25 / 123
第二章 プレイ二日目
#23 ダンジョン初体験
しおりを挟む
ダンジョンとは「地下牢」という意味であり、元々は城の地下に造られた監獄や地下室を指していた。それが「古城の地下には財宝が隠されていたり怪物が住み着いていたりする」という俗説と交わり、今日のように「冒険の舞台となる謎や宝が埋もれている危険な領域」を意味するようになった。
私達が向かったダンジョンもまた地下とは全く関係のない場所だった。
『ガタノソア遺跡』――朱無王国に程近い場所にある石柱と石畳の廃墟。
街の住人から聞いた話によると、かつてはある神を崇めていた神殿だったが、その儀式があまりにも悍ましいものだった為、王国によって壊滅させられてしまったのだという。今や魔物の棲息地であり、採掘目的の冒険者以外は誰も寄り付かない場所になってしまった。
「ほお、魔物っていうから何が出やがんのかと思ったら、不死者か」
マイが好戦的な笑みを浮かべる。彼女の視線の先、幾つもの白骨死体が筋肉もないのに歩き回っていた。不死者の一種、動く骸骨だ。
「チャット欄は……今日は三人来てくれているね」
視界の端にあるチャット欄を見る。今はチャットに三人がコメントしてくれている。同時視聴者は四〇人強だ。〇人だった昨日までに比べれば恵まれているけど、推し達の配信に比べればまだまだ寂しい数だ。
「そんなに少ねえのか? 登録者数が十倍にもなったっつーのに?」
チャット欄は他の人の視界には表示されず、配信者のみが視認する事が出来る。マイには見えていない。
「十倍になったっていっても五〇〇人だからねぇ。一人でもコメントしてくれればマシな方だよ」
さっきも言ったけど、登録者全員が動画を見るなんて事はまずない。生配信中に来てくれる人なんてもっと少ないし、コメントを残してくれる人は更に少ない。一〇〇万人もの登録者数を抱えるVTuberでも、配信中に一万人が同時接続してくれば上々なくらいだ。コメントしてくれるのは更にその一部なのだから、そりゃあ少人数になるというものだ。
こればっかりはどうしようもない。登録者数という分母を増やさなくてはコメントという分子は増えないのだ。比例の関係だ。コメントが欲しかったら配信者は登録者数を増やす努力をしなくてはならない。
「まあ、それは今後の私の活動次第だから今は放っておいて。それより、とりあえずレベリングも兼ねて適当にバトルしながら散策しよっか」
「そうだな、まだ攻撃をまともに当てられねえし。スキルの方も練習しておき……」
「ぴぃっぎゃあああああ――っ!!」
「!?」
遺跡の奥から悲鳴が響いた。マイと顔を合わせると、奥へと走り出す。途中でスケルトン達が私達に手を伸ばすが、敏捷値極振りの私には触れられない。マイは私程早くはないが、剣の腹でスケルトンの追走を受け流していた。
崩れた柱や壁を乗り越え、角を曲がる。そこには、
「うわぁぁぁん! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!」
一人の女の子が蹲って泣き喚いていた。
私達が向かったダンジョンもまた地下とは全く関係のない場所だった。
『ガタノソア遺跡』――朱無王国に程近い場所にある石柱と石畳の廃墟。
街の住人から聞いた話によると、かつてはある神を崇めていた神殿だったが、その儀式があまりにも悍ましいものだった為、王国によって壊滅させられてしまったのだという。今や魔物の棲息地であり、採掘目的の冒険者以外は誰も寄り付かない場所になってしまった。
「ほお、魔物っていうから何が出やがんのかと思ったら、不死者か」
マイが好戦的な笑みを浮かべる。彼女の視線の先、幾つもの白骨死体が筋肉もないのに歩き回っていた。不死者の一種、動く骸骨だ。
「チャット欄は……今日は三人来てくれているね」
視界の端にあるチャット欄を見る。今はチャットに三人がコメントしてくれている。同時視聴者は四〇人強だ。〇人だった昨日までに比べれば恵まれているけど、推し達の配信に比べればまだまだ寂しい数だ。
「そんなに少ねえのか? 登録者数が十倍にもなったっつーのに?」
チャット欄は他の人の視界には表示されず、配信者のみが視認する事が出来る。マイには見えていない。
「十倍になったっていっても五〇〇人だからねぇ。一人でもコメントしてくれればマシな方だよ」
さっきも言ったけど、登録者全員が動画を見るなんて事はまずない。生配信中に来てくれる人なんてもっと少ないし、コメントを残してくれる人は更に少ない。一〇〇万人もの登録者数を抱えるVTuberでも、配信中に一万人が同時接続してくれば上々なくらいだ。コメントしてくれるのは更にその一部なのだから、そりゃあ少人数になるというものだ。
こればっかりはどうしようもない。登録者数という分母を増やさなくてはコメントという分子は増えないのだ。比例の関係だ。コメントが欲しかったら配信者は登録者数を増やす努力をしなくてはならない。
「まあ、それは今後の私の活動次第だから今は放っておいて。それより、とりあえずレベリングも兼ねて適当にバトルしながら散策しよっか」
「そうだな、まだ攻撃をまともに当てられねえし。スキルの方も練習しておき……」
「ぴぃっぎゃあああああ――っ!!」
「!?」
遺跡の奥から悲鳴が響いた。マイと顔を合わせると、奥へと走り出す。途中でスケルトン達が私達に手を伸ばすが、敏捷値極振りの私には触れられない。マイは私程早くはないが、剣の腹でスケルトンの追走を受け流していた。
崩れた柱や壁を乗り越え、角を曲がる。そこには、
「うわぁぁぁん! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!」
一人の女の子が蹲って泣き喚いていた。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
関西訛りな人工生命体の少女がお母さんを探して旅するお話。
虎柄トラ
SF
あるところに誰もがうらやむ才能を持った科学者がいた。
科学者は天賦の才を得た代償なのか、天涯孤独の身で愛する家族も頼れる友人もいなかった。
愛情に飢えた科学者は存在しないのであれば、創造すればいいじゃないかという発想に至る。
そして試行錯誤の末、科学者はありとあらゆる癖を詰め込んだ最高傑作を完成させた。
科学者は人工生命体にリアムと名付け、それはもうドン引きするぐらい溺愛した。
そして月日は経ち、可憐な少女に成長したリアムは二度目の誕生日を迎えようとしていた。
誕生日プレゼントを手に入れるため科学者は、リアムに留守番をお願いすると家を出て行った。
それからいくつも季節が通り過ぎたが、科学者が家に帰ってくることはなかった。
科学者が帰宅しないのは迷子になっているからだと、推察をしたリアムはある行動を起こした。
「お母さん待っててな、リアムがいま迎えに行くから!」
一度も外に出たことがない関西訛りな箱入り娘による壮大な母親探しの旅がいまはじまる。
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
魔術師のロボット~最凶と呼ばれたパイロットによる世界変革記~
MS
SF
これは戦争に巻き込まれた少年が世界を変えるために戦う物語。
戦歴2234年、人型ロボット兵器キャスター、それは魔術師と呼ばれる一部の人しか扱えない兵器であった。
そのパイロットになるためアルバート・デグレアは軍の幼年学校に通っていて卒業まであと少しの時だった。
親友が起こしたキャスター強奪事件。
そして大きく変化する時代に巻き込まれていく。
それぞれの正義がぶつかり合うなかで徐々にその才能を開花させていき次々と大きな戦果を挙げていくが……。
新たな歴史が始まる。
************************************************
小説家になろう様、カクヨム様でも連載しております。
投降は当分の間毎日22時ごろを予定しています。
❤️レムールアーナ人の遺産❤️
apusuking
SF
アランは、神代記の伝説〈宇宙が誕生してから40億年後に始めての知性体が誕生し、更に20億年の時を経てから知性体は宇宙に進出を始める。
神々の申し子で有るレムルアーナ人は、数億年を掛けて宇宙の至る所にレムルアーナ人の文明を築き上げて宇宙は人々で溢れ平和で共存共栄で発展を続ける。
時を経てレムルアーナ文明は予知せぬ謎の種族の襲来を受け、宇宙を二分する戦いとなる。戦争終焉頃にはレムルアーナ人は誕生星系を除いて衰退し滅亡するが、レムルアーナ人は後世の為に科学的資産と数々の奇跡的な遺産を残した。
レムールアーナ人に代わり3大種族が台頭して、やがてレムルアーナ人は伝説となり宇宙に蔓延する。
宇宙の彼方の隠蔽された星系に、レムルアーナ文明の輝かしい遺産が眠る。其の遺産を手にした者は宇宙を征するで有ろ。但し、辿り付くには3つの鍵と7つの試練を乗り越えねばならない。
3つの鍵は心の中に眠り、開けるには心の目を開いて真実を見よ。心の鍵は3つ有り、3つの鍵を開けて真実の鍵が開く〉を知り、其の神代記時代のレムールアーナ人が残した遺産を残した場所が暗示されていると悟るが、闇の勢力の陰謀に巻き込まれゴーストリアンが破壊さ
惑星保護区
ラムダムランプ
SF
この物語について
旧人類と別宇宙から来た種族との出来事にまつわる話です。
概要
かつて地球に住んでいた旧人類と別宇宙から来た種族がトラブルを引き起こし、その事が発端となり、地球が宇宙の中で【保護区】(地球で言う自然保護区)に制定され
制定後は、他の星の種族は勿論、あらゆる別宇宙の種族は地球や現人類に対し、安易に接触、交流、知能や技術供与する事を固く禁じられた。
現人類に対して、未だ地球以外の種族が接触して来ないのは、この為である。
初めて書きますので読みにくいと思いますが、何卒宜しくお願い致します。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる