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第五章 プレイ十三日目・前
#75 一本目の勝者
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ラトが長テーブルの上にアイテムを置く。彼が提出したのは一体の人形だ。身長は四〇センチメートル程度、赤い着物に黒いおかっぱ頭と典型的な日本人形だ。一見すると可愛いけど、目付きがぎょろりとしている。真夜中に部屋の隅で目があったら腰を抜かしそうな不気味な造形だ。
「【受肉人形・似】! 【海月魔ロイ・ホワイト】から手に入れた【魔上肉】五つと【呪いの日本人形】を合成して作ったアイテムだ」
【魔肉】という素材アイテムがある。魔性系――鬼や悪魔といったあからさまに悪そうな感じのエネミーから入手出来る。魔力を宿した肉は腐らず、しかし毒性を持つ。
【魔上肉】というのは【魔肉】の上位版だ。【大呪魂】と同等のレア度がある筈だ。それを使ったアイテムとなるとかなりの価値になる筈だ。
……けれど、五個というのは私に比べれば少ないな。
「じゃあ、次は私ですね」
私が取り出したのはブーツだ。黒革のやや古めのデザインであり、大正時代の女学生が履いていそうな印象がある。側面には薄暗い青色の宝玉が四つ埋め込まれていた。一足で計八つの宝玉だ。
「【八目星の浮遊靴】――【ハイカラブーツ】に【大呪魂】を八個合成したアイテムです」
「はあ!? 八個ぉ!?」
ラトが素っ頓狂な声を上げる。しかし、当然のリアクションだろう。こちらの方が上位素材アイテムを三つも上回っているのだから。【呪いの日本人形】も【ハイカラブーツ】も市販のアイテムだ。しかも、値段はそう変わらない。故に素材アイテムの差が決め手となる。ラトの敗北は決定したも同然なのだから。
ふっふっふ、もろたでラトぅ。
「よぉし、ラストは私だ!」
ラトの「ぐぬぬ」と言わんばかりの悔しそうな顔を見ていたら、ゾヘドさんの番になった。
「お前ら、【ダマスカス鋼】って知っているか?」
ダマスカス鋼か……確か、古代インドで開発された鋼鉄の事だったっけか。
木目状の模様が特徴で、製造方法は今でも解明されていないのだとか。ダマスカス鋼よりも強靭な金属も柔軟な金属も今の技術力なら作れるが、ダマスカス鋼そのものを再現する事は叶わないという。再現不可能という点からファンタジーだと特殊な金属として扱われる事が多い。
「このゲームでも【ダマスカス鋼】は不思議金属って扱いでね、そのレア度は【大呪魂】や【魔上肉】に匹敵する。代わりに【呪魂】や【魔肉】みたいな下位互換が存在しないんだけどね」
ゾヘドさんがドヤ顔を強め、
「その【ダマスカス鋼】を私は十個持っている。意味が分かるか?」
空気がざわつく。周囲の反応の気を良くしたゾヘドさんが、意気揚々とアイテムを取り出した。
「見晒せ、これが私の【ダマスカスの幻想剣】だ!」
テーブルに置かれたのは刃渡りが二メートル近くもある大剣だ。刃の幅も広く、ダマスカス鋼の特徴である木目状の模様もある。サイズとデザインからして恐らく【ダマスカス鋼】と組み合わせられたアイテムは【クレイモア】だろう。現実ではスコットランドの戦士達が使っていた両手剣だ。
『これは素晴らしい! これ以上のレア度はないでしょう!』
司会者が興奮した様子で武器を見つめる。彼としてもよもや序盤でこれ程のアイテムをお目に掛かれるとは思っていなかったのだろう。
……悔しいけど、私も同意見だ。ここまでのアイテムを出されたら文句なんて付けられる筈がない。
『優勝は異月ゾヘド様に決定!』
司会者が高らかに優勝者を宣言する。それは同時に三本勝負の勝敗が決まった瞬間でもあった。
一本目はゾヘドさんに軍配が上がった。
「【受肉人形・似】! 【海月魔ロイ・ホワイト】から手に入れた【魔上肉】五つと【呪いの日本人形】を合成して作ったアイテムだ」
【魔肉】という素材アイテムがある。魔性系――鬼や悪魔といったあからさまに悪そうな感じのエネミーから入手出来る。魔力を宿した肉は腐らず、しかし毒性を持つ。
【魔上肉】というのは【魔肉】の上位版だ。【大呪魂】と同等のレア度がある筈だ。それを使ったアイテムとなるとかなりの価値になる筈だ。
……けれど、五個というのは私に比べれば少ないな。
「じゃあ、次は私ですね」
私が取り出したのはブーツだ。黒革のやや古めのデザインであり、大正時代の女学生が履いていそうな印象がある。側面には薄暗い青色の宝玉が四つ埋め込まれていた。一足で計八つの宝玉だ。
「【八目星の浮遊靴】――【ハイカラブーツ】に【大呪魂】を八個合成したアイテムです」
「はあ!? 八個ぉ!?」
ラトが素っ頓狂な声を上げる。しかし、当然のリアクションだろう。こちらの方が上位素材アイテムを三つも上回っているのだから。【呪いの日本人形】も【ハイカラブーツ】も市販のアイテムだ。しかも、値段はそう変わらない。故に素材アイテムの差が決め手となる。ラトの敗北は決定したも同然なのだから。
ふっふっふ、もろたでラトぅ。
「よぉし、ラストは私だ!」
ラトの「ぐぬぬ」と言わんばかりの悔しそうな顔を見ていたら、ゾヘドさんの番になった。
「お前ら、【ダマスカス鋼】って知っているか?」
ダマスカス鋼か……確か、古代インドで開発された鋼鉄の事だったっけか。
木目状の模様が特徴で、製造方法は今でも解明されていないのだとか。ダマスカス鋼よりも強靭な金属も柔軟な金属も今の技術力なら作れるが、ダマスカス鋼そのものを再現する事は叶わないという。再現不可能という点からファンタジーだと特殊な金属として扱われる事が多い。
「このゲームでも【ダマスカス鋼】は不思議金属って扱いでね、そのレア度は【大呪魂】や【魔上肉】に匹敵する。代わりに【呪魂】や【魔肉】みたいな下位互換が存在しないんだけどね」
ゾヘドさんがドヤ顔を強め、
「その【ダマスカス鋼】を私は十個持っている。意味が分かるか?」
空気がざわつく。周囲の反応の気を良くしたゾヘドさんが、意気揚々とアイテムを取り出した。
「見晒せ、これが私の【ダマスカスの幻想剣】だ!」
テーブルに置かれたのは刃渡りが二メートル近くもある大剣だ。刃の幅も広く、ダマスカス鋼の特徴である木目状の模様もある。サイズとデザインからして恐らく【ダマスカス鋼】と組み合わせられたアイテムは【クレイモア】だろう。現実ではスコットランドの戦士達が使っていた両手剣だ。
『これは素晴らしい! これ以上のレア度はないでしょう!』
司会者が興奮した様子で武器を見つめる。彼としてもよもや序盤でこれ程のアイテムをお目に掛かれるとは思っていなかったのだろう。
……悔しいけど、私も同意見だ。ここまでのアイテムを出されたら文句なんて付けられる筈がない。
『優勝は異月ゾヘド様に決定!』
司会者が高らかに優勝者を宣言する。それは同時に三本勝負の勝敗が決まった瞬間でもあった。
一本目はゾヘドさんに軍配が上がった。
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