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星空の下で
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生徒会長の話はしない事にして、俺はもう一つ聞きたい事があった。
歩夢の恋愛事情だ、恋多き歩夢だからナイトとも付き合っているのだろうか。
歩夢が誰と付き合ってるのかは別にいいが、本当に歩夢の事を好きなのか…それが問題だ。
話した感じ、いまいちそんな感情があるのか分からない。
とはいえ、恋愛初心者の俺の考えなんて当てには出来ない。
兄というより親目線になって見てしまっているな、歩夢の事好きでもないのに近付く奴が一人いるからか。
ナイトの事をよく知らないが、歩夢の事を大切にしてくれるならそれだけでいい。
「ナイトは歩夢の事、好きなのか?」
「嫌いだったら一緒にいない、歩夢は…俺の弟達に似てるから」
歩夢を想うナイトの顔は、優しさに満ち溢れていた。
それは恋愛感情というより、俺のように歩夢を見守っているかのようだ。
それを聞いて、俺もナイトの弟達を歩夢と重ねていたからその気持ちは分かる。
歩夢に恋愛感情はないのか、だから歩夢が他の人と恋愛しても平気な顔をしていたのか。
ナイトは信用出来るかもな、自分の弟達と重ねているなら酷い事はしないだろう。
ナイトがどう思っているのか、警戒しすぎて疲れてしまった。
安心のため息を吐くと、キラキラと輝く星空を見つめた。
ふと、ナイトは「舞踏会お前踊れるのか?」と聞いてきた。
……そうだ、忘れてた…完璧に踊れないとやっぱりダメなのだろうか。
レオンハルトに聞こうと思っていたのに、帰り道でとんでもない事になったからすっかり頭から抜け落ちていた。
明日、いつ帰ってくるのか…明日から練習して間に合うのか不安だ。
ナツとヨシュアも苦手みたいだから期待出来ない。
せめて基本だけでも完璧に出来るようにしないといけない。
暗い顔をする俺を見てナイトは察した様子で、俺に手を差し伸ばした。
不思議そうに手とナイトを交互に見つめると、月の光に照らされていた。
こうして見ると、ナイトも王位継承者のような風格を感じた。
レオンハルトのような、強いオーラというか…信頼出来る雰囲気だ。
「俺と練習するか?」
「踊れるのか?」
「いや、全然」
「………」
「歩夢と練習してたけど、他の上手い奴に教えてもらえるみたいで俺の相手がいなくなった」
なるほど、歩夢の代わりか…俺も相手がいなかったからちょうど良かった。
上手い人と練習して足を引っ張るより、踊れない同士なら気が楽だ。
それでもナイトは俺とはレベルが違うと思っている。
歩夢と練習していたなら俺よりは上手いと期待してナイトの手を握ると、腰を掴まれて引き寄せられ至近距離で見つめ合う。
あれ?俺女側なのか?男子校だから誰かが女役をやらなきゃいけないけど…なんだかな。
ここで揉めても仕方ないから、肩に手を添えてみる。
カタチは何となくこうかな、と見よう見まねで出来た。
でもここからどうしたらいいか全然分からない、右足からだっけ…
そう思っていたら、ナイトに思いっきり足を踏まれた。
「悪い」と言うナイトに、ダンスは難しいなと改めて思った。
二人で声を出しながら、右と左で一歩一歩動かす。
これってちゃんとダンスになっているのか分からない。
第三者に見てもらわないと何とも言えないが、こんな夜遅くに俺達以外周りにはいない。
一瞬気が逸れてしまい、今度は俺がナイトの足を踏んでしまった。
「ご、ごめんっ」
「いや、お互い様だから…もう一度やろう」
1.2の掛け声で集中して動いて、しばらくしたらそれっぽくなってきた。
軽くターンが出来るほど成長して、合わせて足を止めた。
だんだん上達しているのを見て、嬉しい気持ちになった。
でも、まだ人前で踊れるかと聞かれたら自信はない。
ナイトの方を見ると、今日はかなりがんばったのか目蓋がくっついてしまいそうだった。
こんなところで寝たら確実に風邪を引いてしまう。
寝ながらダンスを踊ろうとしているから、ナイトの頬を軽く引っ張った。
まだ完全に眠っていなかったから、すぐに目を開けた。
「……なに」
「寝るなら家に帰ろう」
「うん」
気温もさっきより低くなり、少し冷え込んできたから家に戻った。
眠っている人達を起こさないように布団に戻ると、糸が切れたようにナイトは布団の上で動かなくなった。
ナイトに毛布を掛けてあげると、俺も布団に寝転がった。
見慣れない天井を見つめて考える事は一つだけだ。
歩夢、今何してるんだろう…この時間だからもう寝てるよな。
俺が知っているのは、昔いじめられたトラウマで歩夢は友達を作るのが苦手だった。
奥手で恥ずかしがり屋で、小学生まで俺の後ろにずっといたんだ。
俺が歩夢を守らないと…そればかり頭で考えていた。
中学生になって、初めて友達を家に呼んできて嬉しかった。
あの時から、俺が歩夢を守る必要がなくなっていたんだな。
今もこうして歩夢には信頼出来る友人が出来ている。
横で眠るナイトに小さな声で「歩夢をよろしくな」と言って、目蓋を閉じた。
歩夢の恋愛事情だ、恋多き歩夢だからナイトとも付き合っているのだろうか。
歩夢が誰と付き合ってるのかは別にいいが、本当に歩夢の事を好きなのか…それが問題だ。
話した感じ、いまいちそんな感情があるのか分からない。
とはいえ、恋愛初心者の俺の考えなんて当てには出来ない。
兄というより親目線になって見てしまっているな、歩夢の事好きでもないのに近付く奴が一人いるからか。
ナイトの事をよく知らないが、歩夢の事を大切にしてくれるならそれだけでいい。
「ナイトは歩夢の事、好きなのか?」
「嫌いだったら一緒にいない、歩夢は…俺の弟達に似てるから」
歩夢を想うナイトの顔は、優しさに満ち溢れていた。
それは恋愛感情というより、俺のように歩夢を見守っているかのようだ。
それを聞いて、俺もナイトの弟達を歩夢と重ねていたからその気持ちは分かる。
歩夢に恋愛感情はないのか、だから歩夢が他の人と恋愛しても平気な顔をしていたのか。
ナイトは信用出来るかもな、自分の弟達と重ねているなら酷い事はしないだろう。
ナイトがどう思っているのか、警戒しすぎて疲れてしまった。
安心のため息を吐くと、キラキラと輝く星空を見つめた。
ふと、ナイトは「舞踏会お前踊れるのか?」と聞いてきた。
……そうだ、忘れてた…完璧に踊れないとやっぱりダメなのだろうか。
レオンハルトに聞こうと思っていたのに、帰り道でとんでもない事になったからすっかり頭から抜け落ちていた。
明日、いつ帰ってくるのか…明日から練習して間に合うのか不安だ。
ナツとヨシュアも苦手みたいだから期待出来ない。
せめて基本だけでも完璧に出来るようにしないといけない。
暗い顔をする俺を見てナイトは察した様子で、俺に手を差し伸ばした。
不思議そうに手とナイトを交互に見つめると、月の光に照らされていた。
こうして見ると、ナイトも王位継承者のような風格を感じた。
レオンハルトのような、強いオーラというか…信頼出来る雰囲気だ。
「俺と練習するか?」
「踊れるのか?」
「いや、全然」
「………」
「歩夢と練習してたけど、他の上手い奴に教えてもらえるみたいで俺の相手がいなくなった」
なるほど、歩夢の代わりか…俺も相手がいなかったからちょうど良かった。
上手い人と練習して足を引っ張るより、踊れない同士なら気が楽だ。
それでもナイトは俺とはレベルが違うと思っている。
歩夢と練習していたなら俺よりは上手いと期待してナイトの手を握ると、腰を掴まれて引き寄せられ至近距離で見つめ合う。
あれ?俺女側なのか?男子校だから誰かが女役をやらなきゃいけないけど…なんだかな。
ここで揉めても仕方ないから、肩に手を添えてみる。
カタチは何となくこうかな、と見よう見まねで出来た。
でもここからどうしたらいいか全然分からない、右足からだっけ…
そう思っていたら、ナイトに思いっきり足を踏まれた。
「悪い」と言うナイトに、ダンスは難しいなと改めて思った。
二人で声を出しながら、右と左で一歩一歩動かす。
これってちゃんとダンスになっているのか分からない。
第三者に見てもらわないと何とも言えないが、こんな夜遅くに俺達以外周りにはいない。
一瞬気が逸れてしまい、今度は俺がナイトの足を踏んでしまった。
「ご、ごめんっ」
「いや、お互い様だから…もう一度やろう」
1.2の掛け声で集中して動いて、しばらくしたらそれっぽくなってきた。
軽くターンが出来るほど成長して、合わせて足を止めた。
だんだん上達しているのを見て、嬉しい気持ちになった。
でも、まだ人前で踊れるかと聞かれたら自信はない。
ナイトの方を見ると、今日はかなりがんばったのか目蓋がくっついてしまいそうだった。
こんなところで寝たら確実に風邪を引いてしまう。
寝ながらダンスを踊ろうとしているから、ナイトの頬を軽く引っ張った。
まだ完全に眠っていなかったから、すぐに目を開けた。
「……なに」
「寝るなら家に帰ろう」
「うん」
気温もさっきより低くなり、少し冷え込んできたから家に戻った。
眠っている人達を起こさないように布団に戻ると、糸が切れたようにナイトは布団の上で動かなくなった。
ナイトに毛布を掛けてあげると、俺も布団に寝転がった。
見慣れない天井を見つめて考える事は一つだけだ。
歩夢、今何してるんだろう…この時間だからもう寝てるよな。
俺が知っているのは、昔いじめられたトラウマで歩夢は友達を作るのが苦手だった。
奥手で恥ずかしがり屋で、小学生まで俺の後ろにずっといたんだ。
俺が歩夢を守らないと…そればかり頭で考えていた。
中学生になって、初めて友達を家に呼んできて嬉しかった。
あの時から、俺が歩夢を守る必要がなくなっていたんだな。
今もこうして歩夢には信頼出来る友人が出来ている。
横で眠るナイトに小さな声で「歩夢をよろしくな」と言って、目蓋を閉じた。
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