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第二章 プレイ二日目
#24 vsバンドルド・スケルトン
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黒い修道服を着た少女――いや、パッと見の背丈から判断して幼女と呼ぶべきか。頭巾を被っているので顔立ちはここからでは良く分からない。頭巾の合間からは真珠色の髪が覗いていた。
そんな幼女が一体のスケルトンに襲われていた。ただのスケルトンではない。他のものよりも巨躯で、身長はおおよそ二・五メートルを超えている。骨は太い上に本数が多く、雑魚とは違うと一目で分かる外見だ。
【バンドルド・スケルトン】――それがデカ骨の頭上に表示されている名前だ。バンドルドは「束ねた」という意味の英語だったっけか。
「しっ!」
弓と矢を取り出してすぐさま射る。だが、矢はスケルトンに当たらず、近くの壁に突き刺さった。【命中補正E】のスキルは手に入れたが、やっぱりまだすんなりと相手に当たらないようだ。当てるにはもっと私自身の技術を磨く必要がある。
だが、今ので敵の注意を幼女からこちらに向かせる事には成功した。デカ骨が幼女から離れて私達へと敵意を向ける。これでひとまず幼女の安全は確保出来た。
「オォォラッ!」
マイが剣を振るう。袈裟切りの刃はしかし、デカ骨を破壊するには足りなかった。僅かな傷が付いただけ。彼女の膂力よりもデカ骨の硬度の方が上なのだ。
「ちっ、刃が立てばもう少し違うものを……!」
「マイ、ちょっとズレて!」
言われてマイが右にスライドする。直後、マイの背後に隠れていた私が飛び掛かった。敏捷値で脚力を後押しした跳躍だ。デカ骨からすれば、姿の見えなかった私がいきなり現れたように見えただろう。
両拳には矢を握っていた。右に三本、左に三本だ。矢を爪としてデカ骨の左頬と右の鎖骨を殴打する。
昨日、私の動画に送られてきたコメントで知ったのだが、矢を手に持って戦う術を打根術というらしい。正確には矢を手槍のように使う発想から発展した戦い方で、敵との間合いに応じて手裏剣、分銅鎖、小刀としても臨機応変に対応出来るのだという。指の間に矢を挟んで使う私のそれとは違うんだけど。
つまり何が言いたいのかというと、矢で殴るのはそれ程奇異ではないという事だ。
デカ骨の両サイドへ打撃には手応えはあった。だが、デカ骨は怯まなかった。マイの剣でも断てなかった骨だ。やはり大したダメージにはならない。
「FFF……!」
デカ骨が右腕を振り上げる。いけない。今、私は空中にいる。敏捷値がどれだけ高かろうと足場のない状態では身動きが取れない。このままではデカ骨攻撃をまともに喰らってしまう。
「危ねえ!」
マイが私の服を掴んで引っ張った。直後、デカ骨の腕が振り下ろされる。白い腕が私の服の裾を掠ったが、直撃はしなかった。
本当に危なかった。生命値にポイントを振っていない私の身ではどんな攻撃でも致命傷に成り得る。デカ骨の腕が直撃していたらそれだけで死んでいた。
「ありがと!」
「気にすんな! 敵に集中しろ!」
マイに言われ、デカ骨に向き直る。攻撃を躱されたデカ骨は、しかし特に不満そうな様子はなかった。不死者なので感情も死んでいるのかもしれない。目の前の敵を攻撃する機械のようなものだ。
そんな幼女が一体のスケルトンに襲われていた。ただのスケルトンではない。他のものよりも巨躯で、身長はおおよそ二・五メートルを超えている。骨は太い上に本数が多く、雑魚とは違うと一目で分かる外見だ。
【バンドルド・スケルトン】――それがデカ骨の頭上に表示されている名前だ。バンドルドは「束ねた」という意味の英語だったっけか。
「しっ!」
弓と矢を取り出してすぐさま射る。だが、矢はスケルトンに当たらず、近くの壁に突き刺さった。【命中補正E】のスキルは手に入れたが、やっぱりまだすんなりと相手に当たらないようだ。当てるにはもっと私自身の技術を磨く必要がある。
だが、今ので敵の注意を幼女からこちらに向かせる事には成功した。デカ骨が幼女から離れて私達へと敵意を向ける。これでひとまず幼女の安全は確保出来た。
「オォォラッ!」
マイが剣を振るう。袈裟切りの刃はしかし、デカ骨を破壊するには足りなかった。僅かな傷が付いただけ。彼女の膂力よりもデカ骨の硬度の方が上なのだ。
「ちっ、刃が立てばもう少し違うものを……!」
「マイ、ちょっとズレて!」
言われてマイが右にスライドする。直後、マイの背後に隠れていた私が飛び掛かった。敏捷値で脚力を後押しした跳躍だ。デカ骨からすれば、姿の見えなかった私がいきなり現れたように見えただろう。
両拳には矢を握っていた。右に三本、左に三本だ。矢を爪としてデカ骨の左頬と右の鎖骨を殴打する。
昨日、私の動画に送られてきたコメントで知ったのだが、矢を手に持って戦う術を打根術というらしい。正確には矢を手槍のように使う発想から発展した戦い方で、敵との間合いに応じて手裏剣、分銅鎖、小刀としても臨機応変に対応出来るのだという。指の間に矢を挟んで使う私のそれとは違うんだけど。
つまり何が言いたいのかというと、矢で殴るのはそれ程奇異ではないという事だ。
デカ骨の両サイドへ打撃には手応えはあった。だが、デカ骨は怯まなかった。マイの剣でも断てなかった骨だ。やはり大したダメージにはならない。
「FFF……!」
デカ骨が右腕を振り上げる。いけない。今、私は空中にいる。敏捷値がどれだけ高かろうと足場のない状態では身動きが取れない。このままではデカ骨攻撃をまともに喰らってしまう。
「危ねえ!」
マイが私の服を掴んで引っ張った。直後、デカ骨の腕が振り下ろされる。白い腕が私の服の裾を掠ったが、直撃はしなかった。
本当に危なかった。生命値にポイントを振っていない私の身ではどんな攻撃でも致命傷に成り得る。デカ骨の腕が直撃していたらそれだけで死んでいた。
「ありがと!」
「気にすんな! 敵に集中しろ!」
マイに言われ、デカ骨に向き直る。攻撃を躱されたデカ骨は、しかし特に不満そうな様子はなかった。不死者なので感情も死んでいるのかもしれない。目の前の敵を攻撃する機械のようなものだ。
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