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第一章 プレイ初日
#13 二人組の片方はバ美肉さんでした
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「PKだって……!?」
その単語を聞いて地面から飛び上がるように立つ。
プレイヤーキラー。モンスターという倒すべき敵キャラがゲーム内にいるにも拘らず、自分と同じ人間を殺すプレイヤーの事だ。ゲームによってはその行為が許されている場合もあるが、大抵は他プレイヤーの迷惑になるので忌み嫌われる存在だ。
「くっくっく、そうだぜえ。初心者狩りって奴だよ。俺はラトだ。よろしくな」
いやらしい笑みを隠そうともせずにビキニ女――ラトが名乗る。その声はやや低く、女性のものではなかった。
「貴方、中の人は男……?」
「おう。ははは、どうだ? 俺は可愛いだろう?」
「えっ、まあ……美人さんだと思いますけど……」
私がそう返すと彼女――否、彼は「そうだろう、そうだろう」と嬉しそうに軽く笑った。その笑い声は男性にしては高めだが、それでもやはり女性には聞こえない。男性なのにあえて女性PCを選ぶとは、女装が好きなのか、それとも女体化が好きな人なのだろうか。
まあ人の趣味はそれぞれだし、あえて追及する事もないだろう。VTuberにも女性キャラクターを外見にする男性配信者も少なくないし。バーチャル美少女受肉――略して『バ美肉』っていうんだけど。
……って、今はそんな事は問題じゃない。私達の命が狙われているのだ。
「初心者狩りって……貴方も初心者じゃないんですか?」
このゲームは今日がテストプレイ初日だ。つまり誰もがログイン初体験、全員が初心者の筈だ。製作スタッフでもない限り、それはVTuberだろうと一般プレイヤーだろうと例外はない筈だ。
「初心者さ! だが、それを理由に殺しをしない訳にはいかねえ。PKは俺の生き甲斐だからなあ! 今まで色んなゲームを渡り歩いてはPKを繰り返してきた。このゲームでもそれは変わらない。苦戦必至だろうが返り討ちに遭おうが、俺は殺すのさ!」
「……そうですか」
それはまた根性が決まっているというか、ある意味信念があるというか。どんな事でも一本貫いてみせば筋が通って見えるものなんだなあ。
「という訳で殺されてくれねえか? いやいや、これも経験だと思ってよぉ」
「そう言われて素直に殺される奴がいるかよ」
マイが剣の切っ先をPK達に向けて威嚇する。こういう時に強気を失わないでいてくれる彼女の反骨精神は本当に助かる。私も彼女の強気に合わせて弓に矢を番え、いつでも攻撃出来るようにしておく。
その単語を聞いて地面から飛び上がるように立つ。
プレイヤーキラー。モンスターという倒すべき敵キャラがゲーム内にいるにも拘らず、自分と同じ人間を殺すプレイヤーの事だ。ゲームによってはその行為が許されている場合もあるが、大抵は他プレイヤーの迷惑になるので忌み嫌われる存在だ。
「くっくっく、そうだぜえ。初心者狩りって奴だよ。俺はラトだ。よろしくな」
いやらしい笑みを隠そうともせずにビキニ女――ラトが名乗る。その声はやや低く、女性のものではなかった。
「貴方、中の人は男……?」
「おう。ははは、どうだ? 俺は可愛いだろう?」
「えっ、まあ……美人さんだと思いますけど……」
私がそう返すと彼女――否、彼は「そうだろう、そうだろう」と嬉しそうに軽く笑った。その笑い声は男性にしては高めだが、それでもやはり女性には聞こえない。男性なのにあえて女性PCを選ぶとは、女装が好きなのか、それとも女体化が好きな人なのだろうか。
まあ人の趣味はそれぞれだし、あえて追及する事もないだろう。VTuberにも女性キャラクターを外見にする男性配信者も少なくないし。バーチャル美少女受肉――略して『バ美肉』っていうんだけど。
……って、今はそんな事は問題じゃない。私達の命が狙われているのだ。
「初心者狩りって……貴方も初心者じゃないんですか?」
このゲームは今日がテストプレイ初日だ。つまり誰もがログイン初体験、全員が初心者の筈だ。製作スタッフでもない限り、それはVTuberだろうと一般プレイヤーだろうと例外はない筈だ。
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