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夜の会話
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『裏の物語』
ゴーン、ゴーン…と重い鐘の音が聞こえている。
冷たい鉄格子で遮られたそこは、まるで牢獄のような校舎だった。
監獄クラスの校舎は、上品で綺麗な普通の校舎と雰囲気が違った。
窓は破壊されてないようなものだし、壁には戦った痛々しい跡が残っている。
勉強なんてする環境でもなく、机や椅子は彼らにとって武器以外のなにものでもない。
最初の頃は晦冥の魔導士は学園に通う資格がなかった、いつ寝首をかかれるか分からないからだ。
いくら子供でも、それほどの力を生まれた時から持っている。
壊れ物のように扱われて、彼らは普通を求めて立ち上がった。
晦冥の魔導士も授業を受ける権利があると、晦冥の魔導士達が訴えて学園に入学出来るようになった。
美談のように聞こえるが、実際はこの通り…監視生なんて付けて見張っているだけだ、監獄クラスという檻も一緒に…
これは普通の生徒への扱いなのかと部外者はぎもんに思うだろう。
今までの魔導士がどう思っているのかは分からない。
でも、今の彼らはこの檻に満足していた…あの人がいるから…この檻は晦冥の城となっている。
目が合えば喧嘩をして、止めるような空気の読めない奴はいない。
危険な力を持った不良の溜まり場のようになっている。
いくら穏やかな性格をしていたとしても、こんなジメジメした場所に長時間放り込まれたら性格も歪む。
三階の奥の部屋に、唯一扉がある…普通の扉と違い真っ赤で高級そうな扉だ。
ここの扉の先は呼ばれた者しか入れない、あの人の空間だから。
あの人には絶対に逆らえない、どんな喧嘩自慢でもあの人の前では子猫ちゃんになる。
一人の少年が呼ばれて、扉を数回叩いた。
一秒一秒緊張して心臓の鼓動が早くなり、汗が滝のように流れてくる。
「クラン・ワイスです」
そう言うと、触れずに勝手に扉が開いて部屋の主に入れてもらえた事に嬉しく思いつつ中に入った。
窓の前で立っていた小柄な少年は部屋に入るクランに振り返った。
瞳が大きくて、華奢な見た目の少年はお嬢と慕われていた。
その姿とは正反対に、監獄クラスで生き残る力は秘めていた。
性格もおっとりしたお嬢というより、ヤクザのお嬢のようだった。
お嬢の横の大きな椅子に座る男は、真っ赤に染まった瞳でクランを見つめた。
その瞳に見つめられると、気分が高まり…めちゃくちゃにされたいという願望が生まれる。
彼の特殊魔法という事は知っているが、元々の気持ちも相まって止まらなくなる。
触れてもいない下半身は押し上げて主張している。
下着を濡らして、ズボンに染みを作りながら息を荒げていた。
この男にどれだけの魔導士が身体を捧げてきたのか。
この監獄クラスのほとんどの魔導士が彼の虜だろう。
やらしい気分にさせられるのに、露出の少ない黒い服に身を包んだ彼は高嶺の花。
彼の身体を慰めさせてはくれるが、決して彼の一部は入れてはくれない。
「……ファントム様」と虚な瞳で息を乱して、その男に近付く。
今日は自分が慰めて差し上げたい、触れたい…彼の欲望を…
その欲望は、誰に対しても一度も絶頂が訪れる事がない。
興奮していないから当然だ、身体に流れる体液も味わう事が出来ない。
そうさせる理由なんて、他人は理解出来ないんだろうけど理解しなくていいとすら思う。
ただ触れて舐めるだけ、それでも体温が感じられるから至福の時間だ。
伸ばされた手は彼に触れる前にお嬢が前に出て遮られた。
可愛い顔をしているからとあの人の傍にいられるこの少年が腹立たしくて眉を寄せる。
どういう関係かは二人以外知らないが、彼に焦がれている人達からしたら邪魔でしかない。
お嬢にも熱狂的なファンがいるが、そんな事どうでもいい。
さっきまでの身体の熱はすっかり冷めてしまった。
「そこまでにしておけ、何のために呼んだと思ってるんだ」
「…ファントム様との蜜月を邪魔するな、お前には呼ばれてない!」
「そのファントムの用件をさっさと答えろって言ってんだよ」
お互い睨み合い、イライラが爆発しそうだ。
見た目に反して口が悪く、ここにいるから歪められたというより元々の性格だろう。
理由もなくこの場に入れるこの男を気に入らなかった。
それだけで、他とは違う特別な存在なんだと分かる。
一部の噂では、ファントムといつも一緒にいるからファントムの本命とも言われている。
そういうシーンを見た事がないが、この部屋は完全防音だからなにが起きてるか分からない。
お嬢は、皆の念願のファントムに抱かれているのではないかと言われている。
真意は分からないが、クランはそう思っている。
だからこそお嬢をライバル視している、お嬢からしたら眼中になくても……
お嬢は早く寝たいのか大きな欠伸をして、睡魔がイライラに変わっていた。
この男の言う事を聞くわけないと、ツンと目を逸らしたらさらにイラついているのが伝わる。
あの人と共にいるだけの嫉妬で心が染まっていく。
すると、凛とした美しい声で「クラン」と呼ばれて、クランはお嬢を押し退けてファントムの前にやって来た。
さっきまでのもやもやした気分が一気に晴れやかになる。
ファントムが手を出すと、その手に触れて頬を擦り寄せる。
その姿を見たお嬢からは「うげっ」と聞こえたが、クランにとって聞こえない雑音だ。
美しく男らしい手を舐めてみたい、全身を味わいたい。
すぐにファントムが手を引っ込めて、もう一度手を出した。
お嬢から「目的を忘れてんじゃねぇよ」と聞こえて、自分が何故呼ばれたか思い出した。
クランは手に持っていた紙をファントムに渡した。
「風紀委員長の役職もたまには役に立つね」
「光栄でございます!ファントム様のためなら何でも致します!」
褒められただけで、軽くイってしまい興奮が最高潮になる。
頼まれたのは「三原歩夢」の情報だった。
ファントムは生徒会長が連れてきた人間に興味があるようだ。
クランは気が気じゃなかった、三原歩夢の噂を聞いたらファントムに関わってほしくなかった。
なんせ、淫乱だと噂で顔のいい奴とは誰でも寝ると聞いた。
でも、どうやらファントムは三原歩夢ではなく生徒会長のエルダが三原歩夢に興味があるのかが気になっているようだ。
楽しい事が好きなファントムらしい感じがして、クランは微笑ましく思っていた。
しかし、頭をなにかに掴まれて床に叩きつけられた。
メガネにヒビが入り、背中に誰かが乗っている感じがした。
ズボンから伸びる太くふわふわの毛を逆立たせて、頭には狼の耳が生えていた。
グルル…と獣の呻き声を響かせて、黄色に光る瞳がクランを見つめていた。
「晦冥の魔導士だからって自惚れてんじゃねぇよ、俺を誰だと思ってんだ」
「うっ、うぐっ」
「図が高いんだよ、奴隷の分際で」
さっきの反抗的な態度が気に入らなかったお嬢が力の差で分からせてきて、止めたのは意外にもファントムだった。
「お嬢、そのくらいにしないと……クランは優秀な奴隷だよ」
「女扱いされるの嫌いなのテメェも知ってんだろ…クソファントム」
ゴーン、ゴーン…と重い鐘の音が聞こえている。
冷たい鉄格子で遮られたそこは、まるで牢獄のような校舎だった。
監獄クラスの校舎は、上品で綺麗な普通の校舎と雰囲気が違った。
窓は破壊されてないようなものだし、壁には戦った痛々しい跡が残っている。
勉強なんてする環境でもなく、机や椅子は彼らにとって武器以外のなにものでもない。
最初の頃は晦冥の魔導士は学園に通う資格がなかった、いつ寝首をかかれるか分からないからだ。
いくら子供でも、それほどの力を生まれた時から持っている。
壊れ物のように扱われて、彼らは普通を求めて立ち上がった。
晦冥の魔導士も授業を受ける権利があると、晦冥の魔導士達が訴えて学園に入学出来るようになった。
美談のように聞こえるが、実際はこの通り…監視生なんて付けて見張っているだけだ、監獄クラスという檻も一緒に…
これは普通の生徒への扱いなのかと部外者はぎもんに思うだろう。
今までの魔導士がどう思っているのかは分からない。
でも、今の彼らはこの檻に満足していた…あの人がいるから…この檻は晦冥の城となっている。
目が合えば喧嘩をして、止めるような空気の読めない奴はいない。
危険な力を持った不良の溜まり場のようになっている。
いくら穏やかな性格をしていたとしても、こんなジメジメした場所に長時間放り込まれたら性格も歪む。
三階の奥の部屋に、唯一扉がある…普通の扉と違い真っ赤で高級そうな扉だ。
ここの扉の先は呼ばれた者しか入れない、あの人の空間だから。
あの人には絶対に逆らえない、どんな喧嘩自慢でもあの人の前では子猫ちゃんになる。
一人の少年が呼ばれて、扉を数回叩いた。
一秒一秒緊張して心臓の鼓動が早くなり、汗が滝のように流れてくる。
「クラン・ワイスです」
そう言うと、触れずに勝手に扉が開いて部屋の主に入れてもらえた事に嬉しく思いつつ中に入った。
窓の前で立っていた小柄な少年は部屋に入るクランに振り返った。
瞳が大きくて、華奢な見た目の少年はお嬢と慕われていた。
その姿とは正反対に、監獄クラスで生き残る力は秘めていた。
性格もおっとりしたお嬢というより、ヤクザのお嬢のようだった。
お嬢の横の大きな椅子に座る男は、真っ赤に染まった瞳でクランを見つめた。
その瞳に見つめられると、気分が高まり…めちゃくちゃにされたいという願望が生まれる。
彼の特殊魔法という事は知っているが、元々の気持ちも相まって止まらなくなる。
触れてもいない下半身は押し上げて主張している。
下着を濡らして、ズボンに染みを作りながら息を荒げていた。
この男にどれだけの魔導士が身体を捧げてきたのか。
この監獄クラスのほとんどの魔導士が彼の虜だろう。
やらしい気分にさせられるのに、露出の少ない黒い服に身を包んだ彼は高嶺の花。
彼の身体を慰めさせてはくれるが、決して彼の一部は入れてはくれない。
「……ファントム様」と虚な瞳で息を乱して、その男に近付く。
今日は自分が慰めて差し上げたい、触れたい…彼の欲望を…
その欲望は、誰に対しても一度も絶頂が訪れる事がない。
興奮していないから当然だ、身体に流れる体液も味わう事が出来ない。
そうさせる理由なんて、他人は理解出来ないんだろうけど理解しなくていいとすら思う。
ただ触れて舐めるだけ、それでも体温が感じられるから至福の時間だ。
伸ばされた手は彼に触れる前にお嬢が前に出て遮られた。
可愛い顔をしているからとあの人の傍にいられるこの少年が腹立たしくて眉を寄せる。
どういう関係かは二人以外知らないが、彼に焦がれている人達からしたら邪魔でしかない。
お嬢にも熱狂的なファンがいるが、そんな事どうでもいい。
さっきまでの身体の熱はすっかり冷めてしまった。
「そこまでにしておけ、何のために呼んだと思ってるんだ」
「…ファントム様との蜜月を邪魔するな、お前には呼ばれてない!」
「そのファントムの用件をさっさと答えろって言ってんだよ」
お互い睨み合い、イライラが爆発しそうだ。
見た目に反して口が悪く、ここにいるから歪められたというより元々の性格だろう。
理由もなくこの場に入れるこの男を気に入らなかった。
それだけで、他とは違う特別な存在なんだと分かる。
一部の噂では、ファントムといつも一緒にいるからファントムの本命とも言われている。
そういうシーンを見た事がないが、この部屋は完全防音だからなにが起きてるか分からない。
お嬢は、皆の念願のファントムに抱かれているのではないかと言われている。
真意は分からないが、クランはそう思っている。
だからこそお嬢をライバル視している、お嬢からしたら眼中になくても……
お嬢は早く寝たいのか大きな欠伸をして、睡魔がイライラに変わっていた。
この男の言う事を聞くわけないと、ツンと目を逸らしたらさらにイラついているのが伝わる。
あの人と共にいるだけの嫉妬で心が染まっていく。
すると、凛とした美しい声で「クラン」と呼ばれて、クランはお嬢を押し退けてファントムの前にやって来た。
さっきまでのもやもやした気分が一気に晴れやかになる。
ファントムが手を出すと、その手に触れて頬を擦り寄せる。
その姿を見たお嬢からは「うげっ」と聞こえたが、クランにとって聞こえない雑音だ。
美しく男らしい手を舐めてみたい、全身を味わいたい。
すぐにファントムが手を引っ込めて、もう一度手を出した。
お嬢から「目的を忘れてんじゃねぇよ」と聞こえて、自分が何故呼ばれたか思い出した。
クランは手に持っていた紙をファントムに渡した。
「風紀委員長の役職もたまには役に立つね」
「光栄でございます!ファントム様のためなら何でも致します!」
褒められただけで、軽くイってしまい興奮が最高潮になる。
頼まれたのは「三原歩夢」の情報だった。
ファントムは生徒会長が連れてきた人間に興味があるようだ。
クランは気が気じゃなかった、三原歩夢の噂を聞いたらファントムに関わってほしくなかった。
なんせ、淫乱だと噂で顔のいい奴とは誰でも寝ると聞いた。
でも、どうやらファントムは三原歩夢ではなく生徒会長のエルダが三原歩夢に興味があるのかが気になっているようだ。
楽しい事が好きなファントムらしい感じがして、クランは微笑ましく思っていた。
しかし、頭をなにかに掴まれて床に叩きつけられた。
メガネにヒビが入り、背中に誰かが乗っている感じがした。
ズボンから伸びる太くふわふわの毛を逆立たせて、頭には狼の耳が生えていた。
グルル…と獣の呻き声を響かせて、黄色に光る瞳がクランを見つめていた。
「晦冥の魔導士だからって自惚れてんじゃねぇよ、俺を誰だと思ってんだ」
「うっ、うぐっ」
「図が高いんだよ、奴隷の分際で」
さっきの反抗的な態度が気に入らなかったお嬢が力の差で分からせてきて、止めたのは意外にもファントムだった。
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