俺の弟が一番かわいい

ー結月ー

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ピンチ

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契約しているのかどうなのか、見極め方は分からない。

でも、魔導士の勝手で契約が決まるわけではない事は分かる。

神獣だって心がある、お互いの気持ちで王位継承者を選ぶって事なんじゃないのか?

自分の私利私欲のために神獣を乱暴に扱って、こんな人は相応しいとは思えない。

なんでコイツらがセラくんを誘拐したのか何となく分かった。

セラくんが白猫を持っているのを見て、勘違いしたのか。

あんな小さい子に……力に溺れる奴は心もなくなるのか。

人間の俺には分からない、でも心までは捨てたくない。

それにしても学園でも常に一緒に白猫と居るナイトの方が可能性は高い。

ナイトは歩夢と一緒にいる時間は長い筈だ、友人だからな。

生徒会も、生徒会長と一緒にいる歩夢を知っている。

生徒会とナイトが知り合う機会はあると思う、なんでそこが結び付かないんだ。

白猫を神獣だと思わなかったのか、なにかのきっかけで気付いたのか。

強いナイトよりも弱い力の弟を狙う最低な奴なのか。

そんな事はどうでもいい、今のこのピンチをどうにかしないといけない。

「おい!俺も助けろ!」と叫ぶ軟派な男がトゲから脱出する前に…

一人なら何とかなるが、二人いたら勝てる確率は一気に0に近付く。

「関係ない、二人…殺せば簡単だ」

強面の男が手を伸ばすと、俺はその腕にしがみついた。

離さないように強く掴んで、電流を流そうとしたらそれに察した男は俺をぶん回した。

木に身体をぶつけられても絶対に離すまいと我慢した。

身体を少し起こして顔を歪ませているナイトは「さっさと逃げろ!お前には関係ない!」と叫んでいた。

セラくんを安全な場所に移動させながら、俺達から目を離さなかった。

確かに俺は関係ないかもしれない、だからこれも俺が勝手にやっている事だ。

俺一人で逃げられるわけないだろ!俺がそんなに薄情に見えたなら酷いな。

ミシミシと骨が軋む音が聞こえて、歯を食いしばり耐えた。

俺は絶対にこの手を離さない、ナイトもセラくんも助けるんだ!!

集中しないと電流が流れない、痛む身体のせいでしがみつく事しか出来ない。

「な、いと…逃げ…」

「そんな事出来るわけがない!俺も今そっちに…」

セラくんを少し離れた木の後ろに隠して、ナイトが近付いてくる。

ナイトも俺と同じ考えだよな、こんな状態で誰も逃げる事を考えていない。

ナイトの動きに合わせて、白猫がナイトの肩に飛び乗っていた。

周りの空気がナイトの力に共鳴して、力が強まった気がした。

こちらに向かってくるナイト達を見て、強面の男は舌打ちをしていた。

「チッ、お前から…殺すっ!」

そう言った男は振り回すのをやめたと思ったら、俺の腹に手を添えた。

それは腹を殴っている力ではなく、触れているだけだ。

普段誰かに触られるような場所ではなく、不快感しかなかった。

ナイトが俺の名前を叫んでいるが、それを理解する前に腹が熱くなった。

目線を下に向けると、男の手から氷のトゲが出て…俺の腹を貫いていた。

痛みがなくて、少しの間…なにが起きたか分からなかった。

真っ赤な血が広がり、ポタポタと落ちる…熱いと思ったら身体が冷えてきた。

ナイトや強面の男の力ではなく、体温が一瞬で失われる感覚だ。

目の前がだんだん歪んできて、視界が黒く狭くなる。

逆流してきて、口から血を吐き出して激痛が襲った。

そこでようやく理解した、俺の人生の終わりが近付いていると…

うそ…だろ…こんな、ところで……おれ……あ、あゆむ…

こんなところで終わるわけにはいかない、俺にはやるべき事がある。

歩夢を生徒会長から助けないと、悪い奴から…俺が…

頭ではそう思っていても、身体が俺の意思で動かない。

力が抜けて、強面の男の腕から離れて地面に叩きつけられた。

最後に白いものに包まれて、俺の意識がプツンと切れた。
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