19 / 123
第一章 プレイ初日
#19 新規スキルを確認していたら変人が来た
しおりを挟む
一つ目の【伏龍一矢】は任意発動スキルだ。魔力を消費して矢の威力を増す事が出来る。威力は筋力値と精神値に依存か。敏捷値極振りの私じゃ大した威力は出せないな。
二つ目の【命中補正E】は矢の命中率を上げる常時発動スキルだ。Eとはランクを意味しており、Eランクではあまり効果的な補正は期待出来ないが、それでも最初の一歩だ。これがDランク、Cランクと上がっていけばどんどん矢も当たるようになるだろう。
三つ目の【殺意の兆し】もパッシブスキルだ。人間に属する相手を攻撃した際、極低確率で四倍のダメージを与える。このダメージは筋力値や精神値に縛られず、どんな方法でも良いから出したダメージから計算される。
私が「PKをした」と見做されたのが釈然としないが……返り討ちであってもPCを討ち倒した結果には変わらないという事だろう。それで経験値も入ったのだし。
「ラトさんに襲われた時は『うわあ、ついてない』って思ったけど……これは収穫だったなあ」
それなりに劇的な展開、なかなかの撮れ高だ。これはラトには感謝しないといけないな。……いや、やっぱりPKなんかに感謝するの嫌だな。うん、私の努力と幸運に感謝するとしよう。
「何かキリが良いし、今日はそろそろアガるか」
「そうだね。今日は有難うね、マイ」
「おう」
『冒険者教典』を取り出し、ページを開く。ページにはログアウトのアイコンがあった。これをタップすればゲームが終了し、VRヘルメットからの映像や音が途切れる。ゲームの世界から現実世界に意識が戻るのだ。
私の指がアイコンに触れる。その直前だった。
「良い戦いをするねぇ、オタクら」
後ろから声を掛けられた。
振り返ると、そこには一人の男がいた。黒いコートで全身を覆い隠し、隙間から覗くズボンもまた黒い。黒ずくめの男だ。顔だけは黒ではないが、包帯でぐるぐる巻きにした上にサングラスを掛けている。体格から男性だと分かるが、それ以上はどんな人物なのかまるで判別が出来ない。
怪しい。怪し過ぎて逆に怪しくないんじゃないかと思ってしまうくらい怪しい外見だ。
「えっと、はい……ど、どうも……?」
「いや本当本当。見事なものだったよ。今日が初日だから皆、戦闘力は同等の筈なのに終わってみたら完勝なんだもの。良い立ち回りをしたもんだわ」
「は、はあ……」
「ん? ひょっとしてその光の玉は……君もVTuberかい? 奇遇だねぇ。何を隠そう僕もVTuberでね。ほらこれ」
VTuberを名乗った彼の近くにも光の玉が浮いていた。私と同じ代物だ。カメラがあるという事は本当にVTuberなのだろう。
というか、この人の口調と背格好。加工しているのか声色は全然違うけど、聞いた事がある。もしかしてこの人は私の知っているあのVTuberなのでは……?
などと考えていたらマイが用心棒のように私と包帯男の間に立った。
二つ目の【命中補正E】は矢の命中率を上げる常時発動スキルだ。Eとはランクを意味しており、Eランクではあまり効果的な補正は期待出来ないが、それでも最初の一歩だ。これがDランク、Cランクと上がっていけばどんどん矢も当たるようになるだろう。
三つ目の【殺意の兆し】もパッシブスキルだ。人間に属する相手を攻撃した際、極低確率で四倍のダメージを与える。このダメージは筋力値や精神値に縛られず、どんな方法でも良いから出したダメージから計算される。
私が「PKをした」と見做されたのが釈然としないが……返り討ちであってもPCを討ち倒した結果には変わらないという事だろう。それで経験値も入ったのだし。
「ラトさんに襲われた時は『うわあ、ついてない』って思ったけど……これは収穫だったなあ」
それなりに劇的な展開、なかなかの撮れ高だ。これはラトには感謝しないといけないな。……いや、やっぱりPKなんかに感謝するの嫌だな。うん、私の努力と幸運に感謝するとしよう。
「何かキリが良いし、今日はそろそろアガるか」
「そうだね。今日は有難うね、マイ」
「おう」
『冒険者教典』を取り出し、ページを開く。ページにはログアウトのアイコンがあった。これをタップすればゲームが終了し、VRヘルメットからの映像や音が途切れる。ゲームの世界から現実世界に意識が戻るのだ。
私の指がアイコンに触れる。その直前だった。
「良い戦いをするねぇ、オタクら」
後ろから声を掛けられた。
振り返ると、そこには一人の男がいた。黒いコートで全身を覆い隠し、隙間から覗くズボンもまた黒い。黒ずくめの男だ。顔だけは黒ではないが、包帯でぐるぐる巻きにした上にサングラスを掛けている。体格から男性だと分かるが、それ以上はどんな人物なのかまるで判別が出来ない。
怪しい。怪し過ぎて逆に怪しくないんじゃないかと思ってしまうくらい怪しい外見だ。
「えっと、はい……ど、どうも……?」
「いや本当本当。見事なものだったよ。今日が初日だから皆、戦闘力は同等の筈なのに終わってみたら完勝なんだもの。良い立ち回りをしたもんだわ」
「は、はあ……」
「ん? ひょっとしてその光の玉は……君もVTuberかい? 奇遇だねぇ。何を隠そう僕もVTuberでね。ほらこれ」
VTuberを名乗った彼の近くにも光の玉が浮いていた。私と同じ代物だ。カメラがあるという事は本当にVTuberなのだろう。
というか、この人の口調と背格好。加工しているのか声色は全然違うけど、聞いた事がある。もしかしてこの人は私の知っているあのVTuberなのでは……?
などと考えていたらマイが用心棒のように私と包帯男の間に立った。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!
海夏世もみじ
ファンタジー
旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました
動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。
そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。
しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!
戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。
VRおじいちゃん ~ひろしの大冒険~
オイシイオコメ
SF
75歳のおじいさん「ひろし」は思いもよらず、人気VRゲームの世界に足を踏み入れた。おすすめされた種族や職業はまったく理解できず「無職」を選び、さらに操作ミスで物理攻撃力に全振りしたおじいさんはVR世界で出会った仲間たちと大冒険を繰り広げる。
この作品は、小説家になろう様とカクヨム様に2021年執筆した「VRおじいちゃん」と「VRおばあちゃん」を統合した作品です。
前作品は同僚や友人の意見も取り入れて書いておりましたが、今回は自分の意向のみで修正させていただいたリニューアル作品です。
(小説中のダッシュ表記につきまして)
作品公開時、一部のスマートフォンで文字化けするとのご報告を頂き、ダッシュ2本のかわりに「ー」を使用しております。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる