うさぎの雄嫁さん

志野まつこ

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干支の逆打ち姫はじめ

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 干支達は該当する一年間お勤めに励む代わりに一つの褒美を神から賜る。

 ねずみは好きな人と添い遂げることを。
 丑はたくさんの高級干し草を。
 寅は酒池肉林を望んだ。

「で、ウサ公。てめぇは何をかなえてもらうんだ?」
 酔いのまわった頭で寅はそわそわと落ち着かないウサギにからんだ。今年の干支である寅は虎耳を冠した逞しい体つきに精悍な顔つきの男だ。
 対して次の年を担当するウサギの長い耳は常に垂れ、ふわふわと柔らかいくせ毛と色白で華奢な姿は実に庇護欲をそそる可愛らしい容姿だ。しかし寅はそんなウサギが常におどおどとした様子に見え「男がなよなよと情けない」と気にくわない。

 毎年大晦日の夜は干支送りのために十二支が神の神殿に集まり、神を上座に酒宴が行われるのが習わしだ。
 寅の左右には美しく豊満で淫靡な肉体の雌獣人が侍り、彼女達に凭れ掛かるようにだらけた姿で寅は大きな杯を煽る。あと少しで寅の年が終わる。最後まで酒池肉林を堪能しようとする寅はすっかりへべれけだった。

「寅、望みを問うのはマナー違反ぞ」
 大柄で美丈夫たる辰がうさぎの横で眉間にしわを寄せる。
「年が明けりゃすぐ分かるだろうが」
 けっと悪態とともに寅は吐き捨てた。言わずとも様子を見ていればいずれは皆に知れ渡る事だ。

「とても慎ましい望みだったよ。あまりにも健気でいじらしいものだからオマケをしたくなってしまったよ」
 比喩ではなく常に淡く発光する美しい神が長い髪を揺らしながら穏やかに柔らかく笑い、寅は再度けっと鼻を鳴らした。
「相変わらず神はウサギ贔屓だな」
「寅、態度が過ぎるぞ」
 辰が怒気を顕わに寅をたしなめるも寅はどこ吹く風で雌獣人の頬を舐めてキャッキャウフフと戯れる。
「そりゃあ僕に肉を与えんと火に飛び込んだ兎もいた事だしね。皮をはがれた兎に海水で洗えばいいなんて言って悶絶するさまを笑いものにした同業もいたし、どうしてもウサギには甘くなってしまうんだよ」
 月に昇らせたウサギと因幡の白兎を思い出した神はふふ、と笑ってウサギを見やる。
「さぁ、そろそろ干支送りだ。ウサギよ、一年間よおくお励みなさい」
「はいっ」
 ウサギは決意にみなぎる瞳を輝かせて姿勢を正した。

「ハァハァ、発情期のトラさんと初夜っ、初夜なのに姫始めっ、たまんない、たまんないよトラさんっ、発情期のトラさんすごいっ僕の雄嫁さんっ」
 細い腰をカクカクと揺らしてウサギはトラの後孔を犯す。
 ウサギのペニスは長大であった。
 赤黒く、幹には血管の走る華奢なウサギには不似合いな一物で、いかに屈強で漢らしい相手も一発で即メス堕ちさせる凶悪な代物である。これが神の「おまけ」であった。

 年が明けた瞬間、ウサギと寅は神により一瞬で別室の大きな布団の上に移動させられた。
 その瞬間、トラはかっと体が熱くなるのを感じた。酔って巡りの悪くなった頭で「あ?」とのんびりと間抜けな声を上げた寅に、ウサギはあっさりといきり立った陰茎を挿入したのだった。

「クッソ、テメェ! い・あぁ!」
 動物が交わるに由緒正しき後背位で犯される寅は顎を跳ね上げ、背をそらして絶頂した。揺れて自身の肌にビタビタと当たる立派な雄芯から白濁が迸る。
 はじめの一挿しは瞬殺だった。
 ウサギの交尾はもとより短時間たるもので、寅は嘲笑し中で射精された怒りに瀕死になるまで殴ってやろうとしたのだが━━上半身はへたりと上等な布団に沈んだ。
 腰を上げただけの間抜けな姿で、もがこうとするも弱々しく指先が布団を掻くばかりだ。腹の中がマグマが煮えたぎるように熱く、それがこれまで経験したことないような発情だと気付くのに時間はかからなかった。

 挿入されたままのウサギ陰茎は硬度を保つどころか一回り大きく膨張し、びくびくと脈動しており、それからは一度も抜くことはなく、すでにウサギの射精は二桁に入った。
 そのたびにウサギの陰茎は大きく育ち、寅は乱れ狂わされ続けている。

「そんなベスト一枚で、なんていやらしいんだっ」
 上半身裸に短い前開きのベストのような衣服のみの寅の逞しい腹筋と控えめな乳首にウサギはずっと悩まされてきた。脱がさずとも簡単に摘まめる硬くしこった乳首をウサギはくりくりと弄ぶ。

「トラさんまたイった? そんなにキュウキュウ締め付けないで、僕もイっちゃいそうだよっ、イきやすい僕の雄嫁およめさんカワイイ、ハァハァ」
 寅がその気になれば一撃でウサギの息の根を止めることもたやすいというのに力が入らずされるがままで、簡単に身をひっくり返される。
「ぅあっ」
 繋がったまま体を回転させられ抉られる感覚に寅は声を上げた。
「こんな・おかし、テメ、何しやが・った」
 今は「卯」の年で、十二支は誰も「卯」にはかなわない。それでもこんな快楽はおかしいとトラは混乱する。
 これまで当然ながら後孔に挿入された事などないというのに、寅の陰茎からはすでに薄くなった精液が再度迸る。
「ああっ雄嫁さんのっぱいっ! ん、ん、おいし、ミルクおいしいよ。直接飲みたい」
「ンあっ」
 ウサギはあっさりと陰茎を引き抜き、その刺激に寅は体を震わせた。胸まで散った精液をウサギは舐めとり、他の歯より少し長い上の前歯を乳首に引かけて扱く。
 乳首への快感に善がる間も後孔に冷たい空気を感じ、そこがぽっかりと空いていることを寅は自覚せざるを得なかった。
 ウサギは気持ち悪いほどハァハァ息を乱しながら寅の股座に小さな頭を突っ込み、寅の陰茎にむしゃぶりついた。
「ぅあぁッ!」
「おいひ、おいひぃ。寅さんのまたパンパンに張って気持ちよさそう。声出していいよ、もっと気持ちよさそうな声聞かせて」
 じゅるじゅるとかつえた獣のようにそこをすすられた寅はひとたまりもなかった。必死で声を堪える。
「うあっ、ンンッ、ぅんっ」
 自然と寅の腰が揺れ、ウサギの小さな口を犯す。それなのに物足りない。寅は突っ込めないからだと思いたかった。後の穴が気になるなんて気付きたくもなかった。

「はぁはぁ、トラさん、こっちもパクパクしてるね。欲しい欲しいって。えっちな雄嫁さん可愛い。こんなに逞しくて頼りがいがあってかっこいいのにこんなに可愛いなんて僕をどうする気? こっちも欲しい? 前と一緒がいい?」
 後ろの穴を撫でられ寅は激しく首を横に振る。自尊心を保とうと必死だった。自分から強請るなんてありえない。
「そんなに意地はって可愛いね。可愛い雄嫁さんには応えなきゃね」
 入れられたのはウサギの指二本だ。華奢な体に見合う指は枝のように細く、ぬかるむ穴に簡単に滑り込んだ。
「……うあっ」
「ふふふ、雄嫁さんのナカぬるぬるであったかぁい」
「お・お・おぅ、ぉひ、あ・あ・あ、いや、やめ」
 ぬるぬると内壁を撫でられる。撫でられれば撫でられるほどこれではないと、物足りないと思ってしまう。そんなわけないのに。そんな事があっていいはずがない。
「ぉほぅっ」
 陰茎をゴシゴシと強くしごかれ声が上がる。
 ウサギはやたら上手かった。
「ずっとニンジンで練習してたんだ。どう? 僕ちゃんと雄嫁さん気持ちよく出来てる?」
 うさぎの口淫は腰が溶けるほどに気持ちがいい。それなのに何かが足りず達せない。苦しさに目元に涙が滲み、自然と身をよじって快楽を求める。

 んじゅ、じゅ、じゅる、じゅるる。粘度を感じさせる水音を響かせたあち、ぷはとウサギは顔を上げた。
「この奥が好きだよね、ごめんね僕の指じゃ届かないや」
 それを聞いて寅はショックを受けた。そしてそんな自分に重ねてショックを覚える。
 ウサギの言うように擦られたいのはもっと奥なのだ。もっと奥をこん棒のように太く硬いもので突き倒されたい。壊れるくらい奥を乱暴に穿ってほしい。
「ほら、ミルク出して。もうパンパンだよ。ほらほら」
「いやだぁぁ、むりっ、イけね、これじゃイけねぇぇ」
「ふふ、いやいや言う雄嫁さんも可愛い。でもどうしよう。これじゃイけない? どうしよう。どうしたらいいかな」
 これまで性経験のないウサギは途方に暮れ急に困惑の表情を浮かべた。ずっと想ってきた寅とやっと夫婦めおとになれたというのに愛妻を満足させられない自分が不甲斐なく悲しい。
「あ、こぶし? 拳入れてみようか」
「馬鹿か! さっきみたいにすればいいだろうが!」
 ウサギの思いついたと言わんばかりの明るい声に寅は恐怖に思わず叫んでいた。
「さっきみたいに? さっきって……」
「お前のナニを俺に……ッ」
 察しの悪いウサギに苛々しながら、それでも挿入を指示するのも嫌で言いよどむ。
「えぇ、僕の何? 何をどうすればいいの?」
 寅が求めるものが分からずウサギまでおろおろと涙目になり、寅は苛立ちにぐるると喉を鳴らした。
「テメェのチンポ入れろってんだよ!」
「僕のを雄嫁さんのどこに?」
「ケツだろうがっ」
「雄嫁さんまんこ? 雄嫁さんまんまん?」
「ああ、そうだよ!」
「ちゃんと言ってくれないと分からないよ、寅さん」
「俺のまんこにテメェのチンポに入れろって言ってんだよ!」
「分かった!」
 刹那、丸くてかたい先端がねじ込まれ剛直がトラを刺す。
「━━ッッ!」
 挿入と同時に耐えかねた寅の陰茎の先端から白濁が爆ぜるように噴き出す。かはっ、と寅はおかしな呼吸音を洩らした。
「ああ! 雄嫁さんミルク! さっきは全然出なかったのに!」
 ウサギはひどく残念そうな声を上げたかと思うと、続いて達したばかりの寅の陰茎を掴む。
「出やすくなるようにもっと搾ってあげるね!」
「ひぁ! やめ、今さわ、触んなばか、ばかばかばか、やめオマやめやめ~~~っ!」
 寅はくすぐったいような、限界を突き付けてくるような感覚に慌てふためいた。そして静止の声が泣き声にも近くなった時、プシッとそれは決壊する。
「潮吹きだ! 雄嫁さんの潮吹きだ! 雄嫁さん初めてなのに!」
 悪魔かテメェは。
 無邪気に喜ぶウサギに寅は声もなくそう思った。
 そして律動が始まる。
「ばっ、おまっイったばっかぁぁぁぁ!」
 待ちわびた刺激だというのに達した後ではもはやそれは暴力というに相応しかった。

「テメ、ぶっ殺してやる」
「うんっ、次の干支送りが終わったら食い殺してっ、トラさんの血肉になれるなんて、血肉になってずっと一緒なんてっ、ハッハッ、考えただけでッ」
 胎の中でまだ大きく膨張した陰茎に寅はぎょっとする。
「デカくしてんじゃねぇよ、変態がっ」
「変態でごめんなさいっ、無理矢理ごめんなさいっ、ずっと好きだったんですっ、もっとなじって罵ってください」
 ウサギは詫びるていで自身を煽り盛り上がっていき、それに伴い腰のグラインドも激しくなる。
「ひぃ、ひ・ひぁ、あ・ぃあっああっ」
「いい? いいっ? トラさんっ」
「お・お・おぅ、おぅン! やめっそんな押し付け、つよ、づよいぃぃ」
 突かれるたびに腰が押し込まれる。気が付けば寝バックの態勢で力を逃がそうにも腰は完全に布団に押し付けられ陰湿な程に強烈な快楽からの逃げ場がない。自分を犯しているのはウサギなのに、肉食の獣のようだと朦朧とした頭で考える。

 寅の長い尻尾が助けを求めるようにウサギの細い二の腕に絡みつく。喜びのあまりウサギは柔らかく握った拳を寅の尾の付け根に押し当てた。
「ぅああぁぁんッ!?」
 手首のスナップを聞かせて第二関節で尻尾の付け根を上下にマッサージする。
「ひっ・あ゛あ゛あ゛ぁ~~~っ!」
 絶叫にも似た嬌声が寅の喉から迸った。
「気持ちいい? これいい?」
 それに気を良くしたウサギは続いて押し当てたまま左右にグリグリと拳を揺らす。
「がぁぁぁっ! や・やめ゛っ! ヒ・あ゛あ!」
 尻尾の付け根への刺激はさらなる発情を強制的に寅にもたらした。
 寅の乱れ狂う姿とひときわ大きくなり濁った喘ぎにさらに興奮したウサギは化け物レベルまで育った巨大かつ凶悪な陰茎で雄膣を小突き回し、それにつられて寅の陰茎は布団に擦られ前からの刺激となり寅を容赦なく襲い責め立てる。
「お゛っお゛っお゛っ、い゛っ、ナカ、ンぐぅぅぅん゛!」
 内壁がぎゅっと収縮し、幼子の腕ほどはあろうかというウサギの陰茎を締め付けたのがトラにも分かった。ガツンと脳と胎内の中で何かが弾けるような感覚に一瞬意識が飛ぶ。
「すごい、すごいよトラさん! 初めてなのにナカでイけるなんて! ナカずっと痙攣してるっ、痙攣してるのに締め付けて! 搾り取られそうだよ! なんて優秀な雄嫁さんなの! 大好き! 大好きトラさん、愛してる!」
 ぼんやりと意識が戻り、トラは布団に顔を伏せたまま弱々しく首を横に振った。激しく抵抗したいところだが発情と絶頂によりそれもままならない。これだけ強い発情を強制させられている状態でまだなお拒否し抵抗できるのは強靭な心身を備えるトラだからこそだ。

「いやだぁぁ、嫁じゃねぇぇ、気持ちいいのいやだぁ、気持ちよくなんかないぃぃ、チンポになんか堕ちるの嫌だぁぁぁひぃぃ」
「大丈夫! お迎え棒だから! 神様がトラさんが満足できるペニスにしてくれたんだよ! こんなに大きくないと満足できないなんて、トラさんエロすぎだよっ! こんなので姫はじめなんてしちゃったら一発で赤ちゃんできちゃうね!」
「孕んでねぇ、孕むもんかぁぁ」
「うんうん、そうだね、予行練習だからね。まだまだ二人きりでイチャイチャ楽しもうね!」
「ひぁ、あ・あ・ぁひ、もう無理、もう死ぬっ、死んじまうっ」
「そんな悲しいこと言わないでよ!」
 ぐりぃ、と最奥だと思っていた壁が突破された。
「イ゛ぁぁぁ━━ッッッ」
 一瞬、呼吸が止まったようだった。

「ほら、ここが雄子宮だよ」
「いだ、いだいぃぃ、ぬげ、ぬ゛いで、ぬいでぇぇぇ」
 重く巨大と表現するような激痛に寅はウサギを振り返り、恥も外聞もなく涙して懇願した。ゆさゆさと緩く揺すられ再度かぶりを振る。
「だめぇ……だめぇ……」
「雄子宮に種付けするからね。ちゃんとイくって言えたら終わるからね」
 胎内だというのにぐぽぐぽとウサギのカリが弁を出入りしながら往復しているのが分かる。
 じわり、またじわりと痛みが別のものに取って代わられて行くのが感じられる。
 こんなのを知ったらダメだ。こんなものを知ってしまえばもうまともには生きていけない。分かるのになぜかそれに抵抗できない。
「イく……だめ、コレだめ……イく、イきます……」
 ぐぽぐぽと抜き差しが早まっていく。
「イクっイクイクイグぅぅっ」
 耐える。何に耐えているのかは分からない。
 それでも耐えて耐えて━━
「━━っ!!」
 最後に寅は声もなく絶頂した。

「ちゃんとイくって言える雄嫁さんえらいね」
 ちゅ、ちゅとそこかしこに口づけを落とされ頭を撫でられる。
 テメェ本当に殺してやると言う間もなく意識はそこで途切れ、寅は体を癒すための深い眠りに落ちた。

 泥のような混濁した意識の中、ふと気付いたのは桃の香りだった。
 ちいさく呻いて瞼を開ければウサギがほほ笑んでいる。「童貞を卒業しました」顔に思わず手が出た。
「いたっ」
 割と本気で頭を殴ったというのにウサギはふふと笑って「桃食べますか」と言う。
 寅は今年の干支を傷つけることが出来ないことを思い出した。

 その年の干支は毎日お祈りをする決まりだ。
「お勤めにいってきます。終わったらすぐ帰って来るから待っててね」
 嫌がる寅に皮を剥いてカットまでした桃を食べさせたウサギがそう言って部屋を出るや寅は絶望を感じるとともに、何とか逃れられないかと頭を抱える。そこへ入ってきたのは片腕に盆栽を抱えた神だった。
「お前は好き勝手しすぎだ。各所から苦情が入って大変だったんだ。一年無事に治めてくれたから罰は与えないけどね」
 激しい怒りの籠った目で神を睨む寅に、相変わらず淡く発光している神はそう告げながら盆栽を寅の枕元に置く。
「卯は飛躍と向上。それに多産だというだろう? きっと今年は景気は跳ね上がるし、人々の懐が潤沢になれば平和で子供も増える。少子高齢化も改善されるというものだよ」
 にこにこと、今日の神は大変機嫌がよかった。
「桃は食べたかい? 霊験あらたかな桃だ、すごい効果だったろう?」
「自分で言うなよ。肉にしてくれ」
 確かに桃の効果は抜群だった。

「神と言えば桃だろう? お前への結婚祝いだ。毎日ひとつ実をつけるから、疲労回復に使いなさい。酷使した体の部位も完治するからね。毎晩だって夫婦生活に勤しめるよ」
 脳みそ湧いてんのか。寅は布団から身を起こせないまま神を睨み上げ続ける。桃により各所の痛みは消えたが積み重なる精神的疲労に起きる気にもなれなかった。

「ウサギがね、一年でいいからお前と夫婦になりたいと言うんだ。たった一年だよ? 一年たったら殺されたっていいって。いじらしいじゃないか」
 射殺さんばかりに強い目で見て来る寅に神は一人滔々と語る。
 酒池肉林なんて望まなければウサギもこんな強硬手段は取らなかったろうにと思うが教えてやることはなかった。

「だからね、ひとたび穿たれれば旦那さんがいないと耐えられない体になる生殖器に知識もおまけしてあげたんだよ。知ってるかい? 今の人間界は動物番組が豊富でね。毎日のように飽きもせず動物番組、動物番組。面白いもんだねぇ」
 けっとトラは鼻を鳴らした。そんな事だろうと思っていたのだ。
「まぁ……どうしてもウサギと離れたいと思ったら言いなさい。少しの手助けはしてあげなくもないよ」
 傲慢な程の態度で宣い、くしゃりと寅の髪を混ぜる神の手を寅はうっとおし毛に首を払って拒否する。寅のネコ科な部分も気に入っている神はそれを諫めることはしなかった。
「お前は元から気持ちがいいことが大好きだったろう? だからものすごくちょうどいいなって。まんざらでもないだろう?」
 神は好き勝手なことをほざき、ふふと眩い笑みと光の残像を残して部屋を後にした。

 ウサギは生き物の中でも一二を争うほどの性豪と言われている。連日の性行為に早々に音を上げた寅が神に直談判しウサギから逃れたが、すぐに発狂しそうなほどの体の疼きに襲われ二日足らずで「夫」の元に戻らざるを得なかった。
「足りなかったんですね。手加減なんてしてすみません」
 そう猛省したウサギに寅は完膚なきまでに抱き潰された。

 その年、景気は驚異のV字回復を見せ秋以降はベビーラッシュが始まった。年末の時点で翌年の超大型ベビーラッシュも確約されており、年の暮れには無事辰へと干支送りが行われた。
 見事な働きぶりに神はウサギには寅専用陰茎を、寅には桃の盆栽を未来永劫与え給うた。


◇◆◇◆◇◆◇◆━━◇◆◇◆◇◆◇◆

干支の皆さんは秘密があってないようなものなので「おしおきわからせ」が実施されたことを知ってるし、ねずみは猫をネコにしてアンアン言わせてます。

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