俺の弟が一番かわいい

ー結月ー

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裏側の物語

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『エルダ視点』

歩夢と別れて生徒会の仕事を終わらせるために特別棟に向かった。

校舎の裏にある特別棟は、生徒会と風紀委員室がある場所だ。

風紀委員の奴らはほとんどあの危ない男の信者だから俺達と仲が悪い。

生徒会の奴らは俺に絶対服従だから居心地が良い。

生徒会の仕事は苦ではない、面倒な事もあるが歴代の王位継承者達が皆こなしていた仕事だ…修行だと思えばいい。

それに、さらに俺が王位継承者に近付くための道具が見つかった…これで王位継承者になったも同然だ。

三原歩夢…俺はあの人間がほしい。

正確に言うとあの人間の赤と青の瞳がほしい、瞳さえ手に出来ればあの人間自身どうなっても構わない。

ずっと機会を伺っていた、どうやって手に入れようか。

瞳があると人間界を覗くのが好きな側近に聞いた時は嬉しくて、いつも以上にアイツを虐めてしまった……真っ赤な血を吐くその姿に興奮した。

あの瞳があれば俺は…ふふ…

…俺はこの世で人間が一番嫌いだが、目的のためなら反吐が出る事も出来る。

呆気なく人間は俺のものになった。

落とすまで時間が掛かるかと思っていたが、つまらない人間だ。

元々恋愛感情がないから、それを気付かれないように甘い言葉を吐いた。

今まで見てきた事を考えると、絶対に一人だけでは満足しないだろう。

だとしたら…他にも恋人を作る筈だ、それでいい…その人間に構う時間は少ない方がいい。

生徒会長の椅子に腰を下ろして、三原歩夢の隠し撮りの写真を眺める。

嫁だと言って喜ぶ下等生物を嘲笑うのは楽しいが、やはり俺を刺激してくれる相手はアイツだけだ。

写真が指先の炎によって消えていく姿を眺めながら、俺は通信機でアイツを呼んだ。

しばらくするとドアが数回ノックされて、アイツが姿を現した。

相変わらず俺のところに来る時は暗い顔をしているな、俺の加虐心にも火がつく。

「…なにか用か」

「幼馴染みが呼んだんだ、もっと嬉しい顔をしろ」

「………」

「せっかく二人っきりなんだ、そこに座れ」

ソファーを指差すと、無言で俺に従う。

生徒会の他の奴らには自分の部屋で仕事するように言ってある、コイツを生徒会室に呼ぶために…

コイツと会う時は他の奴を視界に入れたくない、汚いものを視界に入れるだけで不快だ。

子供の頃から、鮮やかな赤髪と整い過ぎた顔立ち…頭のてっぺんから足の爪先まで全てが美しいと思っていた。

俺も隣に座ると、あからさまに眉を寄せている…それがとても楽しい。

「俺、結婚するんだ」

「けっ、こん?」

不愉快そうだった顔はすぐに驚きに変わった。

この俺が誰かと結婚するなんて思っていなかったのだろう。

その顔が見たくて今日呼んだんだ。

相手が気になるのか「誰なんだ?」と聞いてきた。

俺が誰を好きになったのか、興味がないくせに…

本当に可愛い奴だ。

「お前だ」

「……何言って」

「正確に言うと人間と結婚すると学園中に報告する」

学園中に言うと、いくら好きになっても俺の妻を奪おうとする者などいないだろう。

それでも横取りされて人間が心変わりしてしまうかもしれないから、一緒に居ようと生徒会補佐の役職も与える。

生徒会の補佐になると、寮も生徒会の寮になるが使っていない部屋は物置になっている。

人間にはそれでいいと思うが、歩夢を幻滅させて帰ってしまっては俺の作戦が失敗する。

だから片付けが必要だ、そのために少しの間だけ一般寮で暮らしてもらう。

人間の世話をナイトに任せたのも、あの面倒くさがりが人間に惚れるわけないと思ったからだ。

アイツは常に誰の味方もしないから使いやすい。

面倒くさがりが人間の世話を引き受けたのは等価交換だ。

アイツの家は貧しいからな、金を渡せば面倒でもやる。

俺も後に請求されるより、分かりやすくていい。

「…お前、人間嫌いじゃなかったのか?」

「嫌いだ、本当にするわけないだろ」

「……」

「俺はあの人間の瞳がほしいだけだ、その後は捨てればいい………その時はお前を俺のものにしてやる」

耳に触れると、すぐに手を振り払われて立ち上がった。

お前はまだあんな下らない夢を見ているのか…

俺が何のために瞳を手に入れて、王位継承者になろうとしていると思っているんだ。

……全てはお前の

「そんな話をするだけならもう帰る」

「お前のそのくだらない夢を捨てて、さっさと俺のものになれ」

俺の言葉を聞こえないフリをして、去っていった。

まぁいい、瞳さえ手に入れば嫌でも分かる事になるだろう。

誰の傍にいるのが一番いいのか…

アイツの身体に俺の印を何度刻み込んだか分からない。

痛めつける時のアイツの声は、他の誰よりもそそるものがある。

まだ抱いてはいないが、俺が王位継承者になりアイツが逆らわなくなってからではないと本当の意味で手に入れた事にはならない。

そんな遠くない未来の想像をして、一人で笑いを堪えていた。
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