上 下
83 / 123
第五章 プレイ十三日目・前

#73 三本勝負、開始

しおりを挟む
 和洋折衷な街並みが特徴の朱無あかむ王国瑞加祷みずかとう市だが、『ハテグ=クラ祭』は和風に近い形式だった。
 何たって出店がある。しかも売っているのが綿飴だったりたこ焼きだったり、かき氷だったり焼きそばだったりだ。まさしくジャパニーズ・フェスティバルだ。

「出店を見ていると、お腹空いてきちゃうね」
「それが狙いなんだろ。ちょうど昼時に美味そうな匂いを漂わせて、店に金を落とさせようって魂胆だ」
「ああ~……掌の上は悔しいけど抗えないねー」
「そういや、無有途轍むうとてつ神社から神輿みこしが出ているって聞いたぞ」
「マジで縁日のお祭りじゃん」

 それで良いのかハイ・ファンタジー系RPG。良いのか別に、架空の世界フィクションなんだから西洋文化に忠実じゃなくても。

「んで、ゾヘドってのはどこで待っているんだ?」
「一応、どのミニゲームにいつ参加するかは事前にはある程度決めてあるんだって。それに合わせて私も参加していくよ」

 企業勢である彼女はスタッフときちんとスケジュールを組んで行動している。配信をより盛り上げる為の采配だ。とはいえ、臨機応変というか、彼女自身が自由奔放フリーダムである為、スケジュール通りに行かない事も多々あるのだが。

『何? ゾヘドと何か因縁でもあるん?』

 とはチャット欄からのコメントだ。
 昨晩の出来事を知らない彼らが、私がゾヘドさんを探しているのを疑問に思うのは当然だろう。けれども、彼らにその経緯を説明する訳にはいかない。チクタクマン社のトップシークレットに触れなくてはならないし、そもそも夢の中の出来事ドリームランドなんて信じて貰える筈がない。
 だから、ここは適当を言って誤魔化すしかない。

「うん。配信外でね、ゾヘドさんと会う機会があって。ほら、私ってばロンちゃんとも友達になったし、ラペさんとも会話したじゃん。それで興味を持ってくれたみたいで」
『なるほどなー』
『なにそれ羨ましい』
『これで「燃眼三騎士トラペゾヘドロン」全員と知り合ったって事か。すげーじゃん』

 チャット欄がやいのやいのと騒がしくなる。いやまあ、そんな事もありますけどね? 確かに『燃眼三騎士トラペゾヘドロン』の皆と知り合いになれたのは快挙だ。私の記憶が懸かっていなければニヤケ面が収まらなかっただろうな。

 ていうか、チャット欄が「『燃眼三騎士トラペゾヘドロン』全員」って言っているって事は……包帯男ラペさんの正体、皆にバレてんじゃん。なんてこったい。

「おっ、長い白髪に黒い甲冑。あいつがゾヘドか?」

 マイがゾヘドさんを発見する。ゾヘドさんは広場の一角にいた。広場ではミニゲーム……というかミニイベントが開催されていた。ミニイベントにはこれから参加する様子であるらしい。

「それじゃ行ってくる」
「おう」
「んん? 巫女はあれに参加すんのか? じゃあ俺も行くぜ」

 後ろから付かず離れずついてきていたラトも私に続く。

「……あのねえ、一緒に参加するなら隣を歩けば良いでしょ。なんで後ろにいるの?」
「はあ? 俺にお前と仲良しこよしで歩けってか? 冗談じゃねえぜ。俺とお前は敵同士なんだからな。近くには寄らねえよ」

 でも、私を見失う訳にはいかないから離れる事も出来ない。だから、ストーカーみたいに後ろを歩くしかないのだ。何というか、格好悪い絵面だ。本人が気にしていないのなら別に良いんだけど。

「おっ? 来たなあ、二倉すのこ!」

 私に気付いたゾヘドさんがニンマリを笑う。まだ何もしていないというのに何故かドヤ顔だ。何だその可愛い表情は。無意味に自信満々なのがむしろ愛嬌がある。
 スタッフに誘導されて長テーブルの前に立たされる。長テーブルには白いテーブルクロスが掛けられていた。私とラトで参加者は計七人。七人が規定人数だったのかそれとも時間が〆切だったなのか、司会が開始の宣言をする。

『それでは、当イベント「アイテム比べ」、午前十一時三十分の部を始めさせて頂きます!』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ワイルド・ソルジャー

アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。 世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。 主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。 旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。 ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。 世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。 他の小説サイトにも投稿しています。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

CombatWorldOnline~落ちこぼれ空手青年のアオハルがここに~

ゆる弥
SF
ある空手少年は周りに期待されながらもなかなか試合に勝てない日々が続いていた。 そんな時に親友から進められフルダイブ型のVRMMOゲームに誘われる。 そのゲームを通して知り合ったお爺さんから指導を受けるようになり、現実での成績も向上していく成り上がりストーリー! これはある空手少年の成長していく青春の一ページ。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

オワコン・ゲームに復活を! 仕事首になって友人のゲーム会社に誘われた俺。あらゆる手段でゲームを盛り上げます。

栗鼠
SF
時は、VRゲームが大流行の22世紀! 無能と言われてクビにされた、ゲーム開発者・坂本翔平の元に、『爆死したゲームを助けてほしい』と、大学時代の友人・三国幸太郎から電話がかかる。こうして始まった、オワコン・ゲーム『ファンタジア・エルドーン』の再ブレイク作戦! 企画・交渉・開発・営業・運営に、正当防衛、カウンター・ハッキング、敵対勢力の排除など! 裏仕事まで出来る坂本翔平のお陰で、ゲームは大いに盛り上がっていき! ユーザーと世界も、変わっていくのであった!! *小説家になろう、カクヨムにも、投稿しています。

我らの輝かしきとき ~拝啓、坂の上から~

城闕崇華研究所(呼称は「えねこ」でヨロ
歴史・時代
講和内容の骨子は、以下の通りである。 一、日本の朝鮮半島に於ける優越権を認める。 二、日露両国の軍隊は、鉄道警備隊を除いて満州から撤退する。 三、ロシアは樺太を永久に日本へ譲渡する。 四、ロシアは東清鉄道の内、旅順-長春間の南満洲支線と、付属地の炭鉱の租借権を日本へ譲渡する。 五、ロシアは関東州(旅順・大連を含む遼東半島南端部)の租借権を日本へ譲渡する。 六、ロシアは沿海州沿岸の漁業権を日本人に与える。 そして、1907年7月30日のことである。

処理中です...