会社一のイケメン王子は立派な独身貴族になりました。(令和ver.)

志野まつこ

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第1章 はじまるまでの5週間

20、3週目 日曜日 <お礼の晩ごはん>

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 キッチンに立てばたろさんに「米、とごうか?」と声を掛けられて笑ってしまった。

「座っててください」
 メインが貧相なのでご飯は炊き込みご飯で誤魔化したい。
 炊き込みご飯が嫌いではないか一応確認し、基本的に雑なのでお湯で戻した乾燥ひじきと人参とツナ缶をお米の上に乗せて炊飯器のスイッチを押した。

 野菜室の土付きゴボウを10cmほど折って斜めに薄く切る。
 大根を多めに切って、ゴボウと一緒に片手鍋に水と顆粒だしと投入。
 冷凍庫から出したしめじ・たまねぎ・油揚げを凍ったままこれまた投入してお味噌汁にする。
 半分残しておいた大根に大葉ドレッシングを掛け、浅漬けかサラダかよく分からない物にする。
 昨日作ったきんぴらと、これまた冷凍庫から出した豚バラとネギでトンペイ焼きを作った。
 卵と乾燥ひじきは我が家の常備品目である。

 お味噌汁には最近ハマっている「お椀に入れてから味噌汁を入れたらOK!」が売り文句の乾燥わかめや海藻・お麩が入った市販の味噌汁の具を入れたら完成。
 これを入れると普通のお味噌汁がすごくおいしくなる気がして、普段1袋以上買い置きはしないのにこれだけは2袋買ってある。

 よっし、なんとか一汁三菜!
 なんだこれ、お礼にもならないよ。
 たろさんは喜んでくれたけど。
 ご飯おかりしてくれたけど。

 男物の茶わんと箸を出す時には「弟のですけど」と予め申告した。
 県外に就職した弟は帰ってくるとうちでもご飯を食べるので、食器があるのだ。

 片付けはたろさんを送ってからにしようと思っていたが、たろさんが手伝ってくれた。
 固辞したにもかかわらず。
「たろさんはお手伝いしたがりですねぇ。今までに言われた事あるんですか?」
 あ、固まった。

「同棲してたとか?」
 にやにやと言ってちらりと見上げれば、たろさんは困惑したような顔でこちらをチラリと見た。
「同棲はしてないけど、まぁ、手伝えとは言われたね。お互い仕事してるんだから、って」
「新婚の友達もよく言ってます。こっちは仕事して帰って座らずに夕飯作ってるのに、旦那さんがマンガ読んでるのを見て切れたとか」

『座ってるだけで腹が立つ』
 それはもう憎々し気に言っていた。
 甘い新婚のはずが共働きならそうなるのか、と勉強になったもんだ。

「それでそんなに甲斐甲斐しいんですねぇ」
 笑うと、たろさんがなんだか傷ついたような顔をしてこちらを見ていた。

「あぁ、わたしそういうの気にならない人なんですよ。過去に相手がいて当然の年齢じゃないですか。人生いろいろあるでしょうし。そりゃ実害があればそんな事は言ってられませんけど」
 逆にこの年で前カノがいない方がよっぽど気になるかもしれない。
 もっとも飲みのネタとしてのたろさんの過去ネタを聞き出そうとしたわたしが言っても、信ぴょう性がないかもしれないけど。

「さすが、男前だね。でも俺は気になっちゃうんだよね。指輪の相手とか」
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