辿り付くには3つの鍵と7つの試練を乗り越えねばならない。
3つの鍵は心の中に眠り、開けるには心の目を開いて真実を見よ。心の鍵は3つ有り、3つの鍵を開けて真実の鍵が開く〉を知り、其の神代記時代のレムールアーナ人が残した遺産を残した場所が暗示されていると悟るが、闇の勢力の陰謀に巻き込まれゴーストリアンが破壊さ
魔術師のロボット~最凶と呼ばれたパイロットによる世界変革記~
MS
SF
これは戦争に巻き込まれた少年が世界を変えるために戦う物語。
戦歴2234年、人型ロボット兵器キャスター、それは魔術師と呼ばれる一部の人しか扱えない兵器であった。
そのパイロットになるためアルバート・デグレアは軍の幼年学校に通っていて卒業まであと少しの時だった。
親友が起こしたキャスター強奪事件。
そして大きく変化する時代に巻き込まれていく。
それぞれの正義がぶつかり合うなかで徐々にその才能を開花させていき次々と大きな戦果を挙げていくが……。
新たな歴史が始まる。
************************************************
小説家になろう様、カクヨム様でも連載しております。
投降は当分の間毎日22時ごろを予定しています。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる