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廃れた毎日

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『アルフレート視点』

「アルフレート!」

朝から嫌な声を聞いて、舌打ちしながら上半身を起こす。

頼んでもいないのに、毎日のように起こしにくる。
正直馴れ合いたくはないから面倒くさい。

どうやって部屋に入ってきたのか、レオナードがベッドの横に立っていた。
騎士団の寄宿舎はいったいどんな警備をしているのか、コイツも騎士だから野放しなんだろう。

人を起こすなり、周りを見渡していて手探りで脱ぎ捨てた服を拾う。
この季節に上半身裸はちょっと寒い。

「今日は女の人を連れ込んでない、よね」

「何、覗き?」

「い、いや…この前は悪い事しちゃって…」

悪い事……あー、してる最中に来た事か…別に気にしてない。
恋人というわけじゃないし、誘われたから相手をしただけ。
大した事じゃないのに、レオナードは顔を赤くしていた。

今日もしたけど、すぐに帰ってもらった…他人のにおいがずっと染み付いたら寝れない。

いつからだろう、こんな生活を続けていたのは…

もう、覚えていない……わけが分からなくなったんだ。
誰かと一緒にいないと、俺はまた自分の羽根を折る。
そうしたら、また会いに来てくれるかも…そう思ってしまう。

だから気を紛らわすために、女を抱いた…お互い同意だし一夜限りの関係なら気にする事はない。
俺が自分から誘う事はないし、自分で腰を動かした事がない。

やりたいなら好きにすればいい、気持ちなんて一ミリもない相手だから…
優しくはする、後腐れがない方が相手に執着されなくていい。
それでも、やっぱりしつこい相手はいる…そうなったら二度と相手をしないし冷たくする。
そうすると、だいたいの女は態度を変えて大人しくなる。

こんなクズの俺に好かれたいなんて、変わってるな。

気持ちいいとは思う、生理現象だからそれは当然だ。
でも、イけるほどかと言われたらそこまでではない。
自分の体に自信がある女でも、俺の上で跳ねている女を見ると滑稽に思える。

一人で処理した方がイけるから、終わってから一人でしている。

それでもやめないのは、俺が自分で羽根を折る事を止めるため…それ以上にない。
羽根なんていらないと思う自分と、羽根がないとまた周りは騒ぎになるから折ってはいけないと思う自分がいる。

もし、羽根を折っても彼が来てくれなかった事を考えると絶望で可笑しくなってしまう。

彼に裏切られたって思っていても、諦められない自分もいる。

「えっと、聖女候補が見つかったみたいだよ!」

「……またガセだろ」

「わっかんないけど、可愛い子みたいで」

「あっそ」

ベッドから離れながら上着を着ていると、レオナードがまだ部屋の中にいた。
用件はそれだけじゃないのか?見られると着替えにくいんだけど…
恥ずかしいという感情は一切ないが、隙を見せたくない。

「また覗き?」と聞くとレオナードが顔を赤くして部屋を出ていった。
男同士なのに、何をそんな恥ずかしがっているのか理解できない。
子供の頃ならまだしも、いい歳した男だろうに…

俺も一人の男に執着しているが、彼は男というだけではない。
未知なる人間というか、レオナードに抱く不快感は一切ない。

守護精霊がいるんだから、もしかして彼は精霊の化身なのではないかと本気で思ったりもしていた。
男は抱く気はないが、彼はどうだろうか…そんな事考えた事もなかった。

分からない、だって本物は何処にもいないんだから分かるわけがない。

ズボンも穿いて、部屋から出ると壁に寄りかかっていたレオナードがいた。

「まだいたの」

「一緒に…行きたくて」

「俺は行きたくない」

今日の会議はサボろうかと思っていたのに、レオナードがいたらすぐに連れ戻すだろ。
面倒くさい、だから騎士の奴らと一緒にいても煩わしいだけなんだ。

俺がいなくても騎士達が頑張ってくれるだろうと投げやりになっていた。
そのまま会議が行われている方とは別の方角に足を向けた。
しかし、レオナードに腕を掴まれて足を止めた。

今日はいつもよりしつこいな…手を離してくれ。

「まだ用?」

「く、クリストファー様が…次の騎士団長にアルフレートを指名するって言ってたから」

「……は?」

腕を振り払おうとした手を止めて、レオナードの方を見る。
レオナードが俺に嘘を教えるとは思えない、知らないけど多分。

守護精霊のリーダーの次は騎士団長?レベルが上がりすぎているだろ。
冗談じゃないと、方向を変えて急いで会議室に向かった。

きっとそこに父はいるから直接文句を言う事が出来る。

後ろからレオナードが付いて来るが一度も後ろを振り返らなかった。

いくら父が今の騎士団長だからって本人の意思を無視して何やってもいいと思うなよ。
会議室のドアを開けると、そこには俺とレオナード以外の全員が集まっていた。

「アルフレートか、そこに座りなさい」

「そんな事より、騎士団長の件…説明して下さい…父さん」

「………お前を正式に騎士団長にする事に決まった…これは国王様とも決めた事で覆る事はない」

「俺はまだ同意していない」

「これでお前も国を守る者としての自覚が芽生えるだろ」

父はそう言って「全員揃ったから会議を始める」と言っていた。
いろんな女と一晩過ごしているのに気付いていたのか…だから俺を騎士団長にした。
元々守護精霊のリーダーにしようとしていたから、元々かもしれないが自分のせいでもある。

俺がここで駄々をこねたところで、甘くなる父ではない。

俺のこの行為は、俺が絶望しないための生命線だからなにがあっても止める気はないが…今までみたいに毎日とはいかないだろう。

騎士団長は一番国を思って命を捧げてもいい相手がやればいい。
俺のようなのは一番相応しくない、息子贔屓で可笑しくなっているんじゃないか?

聖女探しとか言って、ただの普通の女を連れてきたりしてるし…父に焦りが見えていた。

きっと、よく当たる占い師に言われた事が引っかかっているのだろう。
そんな奴ほど怪しいと思わないのかと、必死に話している父を見つめる。

「一年後、この国最大の災いがふりかかる」と占い師はそう言った。

一年後、その意味が分かる事になる。
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