【kindleでリメイク版発売中】VTuber・オンライン・シンフォニア ~限界オタク系個人勢底辺配信者がVRゲームで敏捷値極振り×弓使い~

ナイカナ・S・ガシャンナ

文字の大きさ
上 下
82 / 123
第五章 プレイ十三日目・前

#72 ラトにも勝負を挑まれた

しおりを挟む
「んだテメー、そのザマは?」
っといてくれると助かります」
「? そうかよ? ……まあいいや」

 ラトのやや後ろにはあの筋肉男――テップがついてきていた。服飾品は増えているが、黒牛の面と開放感溢れる胸板は相変わらずだ。

「俺、VTuberを始めたんだ。こいつが使い魔カメラの【白海月ロイロイ】だ。悪くねえだろ?」
「へー。あ、可愛い」

 ラトが親指で示した先には白いクラゲが浮いていた。生物そのものではなく、ぬいぐるみのクラゲだ。大分デフォルメがされていて、大変愛らしい。

「俺、もう登録者数四〇〇〇人超えているんだぜ。始めて五日間でこの数だ。どうだ、凄ぇだろ」
「四〇〇〇人! それは確かに凄いね」
「おうよ、俺は凄ぇんだ!」

 あからさまに嬉々として豊満な胸を張るラト。
 一八〇日前後も掛けて五〇人も集まらなかった私に比べれば破竹の勢いだ。このゲームをやっているからという理由もあろうが、彼も個人勢だろうに大した記録だ。

「お前に負けた日からお前を負かす事だけを考えて生きてきた。今日のイベントでは俺の配信で俺がお前に勝つ所を流してやる。覚悟しやがれ」
「そんなに私の事を……?」

 成程、何をしに来たのかと思ったら宣戦布告に来たのか。
 胸の奥に火の熱が灯る。普段は強い戦意なんて懐く私じゃないけど、彼は別だ。私が最初に戦った人間。私が最初に勝った相手。そんな彼に私はほんの少しだけライバル心を懐いてきた。
 けれど、それは一方的なものだと思っていた。私が一人で彼をライバル視しているだけだと。
 だというのに、そんな彼に「私を負かす事だけを考えていた」なんて言われた。そりゃあ戦意が燃え上がるというものだ。

「……いや、でも私は」

 私はこれからゾヘドさんとの一大決戦をしなくてはならない。ラトに注力する訳にはいかないのだ。彼に悪いけど、今日は都合が悪いのだと告げようとする。しかし、

「お前が嫌だって言っても俺はお前に付き纏ってやるからな。お前が参加するミニゲームに逐一顔を突っ込んでやるぜ。……じゃあまた後でな」

 私が何か言う前に、ラトはそう言い捨てて去ってしまった。
 えー。ちょっとどうしようこれ。

「まあ、一対一タイマン系のミニゲームだったら、あいつも手出し出来ねえだろ」
「そうだね……まあ、仕方ないか」

 ゾヘドさんとの戦いをメインにラトとも戦っていくしかないか。
 そうと決まれば、気合を入れなくては。好敵手ライバルとして恥じない戦いをしよう。そして、あわよくば返り討ちにしてあげよう。

「……それじゃあ、わたしは自分のグループでのコラボがあるから」
「あっ、うん! 頑張ってね!」
「……ん。すのこも頑張って」

 マイから降りたルトちゃんも立ち去る。私もいい加減マイから降りて自分の足で立った。盛り上がっている雑踏に目を向け、足を進める。

「それじゃあ、イベント始めていこっか!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~

橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。 記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。 これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語 ※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります

動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!

海夏世もみじ
ファンタジー
 旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました  動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。  そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。  しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!  戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

戦国時代の武士、VRゲームで食堂を開く

オイシイオコメ
SF
奇跡の保存状態で頭部だけが発見された戦国時代の武士、虎一郎は最新の技術でデータで復元され、VRゲームの世界に甦った。 しかし甦った虎一郎は何をして良いのか分からず、ゲーム会社の会長から「畑でも耕してみたら」と、おすすめされ畑を耕すことに。 農業、食堂、バトルのVRMMOコメディ! ※この小説はサラッと読めるように名前にルビを多めに振ってあります。

―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟、その異世界を巡る叙事詩――《第一部完結》

EPIC
SF
日本国の混成1個中隊、そして超常的存在。異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 日本国陸隊の有事官、――〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟。 歪で醜く禍々しい容姿と、常識外れの身体能力、そしてスタンスを持つ、隊員として非常に異質な存在である彼。 そんな隊員である制刻は、陸隊の行う大規模な演習に参加中であったが、その最中に取った一時的な休眠の途中で、不可解な空間へと導かれる。そして、そこで会った作業服と白衣姿の謎の人物からこう告げられた。 「異なる世界から我々の世界に、殴り込みを掛けようとしている奴らがいる。先手を打ちその世界に踏み込み、この企みを潰せ」――と。 そして再び目を覚ました時、制刻は――そして制刻の所属する普通科小隊を始めとする、各職種混成の約一個中隊は。剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する未知の世界へと降り立っていた――。 制刻を始めとする異質な隊員等。 そして問題部隊、〝第54普通科連隊〟を始めとする各部隊。 元居た世界の常識が通用しないその異世界を、それを越える常識外れな存在が、掻き乱し始める。 〇案内と注意 1) このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 2) 部隊規模(始めは中隊規模)での転移物となります。 3) チャプター3くらいまでは単一事件をいくつか描き、チャプター4くらいから単一事件を混ぜつつ、一つの大筋にだんだん乗っていく流れになっています。 4) 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。ぶっ飛んでます。かなりなんでも有りです。 5) 小説家になろう、カクヨムにてすでに投稿済のものになりますが、そちらより一話当たり分量を多くして話数を減らす整理のし直しを行っています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

処理中です...