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4、弱・中・強。それ以外に何がある。
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「キスをしても?」
聞いてるこっちが「ああん」と身悶えしたくなるような、例のバリトンボイスを耳の近くでぶっぱなすのはやめて欲しい。
「そーれはちょっと、マズくないですか」
耳を手で覆って守りながら身を引き、距離を取りつつ断ったつもりなのに、言葉を濁したと思われたらしい。
「拒否しないのなら」
背中に左腕を回し、右手は髪に差し入れて後頭部を支えるという、拘束状態にされてから軽いものに始まりがっつりドロドロのふっかいキスをかまされた。
そうだろうとは思っていたけれども。
テックニシャ~ン。
こんなディープなのいいんかいな、と思いながらまぁキスが上手い相手だとそれだけで濡れるという事もあろうし、手っ取り早いかと舌先を少しだけ出せば簡単に捕らわれてしまう。
貪欲に求め合うような口付けを交わしながら陛下の右手が胸へと滑り落ちて行く。
太い親指で焦らすようなタッチでつつましやかな胸の先端を優しく何度もなぞられ、あっという間に私の体は跳ね始めた。
固く尖った先端の表面だけをかすめるようなそれがもどかしくて、もっと刺激が欲しくてあさましくも胸を陛下に押しつけると、待ちかねたようにベッドへと押し倒された。
ヴヴ……
二人の体重により沈んだマットへ、相棒が転がり落ちてきたらしい。
お互い足を絡ませて下腹部を押し当て合う中、何かの拍子で私と陛下に触れたらしいそれが存在を主張して来た。
……いや、なんか陛下がわりと盛り上がってらっしゃるからお前の出番はないかも。
押し当てられた陛下自身の状態を太ももで確認し、ふと冷静になる。
「へ、陛下、これならいけるんじゃないですか」
はぁ、とやたらと熱を含んだ吐息とともに本来の作戦を陛下に進言する。
「いや、もう少し」
そうか、15年の勃起不全だもんな。
まだ不安だろう。
仕方ない、もう少しギンギンに育てるか。
限界まで焦らしてから挿入して一瞬で果てる、くらいが純潔だろうエリザベスちゃんにもいいだろう。気を遣ってもらったし、それくらいのお返しはしないと。
あ、でもエリザベスちゃんの準備もしなきゃだよな……
昂りかけていた熱が一瞬で冷めた気がした。
ああ、もう。
なんだかなぁ。
モヤモヤする。
こうなったら鬱憤を晴らしてやる。
陛下は「早漏」認定されたらいいんだよ。
※※※
攻撃は最大の防御、だっけ?
攻めたら攻め返された。
さすが帝王学的な物を学んでいるであろう陛下、というべきか。
いや、この場合「責める」だから閨での房中術か?
なんて考える余裕なんて無かった。
丹念にねちっこく撫で回され、体中に口付けられる。
こっちは核心なんて触れられてもないのに、ぬるぬるのドロッドロだ。
「んあああああんっ!」
唇から首筋、鎖骨と一つ一つ唇でなぞられながら、もはや充血しきった足の間の奥深い谷間をするすると指で撫でられ、大きな声が上がる。
やっと、と思った。
それなのにその後はゆるゆるとそこを行き来するだけで、肝心の尖り切った芯には触れてもらえない。
ソロプレイの時には早々にいじっちゃうのに。
そう、私はクリ派。触って欲しくて自然と自分で動いて陛下の指に花芯を擦り付けると、陛下が胸元でふっと笑った気配がした。胸元どころか胸にくっついた状態なんだからそりゃダイレクトに伝わるってもんで。
「腰が揺れている」
「ひんっ!」
乳首くわえたまましゃべらないでぇぇ。
「ここが弱そうだな」
花芯の先端をまた繊細に触れられ、思わず首を横に振って否定したけどバレバレだった。
こっちが焦らすつもりだったのに、言葉責めまでされてるって……
そりゃそうだよ。
私ってば中級になるくらい快楽に弱いんだったわ!
陛下はとにかく手慣れておられた。
お達者だった。
そう、ここは勃起不全に優しい国。
技術だけは他国と一線を画すものがあるのだろう。
そして恐ろしい事に、陛下は勃たないだけなのだ。
勃たないけども、相手を満足させるだけの技術はお持ちでいらっしゃるんだよ、この御方は。
くるくると、花芯の回りをなぞられ腰はがくがくと震える。
それまで密着していたのに、陛下は唐突に身を起こすと私の両膝に手を掛けた。
「あ、うそっ。やだやだやだやァァァァァんっ!」
何のためらいもなく陛下が私の股に頭をおろして行く。
その魂胆に気付いて拒否の声を上げるも、いきなりちゅるりと花芯を吸われて絶叫した。
ヴヴヴ……
びくびくと震える私の横で相棒が喜々として自己主張している。
やめろ、今は大人しくしてるんだ。
大人しくさせたいところだけれど、弱い外側と普段あまり触らない中を同時に責められれは手の打ちようがなかった。
「ひ、あ、そこ、はダ・メ。あ、ひあぁぁぁっ」
当然陛下も盛り上がっている相棒に気がついたはず。
まずい、これ以上はまずい。
陛下の状態は分からないけど、もういいだろう。
「勃ったんなら、さっさとやっちゃって、くださいよッ!」
ヴぃぃぃぃっぃイィィンッ!!
なんで、お前が元気になるんだ相棒よぉぉぉぉ!
相棒は弱・中・強の三段階の仕様だった。
強でもそんなにマックスな動きしなかったのに!
「陛下、交替しましょう!」
大きく目を瞠った陛下の様子に、今がチャンスだと飛び起きる。
改めて目にしたのは着乱れた陛下。
おおう、視覚への暴力ぅ。
そんな陛下はひどく辛そうな顔で何かショックを受けているようで━━
「なんで盛り下がってんですか!」
ここに来て初めて目にした陛下の息子氏は下向きだった。
ああぁぁぁぁ、と声にならない声を上げる。
悲痛と落胆の声を上げると陛下がますます盛り下がるのは目に見えていた。
こんな状態で中断するのは中途半端な気もするけど、もうこれ以上はキツい。
「アキ?」
さすが陛下、鋭い。
こっちのテンションがダダ落ちしたのを見透かされる。
「陛下、気を抜いちゃダメ!」
それでも萎える可能性に咄嗟に励ました私、えらい。
今なら間に合う。
「エリザベスちゃーん! こうたーーい!」
今なら間違いを犯さずに済む。
ごめん。
気がついちゃった。
ツラい。
このままだと泣く。
それを押しとどめてくれたのは、エリザベスちゃんだった。
ノックもなしにいきなり激しくドアを大きな音を立てて開けると、ずかずかと寝台まで一気に歩み来る。
お、おおぅ、やる気だね。
時間との勝負と分かってるんだね。
「あ、アキ様はそのままで大丈夫ですよ」
カーテンの影にいていいと言ってくれているのか。
エリザベスちゃん、優しい。
まぁこっちは陛下の下から服を押さえつつ這い出てきたので、乱れているとはいえそれほどどえらいモンを見せる事にはならないだろうけど、それでもその気遣いはありがたい。
ん? いや、そこで見届けろって言ってるのか?
カーテンから首だけ出してみるとベッドの脇に立ったエリザベスちゃんは、おそろしく真剣で、不躾なほどの眼差しで陛下の股間に注視していた。
こ、こわい。
「いかがですか?」
「一度は過去最高レベルまで仕上がったのだが、今は落ち着いている」
なに冷静に話してるんだよ、そんなだから今までもうまく行ってないんじゃ……
日本のマニュアルにはどれも雰囲気が大事って書いてあるというのに!
って、陛下、やっぱり落ち着いちゃったんかーーい!
エリザベスちゃんは「ふう」と大げさなまでなため息を一つ落とした。
あ、やめて。
陛下ってば繊細だからそんなため息一つでまた悪化しちゃうよ。
「恐れながら陛下、よろしいでしょうか」
エリザベスちゃんは厳しい声で切りだした。
「わたくし、今回の試みをお伺いしてからずっと考えていたんですけれど、アキ様なら反応されたんですよね? アキ様がお相手をお勤めになるのではいけないのですか?」
いやにはっきりとした口調だった。
へ……ヘイ、エリー?
なんて事を言い出すんだい?
そりゃ君にはド下種な仕打ちを働いているという自覚は非常にあるけれども。
「いや、私、異界の生き物だから」
そんなワケにはいかないじゃん。
見た目は同じ人間に見えるけど、DNAレベルで考えた時に決定的に違う部分があって受精とか無理なんじゃないかな、と思うんだよ。
陛下もすっかり冷静になってしまったらしく身を起こしてローブを整えるとベッドに腰を掛ける形で座してしまった。
その顔はひどく苦悩に満ちていて、臨戦態勢の解除を悟る。
ああ、完全に作戦失敗だわ。
「アキは、もとの世界に帰さねば」
あ、その事よ。
「帰らないとまずいですかね、やっぱ」
「は!?」
陛下に聞くことでもないよなと思いつつ、思わず言ってしまったら案の定陛下に愕然とされた。
エリザベスちゃんはなぜか晴れやかに笑った。
「陛下、お役に立てず本当に申し訳ございません」
あー……、いやいや。この場合の本当の意味での役立たずは陛下だよ。
役勃たず。
もうダメだね。最近、陛下に関して「立つ」が「勃つ」で変換されるわ。
あ、もしかして暗喩? だからそんな笑顔なのか、エリザベスちゃん。
「わたくし、陛下の恩情により純潔を保っております。これからまた新しい人生を歩んでいきたく思います。どうかお許しを」
いや、それ温情じゃないんじゃ……
「エリザベス嬢、顔を上げてくれ。長い間不遇の身を強いてこちらこそ申し訳なかった。君が後ろ指を指される事のないよう、今後の事は私が責任を持って対処しよう」
こんな状態なのに二人は事務的で硬質な会話を繰り広げていた。
「陛下ッ……もったいなきお言葉……ありがとうございます」
えー……なんだよこの茶番。
聞いてるこっちが「ああん」と身悶えしたくなるような、例のバリトンボイスを耳の近くでぶっぱなすのはやめて欲しい。
「そーれはちょっと、マズくないですか」
耳を手で覆って守りながら身を引き、距離を取りつつ断ったつもりなのに、言葉を濁したと思われたらしい。
「拒否しないのなら」
背中に左腕を回し、右手は髪に差し入れて後頭部を支えるという、拘束状態にされてから軽いものに始まりがっつりドロドロのふっかいキスをかまされた。
そうだろうとは思っていたけれども。
テックニシャ~ン。
こんなディープなのいいんかいな、と思いながらまぁキスが上手い相手だとそれだけで濡れるという事もあろうし、手っ取り早いかと舌先を少しだけ出せば簡単に捕らわれてしまう。
貪欲に求め合うような口付けを交わしながら陛下の右手が胸へと滑り落ちて行く。
太い親指で焦らすようなタッチでつつましやかな胸の先端を優しく何度もなぞられ、あっという間に私の体は跳ね始めた。
固く尖った先端の表面だけをかすめるようなそれがもどかしくて、もっと刺激が欲しくてあさましくも胸を陛下に押しつけると、待ちかねたようにベッドへと押し倒された。
ヴヴ……
二人の体重により沈んだマットへ、相棒が転がり落ちてきたらしい。
お互い足を絡ませて下腹部を押し当て合う中、何かの拍子で私と陛下に触れたらしいそれが存在を主張して来た。
……いや、なんか陛下がわりと盛り上がってらっしゃるからお前の出番はないかも。
押し当てられた陛下自身の状態を太ももで確認し、ふと冷静になる。
「へ、陛下、これならいけるんじゃないですか」
はぁ、とやたらと熱を含んだ吐息とともに本来の作戦を陛下に進言する。
「いや、もう少し」
そうか、15年の勃起不全だもんな。
まだ不安だろう。
仕方ない、もう少しギンギンに育てるか。
限界まで焦らしてから挿入して一瞬で果てる、くらいが純潔だろうエリザベスちゃんにもいいだろう。気を遣ってもらったし、それくらいのお返しはしないと。
あ、でもエリザベスちゃんの準備もしなきゃだよな……
昂りかけていた熱が一瞬で冷めた気がした。
ああ、もう。
なんだかなぁ。
モヤモヤする。
こうなったら鬱憤を晴らしてやる。
陛下は「早漏」認定されたらいいんだよ。
※※※
攻撃は最大の防御、だっけ?
攻めたら攻め返された。
さすが帝王学的な物を学んでいるであろう陛下、というべきか。
いや、この場合「責める」だから閨での房中術か?
なんて考える余裕なんて無かった。
丹念にねちっこく撫で回され、体中に口付けられる。
こっちは核心なんて触れられてもないのに、ぬるぬるのドロッドロだ。
「んあああああんっ!」
唇から首筋、鎖骨と一つ一つ唇でなぞられながら、もはや充血しきった足の間の奥深い谷間をするすると指で撫でられ、大きな声が上がる。
やっと、と思った。
それなのにその後はゆるゆるとそこを行き来するだけで、肝心の尖り切った芯には触れてもらえない。
ソロプレイの時には早々にいじっちゃうのに。
そう、私はクリ派。触って欲しくて自然と自分で動いて陛下の指に花芯を擦り付けると、陛下が胸元でふっと笑った気配がした。胸元どころか胸にくっついた状態なんだからそりゃダイレクトに伝わるってもんで。
「腰が揺れている」
「ひんっ!」
乳首くわえたまましゃべらないでぇぇ。
「ここが弱そうだな」
花芯の先端をまた繊細に触れられ、思わず首を横に振って否定したけどバレバレだった。
こっちが焦らすつもりだったのに、言葉責めまでされてるって……
そりゃそうだよ。
私ってば中級になるくらい快楽に弱いんだったわ!
陛下はとにかく手慣れておられた。
お達者だった。
そう、ここは勃起不全に優しい国。
技術だけは他国と一線を画すものがあるのだろう。
そして恐ろしい事に、陛下は勃たないだけなのだ。
勃たないけども、相手を満足させるだけの技術はお持ちでいらっしゃるんだよ、この御方は。
くるくると、花芯の回りをなぞられ腰はがくがくと震える。
それまで密着していたのに、陛下は唐突に身を起こすと私の両膝に手を掛けた。
「あ、うそっ。やだやだやだやァァァァァんっ!」
何のためらいもなく陛下が私の股に頭をおろして行く。
その魂胆に気付いて拒否の声を上げるも、いきなりちゅるりと花芯を吸われて絶叫した。
ヴヴヴ……
びくびくと震える私の横で相棒が喜々として自己主張している。
やめろ、今は大人しくしてるんだ。
大人しくさせたいところだけれど、弱い外側と普段あまり触らない中を同時に責められれは手の打ちようがなかった。
「ひ、あ、そこ、はダ・メ。あ、ひあぁぁぁっ」
当然陛下も盛り上がっている相棒に気がついたはず。
まずい、これ以上はまずい。
陛下の状態は分からないけど、もういいだろう。
「勃ったんなら、さっさとやっちゃって、くださいよッ!」
ヴぃぃぃぃっぃイィィンッ!!
なんで、お前が元気になるんだ相棒よぉぉぉぉ!
相棒は弱・中・強の三段階の仕様だった。
強でもそんなにマックスな動きしなかったのに!
「陛下、交替しましょう!」
大きく目を瞠った陛下の様子に、今がチャンスだと飛び起きる。
改めて目にしたのは着乱れた陛下。
おおう、視覚への暴力ぅ。
そんな陛下はひどく辛そうな顔で何かショックを受けているようで━━
「なんで盛り下がってんですか!」
ここに来て初めて目にした陛下の息子氏は下向きだった。
ああぁぁぁぁ、と声にならない声を上げる。
悲痛と落胆の声を上げると陛下がますます盛り下がるのは目に見えていた。
こんな状態で中断するのは中途半端な気もするけど、もうこれ以上はキツい。
「アキ?」
さすが陛下、鋭い。
こっちのテンションがダダ落ちしたのを見透かされる。
「陛下、気を抜いちゃダメ!」
それでも萎える可能性に咄嗟に励ました私、えらい。
今なら間に合う。
「エリザベスちゃーん! こうたーーい!」
今なら間違いを犯さずに済む。
ごめん。
気がついちゃった。
ツラい。
このままだと泣く。
それを押しとどめてくれたのは、エリザベスちゃんだった。
ノックもなしにいきなり激しくドアを大きな音を立てて開けると、ずかずかと寝台まで一気に歩み来る。
お、おおぅ、やる気だね。
時間との勝負と分かってるんだね。
「あ、アキ様はそのままで大丈夫ですよ」
カーテンの影にいていいと言ってくれているのか。
エリザベスちゃん、優しい。
まぁこっちは陛下の下から服を押さえつつ這い出てきたので、乱れているとはいえそれほどどえらいモンを見せる事にはならないだろうけど、それでもその気遣いはありがたい。
ん? いや、そこで見届けろって言ってるのか?
カーテンから首だけ出してみるとベッドの脇に立ったエリザベスちゃんは、おそろしく真剣で、不躾なほどの眼差しで陛下の股間に注視していた。
こ、こわい。
「いかがですか?」
「一度は過去最高レベルまで仕上がったのだが、今は落ち着いている」
なに冷静に話してるんだよ、そんなだから今までもうまく行ってないんじゃ……
日本のマニュアルにはどれも雰囲気が大事って書いてあるというのに!
って、陛下、やっぱり落ち着いちゃったんかーーい!
エリザベスちゃんは「ふう」と大げさなまでなため息を一つ落とした。
あ、やめて。
陛下ってば繊細だからそんなため息一つでまた悪化しちゃうよ。
「恐れながら陛下、よろしいでしょうか」
エリザベスちゃんは厳しい声で切りだした。
「わたくし、今回の試みをお伺いしてからずっと考えていたんですけれど、アキ様なら反応されたんですよね? アキ様がお相手をお勤めになるのではいけないのですか?」
いやにはっきりとした口調だった。
へ……ヘイ、エリー?
なんて事を言い出すんだい?
そりゃ君にはド下種な仕打ちを働いているという自覚は非常にあるけれども。
「いや、私、異界の生き物だから」
そんなワケにはいかないじゃん。
見た目は同じ人間に見えるけど、DNAレベルで考えた時に決定的に違う部分があって受精とか無理なんじゃないかな、と思うんだよ。
陛下もすっかり冷静になってしまったらしく身を起こしてローブを整えるとベッドに腰を掛ける形で座してしまった。
その顔はひどく苦悩に満ちていて、臨戦態勢の解除を悟る。
ああ、完全に作戦失敗だわ。
「アキは、もとの世界に帰さねば」
あ、その事よ。
「帰らないとまずいですかね、やっぱ」
「は!?」
陛下に聞くことでもないよなと思いつつ、思わず言ってしまったら案の定陛下に愕然とされた。
エリザベスちゃんはなぜか晴れやかに笑った。
「陛下、お役に立てず本当に申し訳ございません」
あー……、いやいや。この場合の本当の意味での役立たずは陛下だよ。
役勃たず。
もうダメだね。最近、陛下に関して「立つ」が「勃つ」で変換されるわ。
あ、もしかして暗喩? だからそんな笑顔なのか、エリザベスちゃん。
「わたくし、陛下の恩情により純潔を保っております。これからまた新しい人生を歩んでいきたく思います。どうかお許しを」
いや、それ温情じゃないんじゃ……
「エリザベス嬢、顔を上げてくれ。長い間不遇の身を強いてこちらこそ申し訳なかった。君が後ろ指を指される事のないよう、今後の事は私が責任を持って対処しよう」
こんな状態なのに二人は事務的で硬質な会話を繰り広げていた。
「陛下ッ……もったいなきお言葉……ありがとうございます」
えー……なんだよこの茶番。
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