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第二章 プレイ二日目
#29 反撃開始
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「ロント!」
ルトちゃんが少女の名を叫ぶ。
少女と対峙しているモンスターはゾンビだった。だが、ただのゾンビではない。複数人の死体を重ねた巨躯のゾンビであり、先程のデカ骨に匹敵する。否、血肉がある分、こちらの方がより巨体に見える。少女の矮躯と比べると一層だ。更にはその腕は四本に改造されていた。防腐処理が施されているのか、それとも単にプログラムしていないだけなのか腐敗臭はしない。
ゾンビの名は【西型四号】と表示されていた。そういうネーミングをされているという事はこのゾンビは誰かが作った物という設定なのだろうか。
少女の得物は槍だった。ゾンビに向かって連続で突きを繰り出している。昨日マイと戦ったあのPKのように力任せに振り回すのではない。槍のリーチで身長の低さをカバーする、きちんとした戦法だ。
その的確な突きをゾンビは全て防いでいた。
四つの拳で槍の突きを弾き返す。時折掠めて防げない時もあるが、その際には少女を殴る方にシフトしていた。少女はゾンビの拳を躱すが、その動きのせいで槍の精度が乱れ、槍はゾンビから外れた。
槍と拳が応酬する。互いに防ぎ、防ぎ切れず掠り傷が増えていく。
しかし一方は痛みを感じない死体だ。掠り傷など物ともしない。応酬が二十を超える頃、軍配はゾンビに上がった。槍を完全に躱してその内側に入り、少女に肉薄したのだ。
「オォォォ!」
ゾンビが拳を引く。少女が慌てて槍を戻そうとするが、間に合わない。拳が真っ直ぐに彼女の胴を打ち抜く――
「――【伏龍一矢】!」
その寸前に、私がゾンビの背後から射た。
魔力で強化された矢がゾンビの首の後ろから喉仏にまで貫通した。人間だったらこれで即死だが、ゾンビは呼吸もしていなければ血液が流れてもいない。この一撃だけでは倒せなかった。だが、それでも矢に貫かれた衝撃にゾンビはたたらを踏み、動きが僅かに止まった。少女に拳は届かない。
「【初級火炎魔術】――!」
そこにバスケットボール大の火の玉が飛んだ。
ルトちゃんの掌から放たれた炎だ。彼女の職業は魔法使い。魔力を消費して魔術という遠距離攻撃で攻撃する役割だ。
火の玉は砲弾もかくやという速度で大気を突っ切ると、ゾンビの側頭部に命中した。思考回路を襲った威力にゾンビがバランスを崩す。倒れるまでは行かないが、姿勢を戻すのに苦心していた。
その間にマイが少女の前に立った。抜剣して盾にもなるように構える。私達も移動し、ゾンビの正面にはマイ、後方には私、右手側にはルトちゃんが立った。今やゾンビは三方向から包囲されていた。
「――さあ、反撃と行こうじゃねえか!」
ゾンビに向けてマイが吠えた。
ルトちゃんが少女の名を叫ぶ。
少女と対峙しているモンスターはゾンビだった。だが、ただのゾンビではない。複数人の死体を重ねた巨躯のゾンビであり、先程のデカ骨に匹敵する。否、血肉がある分、こちらの方がより巨体に見える。少女の矮躯と比べると一層だ。更にはその腕は四本に改造されていた。防腐処理が施されているのか、それとも単にプログラムしていないだけなのか腐敗臭はしない。
ゾンビの名は【西型四号】と表示されていた。そういうネーミングをされているという事はこのゾンビは誰かが作った物という設定なのだろうか。
少女の得物は槍だった。ゾンビに向かって連続で突きを繰り出している。昨日マイと戦ったあのPKのように力任せに振り回すのではない。槍のリーチで身長の低さをカバーする、きちんとした戦法だ。
その的確な突きをゾンビは全て防いでいた。
四つの拳で槍の突きを弾き返す。時折掠めて防げない時もあるが、その際には少女を殴る方にシフトしていた。少女はゾンビの拳を躱すが、その動きのせいで槍の精度が乱れ、槍はゾンビから外れた。
槍と拳が応酬する。互いに防ぎ、防ぎ切れず掠り傷が増えていく。
しかし一方は痛みを感じない死体だ。掠り傷など物ともしない。応酬が二十を超える頃、軍配はゾンビに上がった。槍を完全に躱してその内側に入り、少女に肉薄したのだ。
「オォォォ!」
ゾンビが拳を引く。少女が慌てて槍を戻そうとするが、間に合わない。拳が真っ直ぐに彼女の胴を打ち抜く――
「――【伏龍一矢】!」
その寸前に、私がゾンビの背後から射た。
魔力で強化された矢がゾンビの首の後ろから喉仏にまで貫通した。人間だったらこれで即死だが、ゾンビは呼吸もしていなければ血液が流れてもいない。この一撃だけでは倒せなかった。だが、それでも矢に貫かれた衝撃にゾンビはたたらを踏み、動きが僅かに止まった。少女に拳は届かない。
「【初級火炎魔術】――!」
そこにバスケットボール大の火の玉が飛んだ。
ルトちゃんの掌から放たれた炎だ。彼女の職業は魔法使い。魔力を消費して魔術という遠距離攻撃で攻撃する役割だ。
火の玉は砲弾もかくやという速度で大気を突っ切ると、ゾンビの側頭部に命中した。思考回路を襲った威力にゾンビがバランスを崩す。倒れるまでは行かないが、姿勢を戻すのに苦心していた。
その間にマイが少女の前に立った。抜剣して盾にもなるように構える。私達も移動し、ゾンビの正面にはマイ、後方には私、右手側にはルトちゃんが立った。今やゾンビは三方向から包囲されていた。
「――さあ、反撃と行こうじゃねえか!」
ゾンビに向けてマイが吠えた。
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