春の神と迷い人

志野まつこ

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後編

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 跳ねるコピコのしなやかな肢体を抱き締めるように戒め、人間は指でしつこくコピコの胎内を探る。やがて人間が見付けたそこはコピコを狂わせた。
「ああっ! あああんっ! そこだめ、ぐりぐり、だめ♡ いやぁ♡ あ・だめ♡ だめ♡ ああぁっ、どうしていいか分かんないい♡」
 初めて体感する内側を抉る快楽からコピコは頭を振って逃れようとするが、人間は容赦なく責め続ける。

「やぁぁぁ! ダメぇぇ、こわいぃぃ」
 やがて泣きが入った所でさすがに人間は手を緩めた。
 三本入っていた指を第一関節程度まで抜いて濡れた目尻に口づける。

「今日はこれぐらいにするか?」
 人間は後孔の入り口で指を小刻みにばらばらと動かす。先ほどまでの強烈な刺激に比べればなんでもない事のように思えたが━━
 開けられた分、失った空間を嫌が応にも感じさせられる。
 堪えようとしても堪えられなかった。

「中がさみしいぃよぉぉ、やめるものやだぁぁ」
 むずがる子供のようなコピコに、そこで初めて人間が笑った気がした。

「もっとすごいのが欲しくないか?」

 コピコは渇望しか感じられなくなっていたが、己の身が何を欲しているのか分からずもどかしさに頭がおかしくなりそうだった。
 この人間は知っているというのか。

「ちょう……だい」
 欲しいかと聞かれたからそう答えた。
 人間は切羽詰まったように小さく呻き、乱暴に細い腰をつかまれる。
 そして━━

「あぁぁぁっ!! そこはそれを片付けるとこじゃないよぉ!」
 人間の大きな「おもちゃ」に貫かれ、健気に勃ってふるえていたコピコの雄からまた命の飛沫が散った。

「トコロテンか。なんていやらしくて可愛い身体だ」
 人間はそこかしこに口づけながら、胎内ではコピコの奥や先ほど見付けた秘部を擦る。

「なになになに!? ん! あぁぁぁん!!」
 男の膝の上で串刺しにされたようなものだ。 
 苦しい、でも苦しいだけじゃなく。
 いっぱいで、でもまだいっぱいじゃない。

 小さな桃色の胸の粒を音を立ててしゃぶられながらコピコの勃ちあがった芯を擦られ身悶える。
「胸ちゅうちゅうしないでぇ! そこゴシゴシしちゃだめぇぇ! ひあぁ♡」
 がむしゃらに逃れようとするが背中に回された逞しい片腕がそれをやすやすと阻み、コピコは過ぎた快感に悲鳴を上げる。

「やだやだ、だめぇぇ♡ なにこれ、わかんない♡ もうやだぁぁぁ!」
 大きく激しい波に飲み込まれ、翻弄される中にも何かもどかしさを感じ戸惑う。

「きもちいい、って言ってみな」
 耳元で発せられる男の低い声がまた官能を激しく揺さぶった。

「きもち、いい……?」
「そう。俺はすげぇ気持ちいいよ」
 人間が熱のこもった吐息とともに本当に気持ちよさそうに言うので真似してみる。

「きもち、いい……」
 口にした瞬間、一気に自覚した。
 素直に快感を受け止め、それを口にすれば一層己の興奮も高められる。

 ああ、これは気持ちがいいのだ。

「あ・あキモチい♡ キモチい♡ すごいいぃ♡ もっとぉ♡ もっと気持ちよくしてぇぇ♡」
 また訴えるように連ね強請ねだれば人間もまたより猛々しく猛然と最奥を攻め立てた。

「ああぁんっあっあぁぉあ、ひあぁぁん♡」

 はー♡
 はー♡
 コピコは神だ。
 これほどまで息が乱れる事など無かった。
 ふと人間の顔を見れば人間は汗だくながら優しい目をしており、口元を微かに上げている。柔らかく微笑んでいるようでもあった。
 つられて微笑み、よしよしと頭を撫でてやった。
 頑張っている人間を褒めるのはコピコにとって当然の事だ。

 コピコの嬉しそうな顔に人間はまた小さくうなった。
 柔らかい若草の上、人間はコピコの細い片足を肩に掛ける。そしてコピコの股座またぐらに跨るようにして腰を突き出した。

「んッあぁぁぁぁぁ!! 奥ゴンゴンだめぇぇ♡」
 コピコは首を逸らせ、啼いて善がった。生命の水を吐する事はなかったが、大きな波が確実にコピコの中で大きく爆ぜた。

「ナカイキ出来たな。そういう時はイクって言うんだ」
 そう穏やかで優しい声に褒められたコピコは胸に温かいものが宿るのを感じた。

「いく……?」
「そう。じゃあもう一回な」
 人間はもう一度腰を遣い始める。

「━━ッ!?」
 激しい抽出にお互いがなお一層高まって行くのが分かった。

「んぅっ、やっ♡ んっ♡ いいよぉ、気持ちいいよぉ♡」
 そしてこの激しさをもってこれが終焉に向かっている事も、なぜかコピコは理解した。

「やだあぁぁ♡ 終わっちゃうのやだあぁぁぁ、もっとぉぉぉ♡ もっとがいいぃぃぃ♡ もっとずぽずぽしてぇぇ♡」
「!!! 大丈夫、何回だってしてやるし、これからずっとできるから」

「ほんとぉ? じゃあもっとぉ、激しくしてぇ♡ もっと奥ぅ♡ 奥ごんごんゴリゴリてぇ♡ んあんぁ゛、あぁ゛っっ♡」
 本能のまま体を動かし、大きな声を出して快楽に身を委ねる。
 人間に教えられた通り、その時が来てそれを口にしてみる。

「いく、いく、い゛っ、くうぅうぅぅぅぅん♡」
 自身の胎内の肉が人間の一部をぎゅうっと締め付けた瞬間、人間のものが爆ぜ、胎が熱い命の波に満たされたのを感じる。
 あたたかくて、幸せで、そして途方もなく気持ちがよかった。
 その日は辺りが暗くなるまで何度も体を重ね、暗くなってからはコピコの暮らす庵に抱いて連れ帰られまた求められた。

 翌朝、春の小鳥達がいつものようにコピコを起こしに訪れた。放っておくといつまでも惰眠を貪るからだ。
 しかしこの日、気持ちよさそうに眠るコピコは髪の毛や唇を咥えて引っ張っても、鼻にくちばしをねじ込んでも目覚めようとはしなかった。
 普段であればくちばしドリルでは確実に目覚めるというのに。
 小鳥達は庵にいた見知らぬ男に「ごめんな、今日は休ませてやってくれ」と優しく言われ、男から駄賃というエサを巻き上げてからそこを撤収した。

 ※
「って言う事があってね」
 夏と秋。そして冬の三神。
 彼等と顔を合わせた際、コピコはふと思い付いてその話をした。
 三神の表情は死んでいたが、コピコが話すと皆たいていそういった顔になるのでコピコも気にせず続ける。

「その子しょっちゅうウチに来るんだよね。ほぼ住んでる?ってくらい。で、なんか気がついたらその子50年くらい変わらないんだけど、最近の人間って長生きになったの?」
 そう言ってコピコはいつものようにニコニコとしている。
 三神は示し合わせるでもなく言った。

「「「バカだ」」」

 その後、夏の神は帰途の間ずっと腕を組んで首をかしげていた。
「うーん、コピコにつきまとってるのどう考えてもうちの末っ子な気がする。ガキの頃から春の渓谷への行き方すごい聞かれてたしなー。最近見ないと思ったら。……まぁここ50年春が乱れた事もなし、また今度聞いたんでいっか」
 そしてまた数十年放置される。
 暇を持て余した神々の日常。

 ※※※
 【青姦について各神々の見解】
●アリ派
春「お外はきもちがいいからねぇ」
(分かってない)

夏「勢いがついたら仕方ない。ただし虫には気をつけろ。あと海もダメだ。砂がヤバい。海中なんざもってのほか」
(意外と面倒見いい)

●ナシ派
秋「寒い」
冬「死ぬぞ」
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