73 / 123
第四章 プレイ十二日目
#66 三人目の騎士、登場
しおりを挟む
女性がつかつかとこちらに歩み寄ってくる。
身長は高く、男性のラペさんと同じくらいはある。その長身を厳つい漆黒の甲冑で包み、露出しているのは顔だけだ。その顔は美しくも凛としている。額には炎を発する赤い石が埋め込まれていた。髪は雪の如き白髪であり、腰にまで届く程に長い。頭部には犬耳があり、人耳はなかった。
そんな美女が真っ直ぐに私に向かって近付いてくる。彼女の名前を私は知っていた。
「ゾヘドちゃん……!?」
「私をちゃん付けで呼ぶって事は、さてはお前、ラペの所のリスナーだな?」
「あっ、いえ、すみません馴れ馴れしくて! ゾヘドさん!」
異月ゾヘド。チクタクマン社所属の企業勢Vtuberだ。
ロンちゃんとラペさんと同じ『燃眼三騎士』の一人であり、三人の共通点である燃える眼は額にある。目といっても瞳だけなので、まるで紅石が埋め込まれているかのように見えるのだ。
二つ名は『御遣いの犬』ゾヘド。マナちゃんが抱き枕にしていた白い犬のぬいぐるみに彼女が宿った経緯が由来だ。
ちなみに、『燃眼三騎士』の三人が犬・猫・鳥をモチーフにしているのに深い意味はない。ペットとして人気のある小動物からこの三種を選び抜いただけだ。
「ひゃ、ひゃじめっ、初めまして! 二倉すのこです!」
「あ、これは御丁寧にどうも。異月です」
「先日のホラー配信、とても楽しかったです! お手本のような悲鳴でした!」
「人の悲鳴を褒めるな! 素直に喜び辛い! 見てくれて有難う御座います!」
ゾヘドさんは色んなゲーム配信を行っているが、その中でも特に人気が高いのがホラゲー配信だ。
何しろ、どんな事にもビビる。お化けが唐突に襲ってきてもビビるし、ゆっくりと恐怖を演出してくる描写にもビビる。時には何でもない所で疑心暗鬼になって勝手にビビる。そして全力で悲鳴を上げる。ホラゲー製作者から百点満点を貰えそうな程のリアクションっぷりだ。
「で、でも、とても可愛らしかったですし、配信的には成功でしたし……」
「……まあ確かにリスナーからの反応も良かったけど。やっぱり怖がりだって言われるのは嬉しくないなー」
ゾヘドさんが眉を八の字にして拒否反応を示す。当人からすれば当然の感情だろう。けれども、その怖がりを買われて彼女にホラゲー実況を希望するファンは後を絶たないのだ。彼女には悪いけど、これも一つの才能だ。女の子の悲鳴マジ美味しいです。
「……っと、いけないいけない。ついつい話が逸れちゃった」
話を切り上げ、ゾヘドさんがマナちゃんの前に跪く。
「マナ様。私は彼女を共犯者にする事は反対です」
そして、神妙な面持ちでマナちゃんに進言した。
「ここに来られた事で彼女がマナ様を敬愛している事は認めます。けど、それはそれ、これはこれです。この計画は他言無用、チクタクマン社の極秘プロジェクトです。おいそれと部外者を関わらせる訳にはいきません」
身長は高く、男性のラペさんと同じくらいはある。その長身を厳つい漆黒の甲冑で包み、露出しているのは顔だけだ。その顔は美しくも凛としている。額には炎を発する赤い石が埋め込まれていた。髪は雪の如き白髪であり、腰にまで届く程に長い。頭部には犬耳があり、人耳はなかった。
そんな美女が真っ直ぐに私に向かって近付いてくる。彼女の名前を私は知っていた。
「ゾヘドちゃん……!?」
「私をちゃん付けで呼ぶって事は、さてはお前、ラペの所のリスナーだな?」
「あっ、いえ、すみません馴れ馴れしくて! ゾヘドさん!」
異月ゾヘド。チクタクマン社所属の企業勢Vtuberだ。
ロンちゃんとラペさんと同じ『燃眼三騎士』の一人であり、三人の共通点である燃える眼は額にある。目といっても瞳だけなので、まるで紅石が埋め込まれているかのように見えるのだ。
二つ名は『御遣いの犬』ゾヘド。マナちゃんが抱き枕にしていた白い犬のぬいぐるみに彼女が宿った経緯が由来だ。
ちなみに、『燃眼三騎士』の三人が犬・猫・鳥をモチーフにしているのに深い意味はない。ペットとして人気のある小動物からこの三種を選び抜いただけだ。
「ひゃ、ひゃじめっ、初めまして! 二倉すのこです!」
「あ、これは御丁寧にどうも。異月です」
「先日のホラー配信、とても楽しかったです! お手本のような悲鳴でした!」
「人の悲鳴を褒めるな! 素直に喜び辛い! 見てくれて有難う御座います!」
ゾヘドさんは色んなゲーム配信を行っているが、その中でも特に人気が高いのがホラゲー配信だ。
何しろ、どんな事にもビビる。お化けが唐突に襲ってきてもビビるし、ゆっくりと恐怖を演出してくる描写にもビビる。時には何でもない所で疑心暗鬼になって勝手にビビる。そして全力で悲鳴を上げる。ホラゲー製作者から百点満点を貰えそうな程のリアクションっぷりだ。
「で、でも、とても可愛らしかったですし、配信的には成功でしたし……」
「……まあ確かにリスナーからの反応も良かったけど。やっぱり怖がりだって言われるのは嬉しくないなー」
ゾヘドさんが眉を八の字にして拒否反応を示す。当人からすれば当然の感情だろう。けれども、その怖がりを買われて彼女にホラゲー実況を希望するファンは後を絶たないのだ。彼女には悪いけど、これも一つの才能だ。女の子の悲鳴マジ美味しいです。
「……っと、いけないいけない。ついつい話が逸れちゃった」
話を切り上げ、ゾヘドさんがマナちゃんの前に跪く。
「マナ様。私は彼女を共犯者にする事は反対です」
そして、神妙な面持ちでマナちゃんに進言した。
「ここに来られた事で彼女がマナ様を敬愛している事は認めます。けど、それはそれ、これはこれです。この計画は他言無用、チクタクマン社の極秘プロジェクトです。おいそれと部外者を関わらせる訳にはいきません」
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
3024年宇宙のスズキ
神谷モロ
SF
俺の名はイチロー・スズキ。
もちろんベースボールとは無関係な一般人だ。
21世紀に生きていた普通の日本人。
ひょんな事故から冷凍睡眠されていたが1000年後の未来に蘇った現代の浦島太郎である。
今は福祉事業団体フリーボートの社員で、福祉船アマテラスの船長だ。
※この作品はカクヨムでも掲載しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる