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第一章 プレイ初日
#1 少女の名は二倉すのこ
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一人の少女が城に追い回されていた。
「ああああああああああああああああああああ!」
少女がいるのは茫々に伸びた草原の真っ只中だ。その草原の端から端まで聞こえる程に彼女の絶叫が響いている。
長い黒髪の娘だ。外形年齢は十代前半。上には白い小袖を、下には緋色の袴を纏っている。いわゆる巫女装束だ。しかし、厳格な巫女装束とは異なり、肩部に布はない。首には勾玉のネックレスが飾られている。
現代人として見ればコスプレでしかない格好だ。しかし、この世界で彼女の衣装は別段珍しいものではない。
「ああああああああああああああああああああ!」
少女の後方には巨大な影があった。城だ。赤い屋根の尖塔が五つ聳える、石煉瓦の洋城だ。小さめなので砦と言っても良いかもしれない。
そんな小城が床下から石造の脚を生やして草原を走っていた。動く城だ。城が追い掛けている相手は当然、黒髪の少女である。悪夢のような光景だ。
ここは現実の世界ではない。なんとVRゲームの中なのだ。剣と魔法と和風が入り混じったハイ・ファンタジー世界。故に少女の服装も城が走るのも何も不思議ではない。しかし、追い掛けられている少女にとって今、現実だの仮想だのの線引きは意味を成さない。
追い付かれれば踏み潰される。それだけだ。
「ああああああああああああああああああああ!」
この逃げている少女こそが私――二倉すのこである。
私が私の容姿をしっかりと説明出来たのもここがゲームの世界であり、私が私を俯瞰カメラで撮影しているからだったのだ。
何故私がVRゲームをプレイしているのか。
何故私が動く城になんぞ追われているのか。
その答えはただ一つ――撮れ高を作る為だ。
「ああああああああああああああああああああ!」
走る。走る。走る走る走る走る。必死になって私は走る。死にたくない、潰されたくないという思いで足を動かす。
しかし、どれ程走ろうとも城からは逃げられない。否、逃げられないどころか段々と近付かれている。私よりも城の方が歩幅が大きいせいだ。どんなに駆け足バタ足をしようとも一歩一歩が大きい城には敵わない。
ついには私は城に追い付かれ、
「ああああああああああ――――あ」
プチッとあっけなく踏み潰された。
何故私が城に追い掛け回されるハメになったのか。
話の始まりは一ヶ月前にまで遡る――――
「ああああああああああああああああああああ!」
少女がいるのは茫々に伸びた草原の真っ只中だ。その草原の端から端まで聞こえる程に彼女の絶叫が響いている。
長い黒髪の娘だ。外形年齢は十代前半。上には白い小袖を、下には緋色の袴を纏っている。いわゆる巫女装束だ。しかし、厳格な巫女装束とは異なり、肩部に布はない。首には勾玉のネックレスが飾られている。
現代人として見ればコスプレでしかない格好だ。しかし、この世界で彼女の衣装は別段珍しいものではない。
「ああああああああああああああああああああ!」
少女の後方には巨大な影があった。城だ。赤い屋根の尖塔が五つ聳える、石煉瓦の洋城だ。小さめなので砦と言っても良いかもしれない。
そんな小城が床下から石造の脚を生やして草原を走っていた。動く城だ。城が追い掛けている相手は当然、黒髪の少女である。悪夢のような光景だ。
ここは現実の世界ではない。なんとVRゲームの中なのだ。剣と魔法と和風が入り混じったハイ・ファンタジー世界。故に少女の服装も城が走るのも何も不思議ではない。しかし、追い掛けられている少女にとって今、現実だの仮想だのの線引きは意味を成さない。
追い付かれれば踏み潰される。それだけだ。
「ああああああああああああああああああああ!」
この逃げている少女こそが私――二倉すのこである。
私が私の容姿をしっかりと説明出来たのもここがゲームの世界であり、私が私を俯瞰カメラで撮影しているからだったのだ。
何故私がVRゲームをプレイしているのか。
何故私が動く城になんぞ追われているのか。
その答えはただ一つ――撮れ高を作る為だ。
「ああああああああああああああああああああ!」
走る。走る。走る走る走る走る。必死になって私は走る。死にたくない、潰されたくないという思いで足を動かす。
しかし、どれ程走ろうとも城からは逃げられない。否、逃げられないどころか段々と近付かれている。私よりも城の方が歩幅が大きいせいだ。どんなに駆け足バタ足をしようとも一歩一歩が大きい城には敵わない。
ついには私は城に追い付かれ、
「ああああああああああ――――あ」
プチッとあっけなく踏み潰された。
何故私が城に追い掛け回されるハメになったのか。
話の始まりは一ヶ月前にまで遡る――――
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