【kindleでリメイク版発売中】VTuber・オンライン・シンフォニア ~限界オタク系個人勢底辺配信者がVRゲームで敏捷値極振り×弓使い~

ナイカナ・S・ガシャンナ

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第五章 プレイ十三日目・前

#73 三本勝負、開始

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 和洋折衷な街並みが特徴の朱無あかむ王国瑞加祷みずかとう市だが、『ハテグ=クラ祭』は和風に近い形式だった。
 何たって出店がある。しかも売っているのが綿飴だったりたこ焼きだったり、かき氷だったり焼きそばだったりだ。まさしくジャパニーズ・フェスティバルだ。

「出店を見ていると、お腹空いてきちゃうね」
「それが狙いなんだろ。ちょうど昼時に美味そうな匂いを漂わせて、店に金を落とさせようって魂胆だ」
「ああ~……掌の上は悔しいけど抗えないねー」
「そういや、無有途轍むうとてつ神社から神輿みこしが出ているって聞いたぞ」
「マジで縁日のお祭りじゃん」

 それで良いのかハイ・ファンタジー系RPG。良いのか別に、架空の世界フィクションなんだから西洋文化に忠実じゃなくても。

「んで、ゾヘドってのはどこで待っているんだ?」
「一応、どのミニゲームにいつ参加するかは事前にはある程度決めてあるんだって。それに合わせて私も参加していくよ」

 企業勢である彼女はスタッフときちんとスケジュールを組んで行動している。配信をより盛り上げる為の采配だ。とはいえ、臨機応変というか、彼女自身が自由奔放フリーダムである為、スケジュール通りに行かない事も多々あるのだが。

『何? ゾヘドと何か因縁でもあるん?』

 とはチャット欄からのコメントだ。
 昨晩の出来事を知らない彼らが、私がゾヘドさんを探しているのを疑問に思うのは当然だろう。けれども、彼らにその経緯を説明する訳にはいかない。チクタクマン社のトップシークレットに触れなくてはならないし、そもそも夢の中の出来事ドリームランドなんて信じて貰える筈がない。
 だから、ここは適当を言って誤魔化すしかない。

「うん。配信外でね、ゾヘドさんと会う機会があって。ほら、私ってばロンちゃんとも友達になったし、ラペさんとも会話したじゃん。それで興味を持ってくれたみたいで」
『なるほどなー』
『なにそれ羨ましい』
『これで「燃眼三騎士トラペゾヘドロン」全員と知り合ったって事か。すげーじゃん』

 チャット欄がやいのやいのと騒がしくなる。いやまあ、そんな事もありますけどね? 確かに『燃眼三騎士トラペゾヘドロン』の皆と知り合いになれたのは快挙だ。私の記憶が懸かっていなければニヤケ面が収まらなかっただろうな。

 ていうか、チャット欄が「『燃眼三騎士トラペゾヘドロン』全員」って言っているって事は……包帯男ラペさんの正体、皆にバレてんじゃん。なんてこったい。

「おっ、長い白髪に黒い甲冑。あいつがゾヘドか?」

 マイがゾヘドさんを発見する。ゾヘドさんは広場の一角にいた。広場ではミニゲーム……というかミニイベントが開催されていた。ミニイベントにはこれから参加する様子であるらしい。

「それじゃ行ってくる」
「おう」
「んん? 巫女はあれに参加すんのか? じゃあ俺も行くぜ」

 後ろから付かず離れずついてきていたラトも私に続く。

「……あのねえ、一緒に参加するなら隣を歩けば良いでしょ。なんで後ろにいるの?」
「はあ? 俺にお前と仲良しこよしで歩けってか? 冗談じゃねえぜ。俺とお前は敵同士なんだからな。近くには寄らねえよ」

 でも、私を見失う訳にはいかないから離れる事も出来ない。だから、ストーカーみたいに後ろを歩くしかないのだ。何というか、格好悪い絵面だ。本人が気にしていないのなら別に良いんだけど。

「おっ? 来たなあ、二倉すのこ!」

 私に気付いたゾヘドさんがニンマリを笑う。まだ何もしていないというのに何故かドヤ顔だ。何だその可愛い表情は。無意味に自信満々なのがむしろ愛嬌がある。
 スタッフに誘導されて長テーブルの前に立たされる。長テーブルには白いテーブルクロスが掛けられていた。私とラトで参加者は計七人。七人が規定人数だったのかそれとも時間が〆切だったなのか、司会が開始の宣言をする。

『それでは、当イベント「アイテム比べ」、午前十一時三十分の部を始めさせて頂きます!』
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