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三原歩夢の物語3
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中学三年のある日…僕の充実した毎日が終わりを迎えた。
本当は初恋の人に捧げる予定だったものを適当な人にあげちゃった。
演技は得意だから初なフリをすればバレる事はない。
結城くんとまだ別れていなかった僕は、部活を引退した結城くんは暇になって久々に一緒に帰っていた。
結城くんと歩いている時、二番目の彼氏と鉢合わせした。
「あれ?歩夢、結城と友達なのか?」
友達……ここで友達と言えば誤魔化せるが、結城くんに言い訳出来ない。
なんて言おうかと考えていたら、もう一人現れた。
一度目があったら二度目三度目と嫌な事が重なってしまう。
でも僕は皆に愛される存在だから、皆分かっててくれるよね!
しかし、怒って五人の彼氏達は帰ってしまった。
その姿を見て、僕の気持ちは一気に冷めてしまった。
独占欲が強いのかな、エッチは気持ちよかったけど縛られるのは好きじゃない。
最後に結城くんが残って、結城くんは分かってくれたんだ…さすが僕の王子様と嬉しかった。
「結城くん、僕…嘘ついてごめんね」
「……いや、俺も嘘ついてたから」
「え?嘘って?」
「三原、悪い…俺…お前の事利用してた」
僕の可愛い天使スマイルで浮気を許してもらおうと思っていた。
でも、彼の口から出たのは「許す」という言葉ではなかった。
結城くんの言葉を聞いて、僕は悲しみと怒りで感情がぐちゃぐちゃになった。
浮気していた僕よりも結城くんの方が酷いと思った。
こんなに惨めで、屈辱的な気分になったのは初めてだ。
走って家に帰ると、ずっと我慢していた涙が溢れてきて廊下で座り込んで泣いた。
結城くんから聞いた言葉は聞きたくなかった言葉だった。
「俺、梓馬さんの事がずっと好きだったんだ…でも普通に近付ける相手じゃないし…三原から告白された時三原と一緒に居れば梓馬さんと知り合えるって思って…でもやっぱり自分で何とかしようって思って…あの人と同じ高校に入ったら告白してみるよ」…それが別れの言葉だった。
お兄ちゃんが好きって何?僕を利用した?
許せない、あんなお兄ちゃん…ただのブラコンじゃん!!
僕はお姫様なのに、なんで…どうして?
もしかしてお兄ちゃん、僕から彼氏を奪うために誘惑していたの!?
そうに決まってる、じゃないと僕よりお兄ちゃんを選ぶわけない!酷い、酷いよ…
お兄ちゃんが帰ってきて、僕を心配している…白々しい。
「あ、ゆむ…?」
「なんで僕のお兄ちゃんなの?」
「……えっ?」
「お兄ちゃんの過保護にはもううんざりなんだよ!」
お兄ちゃんを押し退けて、走って家を出ていった。
行く宛てもなくて、とぼとぼと歩いていてこれからどうしようかと考える。
夕陽が空を包み込んでいて、でもすぐに暗くなって前が見えなくなりそうだ。
こんな時、王子様が来て僕を助けてくれるんだ…結城くんじゃない、本物の王子様が…
誰かと肩がぶつかり、伏せていた顔を上げた。
するとそこにいたのは、王子様とはかけ離れたガラの悪い男達だった。
「おい兄ちゃん、肩がぶつかって謝りもねぇのか?」
「…ごめんなさい、それじゃ」
「おいおい、誠意がねぇな…誠意見せろ誠意!」
顔が好みじゃないからこれ以上話したくなかったが、男達はニヤニヤ笑っている。
まさか、僕の身体が目当てだったのか…最悪…こんな顔面崩壊した奴らとなんてしたくない!!
腕を掴まれて、イヤイヤと首を横に振る。
早くきて王子様…僕はここに居るよ。
男達が「なんだこれ…」と呟く声が聞こえた瞬間、目の前が真っ赤に染まっていく。
人が、目の前で燃えていて…怖くて逃げる事を忘れてその場に突っ立っているしか出来なかった。
僕の前に現れた、桃色の髪を後ろで一つに束ねている男は片手が炎に包まれていた。
叫ぶ男の声を聞いて、ゆらゆらと炎が揺れている。
男が手を一振りすると炎が消えて、同時に男達も消えていた。
「やっと見つけた、俺のお姫様」
男が後ろを振り返り、僕は恐怖を忘れてその人に魅入っていた。
「あ、あの…貴方は」
「君の王子様と言えばいいかな」
膝を曲げて、僕の手を取り手のひらに口付けた。
さっきまで燃えていた手だとは思えないほど、その手は冷たかった。
王子様、本物?僕の…ドキドキが止まらない。
王子様は「美しい瞳だね」とうっとりした顔で言ってきた。
何の話だろうと思って下を見ると、昨日雨が降った水溜まりがまだ残っていた。
そこに映し出される自分の顔に驚いて慌てて顔を隠した。
両目の色を隠すためのコンタクトがズレていた、さっき泣いた時だろうか。
だからガラの悪い男達が変な顔をして僕を見ていたのかもしれない。
昔の事がフラッシュバックして、彼氏達にも見せられなかった僕の素顔を初対面の人に知られてしまった。
でも、この人はなんて言った?僕の目を「美しい」と言わなかっただろうか。
「僕の、目…変じゃない?」
「変だと思うわけがない、この瞳こそ俺の妻に相応しい」
妻?妻ってあの妻の事?
よく分からないが、こんなに褒めてくれたのは家族だけだった。
本当にこの人が僕の運命の人なんだ、結城くんでも歴代の彼氏達でもないこの人が…
結城くんはお兄ちゃんにあげる、もう興味がなくなった。
僕はこの人と結婚するんだ!
家に帰るとお兄ちゃんを無視して、自室に籠った。
本当は初恋の人に捧げる予定だったものを適当な人にあげちゃった。
演技は得意だから初なフリをすればバレる事はない。
結城くんとまだ別れていなかった僕は、部活を引退した結城くんは暇になって久々に一緒に帰っていた。
結城くんと歩いている時、二番目の彼氏と鉢合わせした。
「あれ?歩夢、結城と友達なのか?」
友達……ここで友達と言えば誤魔化せるが、結城くんに言い訳出来ない。
なんて言おうかと考えていたら、もう一人現れた。
一度目があったら二度目三度目と嫌な事が重なってしまう。
でも僕は皆に愛される存在だから、皆分かっててくれるよね!
しかし、怒って五人の彼氏達は帰ってしまった。
その姿を見て、僕の気持ちは一気に冷めてしまった。
独占欲が強いのかな、エッチは気持ちよかったけど縛られるのは好きじゃない。
最後に結城くんが残って、結城くんは分かってくれたんだ…さすが僕の王子様と嬉しかった。
「結城くん、僕…嘘ついてごめんね」
「……いや、俺も嘘ついてたから」
「え?嘘って?」
「三原、悪い…俺…お前の事利用してた」
僕の可愛い天使スマイルで浮気を許してもらおうと思っていた。
でも、彼の口から出たのは「許す」という言葉ではなかった。
結城くんの言葉を聞いて、僕は悲しみと怒りで感情がぐちゃぐちゃになった。
浮気していた僕よりも結城くんの方が酷いと思った。
こんなに惨めで、屈辱的な気分になったのは初めてだ。
走って家に帰ると、ずっと我慢していた涙が溢れてきて廊下で座り込んで泣いた。
結城くんから聞いた言葉は聞きたくなかった言葉だった。
「俺、梓馬さんの事がずっと好きだったんだ…でも普通に近付ける相手じゃないし…三原から告白された時三原と一緒に居れば梓馬さんと知り合えるって思って…でもやっぱり自分で何とかしようって思って…あの人と同じ高校に入ったら告白してみるよ」…それが別れの言葉だった。
お兄ちゃんが好きって何?僕を利用した?
許せない、あんなお兄ちゃん…ただのブラコンじゃん!!
僕はお姫様なのに、なんで…どうして?
もしかしてお兄ちゃん、僕から彼氏を奪うために誘惑していたの!?
そうに決まってる、じゃないと僕よりお兄ちゃんを選ぶわけない!酷い、酷いよ…
お兄ちゃんが帰ってきて、僕を心配している…白々しい。
「あ、ゆむ…?」
「なんで僕のお兄ちゃんなの?」
「……えっ?」
「お兄ちゃんの過保護にはもううんざりなんだよ!」
お兄ちゃんを押し退けて、走って家を出ていった。
行く宛てもなくて、とぼとぼと歩いていてこれからどうしようかと考える。
夕陽が空を包み込んでいて、でもすぐに暗くなって前が見えなくなりそうだ。
こんな時、王子様が来て僕を助けてくれるんだ…結城くんじゃない、本物の王子様が…
誰かと肩がぶつかり、伏せていた顔を上げた。
するとそこにいたのは、王子様とはかけ離れたガラの悪い男達だった。
「おい兄ちゃん、肩がぶつかって謝りもねぇのか?」
「…ごめんなさい、それじゃ」
「おいおい、誠意がねぇな…誠意見せろ誠意!」
顔が好みじゃないからこれ以上話したくなかったが、男達はニヤニヤ笑っている。
まさか、僕の身体が目当てだったのか…最悪…こんな顔面崩壊した奴らとなんてしたくない!!
腕を掴まれて、イヤイヤと首を横に振る。
早くきて王子様…僕はここに居るよ。
男達が「なんだこれ…」と呟く声が聞こえた瞬間、目の前が真っ赤に染まっていく。
人が、目の前で燃えていて…怖くて逃げる事を忘れてその場に突っ立っているしか出来なかった。
僕の前に現れた、桃色の髪を後ろで一つに束ねている男は片手が炎に包まれていた。
叫ぶ男の声を聞いて、ゆらゆらと炎が揺れている。
男が手を一振りすると炎が消えて、同時に男達も消えていた。
「やっと見つけた、俺のお姫様」
男が後ろを振り返り、僕は恐怖を忘れてその人に魅入っていた。
「あ、あの…貴方は」
「君の王子様と言えばいいかな」
膝を曲げて、僕の手を取り手のひらに口付けた。
さっきまで燃えていた手だとは思えないほど、その手は冷たかった。
王子様、本物?僕の…ドキドキが止まらない。
王子様は「美しい瞳だね」とうっとりした顔で言ってきた。
何の話だろうと思って下を見ると、昨日雨が降った水溜まりがまだ残っていた。
そこに映し出される自分の顔に驚いて慌てて顔を隠した。
両目の色を隠すためのコンタクトがズレていた、さっき泣いた時だろうか。
だからガラの悪い男達が変な顔をして僕を見ていたのかもしれない。
昔の事がフラッシュバックして、彼氏達にも見せられなかった僕の素顔を初対面の人に知られてしまった。
でも、この人はなんて言った?僕の目を「美しい」と言わなかっただろうか。
「僕の、目…変じゃない?」
「変だと思うわけがない、この瞳こそ俺の妻に相応しい」
妻?妻ってあの妻の事?
よく分からないが、こんなに褒めてくれたのは家族だけだった。
本当にこの人が僕の運命の人なんだ、結城くんでも歴代の彼氏達でもないこの人が…
結城くんはお兄ちゃんにあげる、もう興味がなくなった。
僕はこの人と結婚するんだ!
家に帰るとお兄ちゃんを無視して、自室に籠った。
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