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第2章 その後のふたり
17、たろさんの「かなわない」話
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「出張とかあるから、堀ちゃんの実家の近くで探したいと思ってるんだけど」
堀ちゃんはずいぶんと唖然としていた。
家の事を考えていたら、高田に「問題ないなら出来れば堀ちゃんの実家が近い方がいいよ。残業やら出張やら多いから、子供が小さいうちはどうしても実家の世話になる機会が多くなるんだよね。申し訳ない限りだけど」とアドバイスされた。
正論だ。
まごうことなき正論だった。
高田にしてはめずらしくまともなことを言うので動揺したが。
布団を買い替えるのなら、ベッドに合わせてサイズを考えた方がいいだろうと思った。
高田のおすすめは、子供が生まれた時に3人で寝る事が出来るクイーンサイズだそうだが。
指輪とか、式場とか、ご挨拶的な事はプロポーズした後で、と考えてそれならば家だってプロポーズしてからが筋か、とも思う。
でもとりあえず。
「美味しかったと喜んでいた」
そう帰ったらちゃんとお袋に報告するか。
親父にはお袋から勝手に話が行くだろう。
思いがけず「プロポーズの予告」をしてしまったが、予告だったせいか堀ちゃんにはあまり動じた様子はなかった。
意識してぎこちなくなるよりはいい。
だがここまで自然に流されるのもどうかと思って、試しに家の話を持ち出してみたら━━
「最近の金利ってどうなってるんでしょうね。まぁ日本は油田でも当てない限り爆上がりするって事はないんでしょうけど」
そう唸った。
なるほど、そう来たか。
まさかそう返されるとは思わなかったが、なんかものすごく頼りになる感じだった。
「妹のとこは5年前に家建てたんですけど、今って玄関の鍵がカードだったりするんですよね。窓やサッシのグレードが上がってたりするらしいし」
「ああ、高田もそんな事言ってた。パソコンと一緒だよね。次々良くなる」
PCを購入してもすぐにグレードが上がり、型落ちは破格の値段になる。
機器管理をしている同僚がぼやいていた。
「リノベーションに力入れる施工会社も増えましたよねぇ」
しみじみ言って、ふと何か言いかけて一度やめる。
じっと見つめて促せば、照れたように笑った。
「もっと若い頃にたろさんと付き合ってれば、とかも思うんですけど、今だからうまく行ってるのかなぁ、と思って。今のタイミングで会えてよかったです」
ふふ、と笑って刺身を頬張った。
40前の男が、6つも年下の恋人にかなうはずがない。
彼女が何をしても、何を言っても面白いと感じるし、そんな様子が可愛いと思ってしまうのだから、重症だなとは思わないでもないけれど。
~fin~
********************************************
堀ちゃんはずいぶんと唖然としていた。
家の事を考えていたら、高田に「問題ないなら出来れば堀ちゃんの実家が近い方がいいよ。残業やら出張やら多いから、子供が小さいうちはどうしても実家の世話になる機会が多くなるんだよね。申し訳ない限りだけど」とアドバイスされた。
正論だ。
まごうことなき正論だった。
高田にしてはめずらしくまともなことを言うので動揺したが。
布団を買い替えるのなら、ベッドに合わせてサイズを考えた方がいいだろうと思った。
高田のおすすめは、子供が生まれた時に3人で寝る事が出来るクイーンサイズだそうだが。
指輪とか、式場とか、ご挨拶的な事はプロポーズした後で、と考えてそれならば家だってプロポーズしてからが筋か、とも思う。
でもとりあえず。
「美味しかったと喜んでいた」
そう帰ったらちゃんとお袋に報告するか。
親父にはお袋から勝手に話が行くだろう。
思いがけず「プロポーズの予告」をしてしまったが、予告だったせいか堀ちゃんにはあまり動じた様子はなかった。
意識してぎこちなくなるよりはいい。
だがここまで自然に流されるのもどうかと思って、試しに家の話を持ち出してみたら━━
「最近の金利ってどうなってるんでしょうね。まぁ日本は油田でも当てない限り爆上がりするって事はないんでしょうけど」
そう唸った。
なるほど、そう来たか。
まさかそう返されるとは思わなかったが、なんかものすごく頼りになる感じだった。
「妹のとこは5年前に家建てたんですけど、今って玄関の鍵がカードだったりするんですよね。窓やサッシのグレードが上がってたりするらしいし」
「ああ、高田もそんな事言ってた。パソコンと一緒だよね。次々良くなる」
PCを購入してもすぐにグレードが上がり、型落ちは破格の値段になる。
機器管理をしている同僚がぼやいていた。
「リノベーションに力入れる施工会社も増えましたよねぇ」
しみじみ言って、ふと何か言いかけて一度やめる。
じっと見つめて促せば、照れたように笑った。
「もっと若い頃にたろさんと付き合ってれば、とかも思うんですけど、今だからうまく行ってるのかなぁ、と思って。今のタイミングで会えてよかったです」
ふふ、と笑って刺身を頬張った。
40前の男が、6つも年下の恋人にかなうはずがない。
彼女が何をしても、何を言っても面白いと感じるし、そんな様子が可愛いと思ってしまうのだから、重症だなとは思わないでもないけれど。
~fin~
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