上 下
66 / 123
第四章 プレイ十二日目

#59 登録者数10000人突破YEAHHHHH!!!

しおりを挟む
 テストプレイ開始より十二日目。午後六時過ぎ。

「えー……じゃあ、すのこの登録者数一万人突破を祝して、カンパーイ!」
「カンパーイ!」

 私達は仲間内パーティー宴会パーティーをしていた。
 宴会といっても酒類はない。ここはゲームの中だからどんな物を幾ら飲食しても罪には問われないし、何だったらこのゲームには状態異常:酩酊もあるのだが、しかし私達は未成年。それを考慮して一応アルコールの摂取は避けた。テーブルの上にあるのは全てフルーツジュースだ。

 とはいえ、そのフルーツも『知恵をもたらす林檎』や『黄泉路よみじの桃』といったファンタジックかつ胡乱げな代物だったが。

 料理は飛竜ワイバーンのだし巻き卵、蛇鶏コカトリスの唐揚げ、巨烏賊クラーケンの刺身、幽霊豚サーイティのヒレカツ、植物男グリーンマン農園のフライドポテトと人参スティックなどが並んでいる。ファンタジー世界でしか食べられないメニューだ。現実に出されたら食べるのを少し躊躇する珍奇っぷりである。

 しかし、その味はといえばどれも美味だ。このゲームでは五感は完備されているが、ここまで味覚を刺激してくるとは思わなかった。あくまでゲームの中での食事なので実際に腹は膨れないのだが、「現実の食事では満足出来なくなってしまうのでは?」と不安になる程の美味しさだ。

「メェ~、メメメ~」

 使い魔ファミリアのシュブシュブも野菜を美味しそうに頬張っている。可愛い。この子はカメラとしての存在ではあるものの、こうやって配信をしない時にも召喚して愛でる事が出来る。可愛い。

「それにしてもこんなにも早く一万人を達成出来るなんて」

 美食に舌鼓を打ちつつ私は感慨深さに浸る。
 乾杯の音頭でマイが言った通り、本日この私こと二倉すのこのチャンネル登録者数が一万人を突破したのだ。『●NEPIECE』で例えるなら一〇〇〇万ベリーの賞金首になった出世振りだ。東の海イーストブルーなら大物海賊に数えられるレベルである。

 ……はい、『ON●PIECE』を読んでいない人には分からないネタで申し訳ありません。

 ルトちゃんみたいな一級のVtuberに比べればまだまだ弱小だけど、やっぱり五桁の大台に入ったのは一つの節目だ。
 なお、ルトちゃんはこのゲームを始めてから登録者数が二十二万人を超えた。私四人分の増加だ。賞金首なら二億二〇〇〇万ベリー。いや別に悪い事した訳じゃないんだから賞金首に比喩するのもおかしいんだけど。
 ……そもそも個人勢と企業勢とじゃ伸び率が全然違うから、私とルトちゃんとじゃ比べられるものじゃない。
 ちなみに一万人になるとYabeeTubeからグッズ販売の許可が与えられる。更に収益を得る手段が増えるのだ。やったぜ。

「でも、ルトちゃんの配信に便乗しちゃったみたいで何か悪いね」

 ガタノソア遺跡でルトちゃんと出会ってから毎日、私達は彼女の配信にお邪魔させて頂いていた。配信中ずっとという訳ではなく、プレイ中のほんの一時に顔を出した程度だったが、それでも毎日だ。私の登録者数に与えた彼女の影響力は間違いなく大きい。

「……そんな事ないよ。登録者数はすのこの実力だよ。それに、他の人とコラボして伸びるのはV業界の常套手段だもん。悪いと思う事なんかない」

 しかし、ルトちゃんは首を横に振った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

関西訛りな人工生命体の少女がお母さんを探して旅するお話。

虎柄トラ
SF
あるところに誰もがうらやむ才能を持った科学者がいた。 科学者は天賦の才を得た代償なのか、天涯孤独の身で愛する家族も頼れる友人もいなかった。 愛情に飢えた科学者は存在しないのであれば、創造すればいいじゃないかという発想に至る。 そして試行錯誤の末、科学者はありとあらゆる癖を詰め込んだ最高傑作を完成させた。 科学者は人工生命体にリアムと名付け、それはもうドン引きするぐらい溺愛した。 そして月日は経ち、可憐な少女に成長したリアムは二度目の誕生日を迎えようとしていた。 誕生日プレゼントを手に入れるため科学者は、リアムに留守番をお願いすると家を出て行った。 それからいくつも季節が通り過ぎたが、科学者が家に帰ってくることはなかった。 科学者が帰宅しないのは迷子になっているからだと、推察をしたリアムはある行動を起こした。 「お母さん待っててな、リアムがいま迎えに行くから!」 一度も外に出たことがない関西訛りな箱入り娘による壮大な母親探しの旅がいまはじまる。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

❤️レムールアーナ人の遺産❤️

apusuking
SF
 アランは、神代記の伝説〈宇宙が誕生してから40億年後に始めての知性体が誕生し、更に20億年の時を経てから知性体は宇宙に進出を始める。  神々の申し子で有るレムルアーナ人は、数億年を掛けて宇宙の至る所にレムルアーナ人の文明を築き上げて宇宙は人々で溢れ平和で共存共栄で発展を続ける。  時を経てレムルアーナ文明は予知せぬ謎の種族の襲来を受け、宇宙を二分する戦いとなる。戦争終焉頃にはレムルアーナ人は誕生星系を除いて衰退し滅亡するが、レムルアーナ人は後世の為に科学的資産と数々の奇跡的な遺産を残した。  レムールアーナ人に代わり3大種族が台頭して、やがてレムルアーナ人は伝説となり宇宙に蔓延する。  宇宙の彼方の隠蔽された星系に、レムルアーナ文明の輝かしい遺産が眠る。其の遺産を手にした者は宇宙を征するで有ろ。但し、辿り付くには3つの鍵と7つの試練を乗り越えねばならない。  3つの鍵は心の中に眠り、開けるには心の目を開いて真実を見よ。心の鍵は3つ有り、3つの鍵を開けて真実の鍵が開く〉を知り、其の神代記時代のレムールアーナ人が残した遺産を残した場所が暗示されていると悟るが、闇の勢力の陰謀に巻き込まれゴーストリアンが破壊さ

魔術師のロボット~最凶と呼ばれたパイロットによる世界変革記~

MS
SF
これは戦争に巻き込まれた少年が世界を変えるために戦う物語。 戦歴2234年、人型ロボット兵器キャスター、それは魔術師と呼ばれる一部の人しか扱えない兵器であった。 そのパイロットになるためアルバート・デグレアは軍の幼年学校に通っていて卒業まであと少しの時だった。 親友が起こしたキャスター強奪事件。 そして大きく変化する時代に巻き込まれていく。 それぞれの正義がぶつかり合うなかで徐々にその才能を開花させていき次々と大きな戦果を挙げていくが……。 新たな歴史が始まる。 ************************************************ 小説家になろう様、カクヨム様でも連載しております。 投降は当分の間毎日22時ごろを予定しています。

処理中です...